このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

【各区分審査】

共進会の朝は早い。

審査は午前9時に開始となっていたので、一般の観覧客はちょっと早くとはいっても午前8時30分くらいに会場入りしていたと思う。だが、牛の出品者、それをサポートする関係者は違う。会場の入場は午前5時30分から出来るようになっているので、出品者や関係者は牛の世話や手入れのために、朝一番に会場に集まってくる。私が会場でそのような関係者から聞いた話であるが、共進会の期間中、早朝4時起床、宿を5時出発という毎日を送っているのだという。

そうして、黙々と牛に付き添いながら審査の時間を待ち、夜8時頃、閉門の時間になって宿へと戻るというのだ。それを聞いて、朝6時頃にのそのそ起き出す私は何だか申し訳なくなってしまったのだ。


さて、私が米子にいたのは共進会の初日である10月11日だ。残念ながら、交通機関の乗り継ぎの関係で、その日はホテルにチェックインするので精一杯という状況で、宮崎県の出品牛が待機している牛舎への挨拶だけで精一杯であった。

10月12日。まだ薄暗い中、どうも落ち着かなくて6時前に目が覚めてしまった。いつもよりもちょっと早い起床である。その日は今共進会の目玉である「第4区 系統雌牛群」の審査を皮切りに、「第7区 総合評価群」の審査までが行われる予定だ。会場には審査開始の9時きっかりに到着し、いそいそと審査が行われるテントへと向かったのだった。
本大会のスローガンが『和牛再発見』であることは前項で述べた。

第4区は全国各地で古くから飼養されてきた和牛の在来の血統を見直す意味合いで、新たに設けられた区分である。

詳細は前項ご覧頂きたいが、13道府県より52頭の出品(4頭1セット)があった。
なお、宮崎県は種牡牛「奥高」の血を受け継いでいる4頭の繁殖牛を出品。出品はいずれも西臼杵郡からなされている通り、主に同郡を中心に飼養される繁殖牛の血統にその名前を見つける事が出来る。

ちょっと我が国の和牛の血統の現状について紹介したいのだが、全国的に見て遺伝子の偏りが懸念される状況にある。それが如実に表れているのがこの審査区分の新設にある。

近年、種牡牛でもっとも勢いがあるのが、平茂勝や金幸を筆頭とした鹿児島県である。それは前回の岐阜大会において優等首席を独占したことからもおわかり頂けようか。鹿児島の和牛改良は(今回の鳥取大会に於いても第1区で上別府種畜場が出品を行っているように)民間の種畜場が県の所有する種牡牛をリードしている形だ。民間が種牡牛を所有しているが為に、新規の種牡牛が造成されれば全国的に精液の販売がなされることとなる。そのため、各地でその種牡牛の産子データが蓄積が容易となる。結果として、改良も父系、母系いずれかの形でその牛が関与する事となるのだ。

宮崎県の 家畜改良事業団 が、取り扱いの精液の流通を県内だけに押しとどめる販売戦略をとっているのと対照的とも言える。独占といっては聞こえが悪いが、このことは他県の市場との差別化、そして県内に優良な遺伝子を保有する繁殖牛の保留に一役買っていると思う。

今回の鳥取大会はその点に於いてある意味異常とも言え、ほとんどの出品牛の血統に何らかの形で上記、「平茂勝」の名前を見つける事が出来た。今大会が「平茂全共」と一部で言われる由縁である。
第5区。

各県の雌牛の審査比較については上記、第4区の他に第2区と第3区でも行われている。ただ、その2区と3区がどちらかというと1頭の牛の外貌の優劣について審査比較をするのに対し、この第5区では4頭を1つの群として、出品地域の改良による牛の斉一性を見るものだ。各地域の改良方針の成果の比較である。17道府県より68頭が出品(1セット4頭)。

宮崎県からはJA宮崎中央管内より4頭の出品。いずれも発育、体積については抜群。(あまり牛の事はよく分からないけれど)ひいき目は否定できないが、体上線、肋張りが抜きん出ている様な気がした。
第6区は母−娘−孫娘の3世代を1群として審査比較する区分だ。

母牛の優れた形質が世代を超えてどれほど受け継がれているかを比較するものと考えて頂ければと思う。

その中においても、世代を経る毎に形質の向上は当然ながら見られなければならず、出品牛の選定が難しい区分だろう。
全国から17群、51頭の出品(3頭1セット)があった中で、宮崎からは西諸県郡より出品があっている。

審査中に全国和牛登録教会の審査員が何度も足を止めるなど、私を含め、宮崎組にとっては上位入賞が期待できる審査風景であった。

そんな外野のざわつきなど関係ないように、のぞき込んだカメラのファインダーには牛の綱を持つ出品者があった。
こうして、審査が終わった牛達は自分の県の待機牛舎へと戻っていく。共進会2日目で種畜の審査は終了した。この結果を基に、明日はいよいよ各区分の等級決定に入っていく。

出品者、関係者はその晩。眠れぬ夜を過ごしたのでは無かろうか。
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