このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

湯布院の町を散策していると、道路をポテポテ横断していく猫の姿をよく見かける。まあこれについては湯布院の町並みについて触れてある“どこそこ”の文章で見かける表現であると思う。

以前は金鱗湖畔を歩いていると、亀の井別荘の生け垣からにょっと顔を出した“ちょびひげ”の猫くんを見た物であるが、九州を代表する観光地となり年間300万人の人が訪れる今ではこのような猫くんを見かけることもなくなった。湯の坪の界隈には猫屋敷という店があるけれども、これは単なる猫グッズ専門の土産物や(店内2階には実際に外国の大型の品種が居るがいつ行っても寝ている)。猫たちにとってはこの町の急激な変貌は住みにくくなってしまったのだろうか。

しかしながら見かける機会は少なくなったとはいえ、クヌギのトンネルの道、石垣の畑、旅館や民家の塀に黒や白や三毛、キジ・・・。まだまだ猫の姿を見つけることができる。観察をしてみると人が傍にいることは稀で、たいていは単独、複数でも2〜3匹で“居る”事が多い。人間の生活圏であるから当然犬は飼われているが、ヒモに繋がれているから道路に出てくることはない。こんな感じであるから犬たちは猫と比較して何だかとっても肩身がせまそうに映るのだった。

繁殖期には当然、女性のわめくような声を出して走り回っているのだろうが、1年のほんのわずかな時期にしか湯布院へ顔を出さない人間にはのんびりと“居る”姿に心がほっとなる。“写真家”石松健男氏の写真がちりばめられている“オフのゆふいん(インタープリンツ、1997年)には“玉の湯”の植木鉢でひなたぼっこをしている冬の猫の写真があるが、結構レンズが接近しているにも関わらず目を閉じている。まさに“のんびり”。湯布院の時間の流れを感じさせるような1枚であった。

私はといえば、“猫町・湯布院”を思わせるような1枚を未だ取ることができていない。ゆっくりと独特な時間の流れ方をするこの町の風景にとって、とても重要な要素の一つである猫になかなかシャッターを押させてもらえないでいる。いつもドタバタしているのでそのような慌ただしさが伝わってしまうのか、カメラを向けたときには後ろ姿だ。

そのうち撮影できるだろうか。それがいつになるかは猫のみぞ知るといった感じだろう。
猫町・ゆふいん
(04.12.23)
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