このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

銚電の“ぬれせん”
(2003.02.03)
先週の土曜日、関東在住の方から荷物が届いた。

「何かな何かなぁ〜♪」なんてワクワクしながらガムテープをビリビリと剥いだのだが、中から出てきたのがこの“
ぬれせん”であった。

実は私、産まれてこのかた『
煎餅なんて硬くてナンボ』な人でして、家族が“ぬれせん”を食べているのを見ながら「へん!!」と見向きもしなかったのである。でも、本当のところは塩辛い物が大好きという体質。食べてみたかったのも事実なのである。これまで“ぬれせん蔑視”の立場をとり続けていた手前、家族の前で食べるのはちょっと恥ずかしい。でもでも、現在そばにいるのはそのことを知らない彼女である。

と言うわけで、包装をピリッと破きかぶりついたのであった。


ちょっと普通の煎餅より塩辛いかなと言う印象。しかしながら香ばしい味と薫りは何とも言えない。こりゃいける・・・。今まで掲げてきた“ぬれせん蔑視”の看板をあっさりと撤去したのであった。

では、普通の煎餅と“ぬれせん”の違いはどこにあるのであろうか。これは製造法に大きな差があり、下を見ていただくとおわかりになると思う。

 普通の煎餅
1.生地(お米を挽いて蒸し、型にぬいたもの)を乾燥させる
2.焼く
3.常温まで冷ます
4.醤油につける
5.乾かす

 「ぬれせんべい」の場合は …?
1.生地を乾燥させる
2.焼く
3.醤油につける
4.すぐに袋詰め

乾燥させずに袋にすぐ入れるから、焼き餅を食べているような独特の感触になるのですね。
《鉄道会社のお菓子》
1枚目をハムハムと食べ、2枚目に手を伸ばそうとしたとき気付いてしまった。包装の右下に電車が描かれているではないか。裏の表示を見ると『製造者:銚子電気鉄道株式会社』とある。

!!!

再度、表を見てみる。

       『
むらさき香る沿線 潮騒めぐる銚子電鉄
                     風味豊かな ぬれせんべい


そして左下では、直営製造販売所として、仲の町駅、笠上黒生(かさがみくろはえ)駅、犬吠駅が紹介されている。

鉄道趣味人の端くれにとってこんなに歓喜することはない。もう、この“ぬれせん”を送っていただいた人には感謝感謝であった。


でも、どうして銚子電鉄に“ぬれせん”なのであろうか。

それには
銚子という町の歴史と製造元の電鉄会社の経営状況が深く関わっているのである。

まず、千葉県銚子市。千葉県のひがしのはじっこに位置する人口7万8千人の町である。黒潮の黒潮の恩恵を受け漁港の町として発展し、また約300年の歴史持つ醤油産業の町としても有名である。この醤油を利用して産まれ、今や一つの米菓子ジャンルを確立したのが銚子の“
ぬれせん”なのである。

そして銚子電鉄。大正12年に“銚子鉄道株式会社”として開業後、同14年には電化完成。昭和23年に現在の社名に落ち着いている。営業キロは銚子〜外川間の6.4km。車輌は機関車も含め7両。駅数は9駅でうち4駅が無人の極小私鉄である。鉄道経営というものどこも一緒で、モータリゼーションなどの沿線環境の影響を受け、昭和50年からは国からの補助認定を受け、国・県・市から補助を受けている。

その補助も平成9年度を最後に国分の補助がうち切られ、いっそうの経営努力が必要となる。そうして産まれたのが
“ぬれせん”の手焼き実演販売であった。当初犬吠駅のみであった販売所はメディアで取り上げられたりと評判を呼び、翌年には増産に対応すべく仲の町駅に専用工場が完成する。

かつては100万人台をキープしていた輸送量だが、年間数万人単位で減少し平成13年年の時点で72万人。決して良いとは言えない鉄道事業の穴埋めを一手に引き受けているのである。



で、銚子電鉄のHPにお勧めの食べ方が紹介してあったので試してみた。
袋から取り出して電子レンジで20秒ほどあたためるのだ。すると、柔らかさが増しホクホクで幸せ度が増す。より焼き餅的になるのだった。

本当にごちそうさまでした。

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