このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

さよなら
58654
阿蘇カルデアを突き抜ける豊肥本線から蒸気機関車の煙が消える。1988年の8月28日から17年を走りきった2005年8月28日、台枠のダメージが致命的なものであるためにSL快速“あそBOY”をけん引してきた58654は引退となる。

私がこの列車に乗ったのも太陽が眩しい夏の日のことだった。宮地駅にいた58654はその年、濃緑に塗色変更を受けたばかりであったので輝いて見えた。昔から手入れの行き届いたカマ(=機関車)に定評のあった九州であるが、私が当時見ていたED76などは塗装も色あせてあまり綺麗とは言い難かった。そのような中で見た輝く機関車である。趣味界ではこの塗装を嫌う傾向にあったが、それでも私は好きだった。

それから久しくこの蒸気機関車から遠ざかっていた。運転日は年々減っていったが、それでも時折地域ニュースなどでその姿を見せてくれる。豊肥本線と併走する国道57号線には多くの人があふれ、手を振って外輪山を登り切る坂に奮闘する58654を出迎えていた。

突然の引退のニュースに寝耳に水の心境であったが、すぐに気持ちを落ち着けて撮影スケジュールを組んだ。とにかく行くことができるなら阿蘇に行く。写真の腕もない私にとってこれが全てであったと思う。

2005年夏。青々と茂るススキの中を走り抜ける58654を見送った。だが、もくもくと吐く黒煙を見ながら、「引退」」という2文字がどうしても受け入れられずにいた。
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(05.08.31)

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