このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

《湯布院行》 2004年初秋
8月22日。私が住んでいる団地では午前中に定期の清掃作業があった。その日、研修直前ということもあり、土曜出勤でやり損なっていた仕事を片づける気でいた。朝の8時。8月もお盆を過ぎるとすっかり秋の空だ。雲は多かったが、時々のぞく青空は抜けるよう、そして風も非常に涼しい。草刈りの合間、空を見上げると、遙か上空をアキアカネが舞っていた。

非常に気持ちの良い作業であったのだが、終わったとたんに残業する気はぶっ飛んでいた。こんなに天気がよいのである。ずぇったいにどこかに行かねば損なのだ。・・・というわけで大分方面に行ってみましょうかとなったのだった。

突発的な思いつきなので、初めから泊まりは想定していない。出発時点では行き先も“大分方面”としか決まっていなかった。自分で餌をくわえることができないツバメのヒナを車に積み、ひたすら10号線を北上する。

日向、延岡、宇目・・・と所々でツバメに餌のミルワームを与えながらの道中となった。そのためいつもよりも大分ペースが遅い。国道326号線から三重町より竹田方面を目指す。

それから原尻の滝を見た。そして竹田で岡城址の下をくぐり、駅の近くの土産屋系の醤油店で“醤油ソフト”を求める。この“醤油ソフト”。名前を聞くだけでは不味そうなのだが、意外や意外。案外美味いのだ。確かに一舐め時には「?」となった。しかしながら、ほんのりとしたしょっぱさがバターキャンディを思わせて、具合が良いのである。ちなみに300円でした。

その後、久住高原を抜け、由布岳を正面に見ながら国道202号を下ってきた。時計を見ると既に17時であった。
流石に夕方ともなると道を行く観光客も少ない。お盆明けというのもあろうか。徐々に薄暗くなっていく由布見通りから一本路地に入って、“亀の井別荘”に向かった。

駐車場に車を停め、“亀の井別荘”の併設売店“鍵屋”へと歩いた。今年の夏は本当に暑かった。その分秋が早くやってくるのだろうか。大分川を覆うようにして茂る紅葉は、枝の先端が既に淡く朱がかっていた。

私がカメラを構える度にwifeが足を止めて待ってくれる。そんなwifeにカメラを向けると逃げていった。
“鍵屋”。以前は色々な物が置いてあってごたごたとした店内であったが、レイアウトが変わった店内は広く思えた。ここでは湯布院関係の書籍をあさる。いつもこのような感じであるが、今回は収穫無し。

店を出る前、ガラスの向こう側の緑の木々が目に入った。とても印象的だったのでデジカメを向ける。それがこの項のトップの画像である。
もう18時を回った。夕食を考えなければならない。宇奈岐姫神社の大鳥居の近くに新しくできていたローソンでガイドブックをめくるが、良い案は出ない。仕方がないので以前から気になっていた定食屋をチョイスすることとした。

由布見通りのこの看板を記憶されている方もおられるだろう。“地元の正しい大衆食堂”といった風情の“六所亭”である。

店の中はがらんとしていたが、既に御近所と思われるおっちゃんがチャンポンを食べ終わったところであった。テレビではオリンピックの野球をやっている。試合後半まで日本が追いかける展開の台湾戦。店の奥の座敷に座り、しばらく眺めていた。
女将さんが注文を取りに来たので、wifeが“鳥天定食(850円)”を、私が店の名が冠された“六所定食《1200円)”を頼む。

注文する間際までその値段に躊躇したが、思い切って頼んでみることとした。1200円という価格設定。この店でもっとも高い。なんだかブルジョアの気分だぞ。

店員はこの女将さん一人のようだ(勘定する時に聞いたが、本当はもう一人店員がいるそうだ。女将さんにも理由が解らないが、この店員氏。本日は遅刻らしい。)。注文を聞き終えるといそいそと厨房へ入り、フライパンを握っていた。
wifeの“鳥天定食”。エビ、野菜のなどの天ぷらも入り、てんぷら定食といった方がよいかも。

これをポン酢ダレに付けて食べるのだが、味は悪くない。
六所定食”。一体どげな物なのか気になったわけであるが、運ばれてきた物は「焼き魚定食+焼き肉定食」というボリューム満点のメニューであった。

これが“焼肉”であるが、焼肉というよりはステーキに近い。脂身が少なく、和牛のように柔らかくはないが、おそらく自家製と思われるタレとの相性も良い。
この“六所亭”であるが、夕食の予約を取っていないときに非常に助かる存在といえる。言ってしまえば『最終兵器』のようなものである。値段設定も、湯布院で夕食を本気で食べることを覚悟した場合には万近くが飛んでいく事になるのだが、この価格設定は湯布院ではかなり安い部類だと思う。


本格的に夕食の時間となり、観光客、地元の人が店に入ってくる。ラーメン、焼き肉定食、豚カツ定食・・・。みんな頼む物はバラバラであるが、女将さんは黙って注文を聞いて調理に取りかかっていた。ちょうど試合の終了間際、日本が台湾に追いついたところで勘定を済ます。

店をでると既に太陽は落ちており、パチンコ屋のネオンが自己主張を始める頃であった。その中、ミニカを通りに出し、202号線から大分市を経由して宮崎を目指した。

途中、犬飼ではちょうど夏祭りが開催されていた。大野川にかかる橋を渡る頃、花火大会が始まる。数十メートル離れていない場所から見た花火は、少しの風情と圧倒的な迫力を持つ物に映る。

ドタバタとした旅であったが、充実した時間をこの花火が締めくくってくれた。
>Index
(04.08.24)

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください