このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

本格焼酎“あくがれ” Take Off
12月4日(土)の午後、宮崎県東臼杵郡東郷町にある“道の駅とうごう”の駐車場では鏡開きとともに甘い香りが漂った。東郷町は“歌人”若山牧水誕生の地である。 もともと東郷町には明治の頃から牧水酒造が“牧水”、“奥日向”、“松鹿”、“六瓢”といった銘柄を作ってきた(牧水酒造の銘柄については こちら や“ 絶版録 ”の県北の焼酎を参考願いたい)。1997年の牧水酒造の廃業後、7年もの空白を経て焼酎蒸留の風景が町に戻ってきた。

廃業した牧水酒造でも顔となる銘柄には町から出た偉人より名前をもらっている。また、この新蔵もこの牧水が中国地方を旅行した時に詠んだ「けふもまたこころの鉦をうち鳴らし、うち鳴らしつつあくがれて行く」から『
あくがれ』の4文字を銘柄にもらった。若山牧水といえば自然、旅を愛した歌人であることは良く知られている。そして酒。1日1升飲んでいた、死因の第一要因は肝硬変なんて話もあるくらいだ。
12月4日当日。宮崎県は発達しつつあった低気圧の影響を受けて県内一円の大雨であった。会場となる道の駅では同日、フリーマーケットの開催も予定されていたようだが、私が到着した11時頃にはそれらしい物は見あたらなかった。ただ、食べ物を出す、そして振る舞い酒の会場と思われるテントがポツンと設営されていた。

こんな雨の中人は集まるのだろうか・・・と嫌な予感がしたのであるが、開催の時間が近づくにつれて軽トラなどが集まり、テントの周りには人だかりが出来た。
新蔵“富乃露酒造店”はもとは鹿児島にあった焼酎蔵だ。銘柄も“富乃露”といったが、今は日向市で建設業を営む黒木繁人氏が蒸留免許の委譲を受け、東郷村の耳川のほとりに工場を構える。

「多くの人との出会いとつながりで今日の初蔵出しを迎えることができました。これまで皆様方に戴いた声援を裏切らず頑張っていきますので、応援宜しくお願いします。」

黒木繁人社長の挨拶の後、町の商工会議所の副会長氏の挨拶がある。

「町内だけでなく、県内を飛び越えて県外までこの東郷町産の焼酎が広がっていきますよう・・・。」


このように地元の焼酎蔵にかける思いという物はかなり大きい。
そうして、新酒の振る舞い酒と焼酎“あくがれ”の販売が始まった。銘柄に込められた願いは“あくがれ”という言葉の語源にある。“あくがれ(=在所離れ)”には『魂(心) が今在るところから何かに誘われ離れ去っていく』という意味がある。飲み手が心誘われるような焼酎になって欲しいという願いを込めて名付けられたのであろうか。

また、 『誘われ・・・』の部分。衝動に体が突き動かされると言うことであり、“焼酎業界という全くの未知の分野への参入”という蔵の“チャレンジ精神”の現れであると瓶の裏貼りを読むと、そう思えてならないのである。
振る舞い酒には社員総出であたる・・・といった感じだ。蔵の門出を祝おうと集まった人々は振る舞いのカップを求め、そして4合瓶や1升瓶を買い求める。社長も柄杓を持って先導に立ち、透明のプラカップに焼酎を注いでは手渡していた。

「生でもおいしいですが、お湯割りだともっと風味が広がりますよ。」

翌朝の 宮崎日日新聞 によれば、瞬く間に4合瓶は売り切れてしまったそうだ。今後、“大地の夢”という新品種の甘藷を使った黒麹製の焼酎も予定されており、色々と楽しみな蔵元である。
さて、その“あくがれ”であるが、東郷町まで気張って突撃したのであーる。ここは当然ながら購入しないわけにはいかない。

雨ながらも上記の様な混雑を予想していた不肖goidaであるが、道の駅とうごうに到着してすぐ、同道の駅敷地にあるショッピングセンター内の酒屋“ 七福酒店 ”さんにて購入を済ませたのだった。

以前からなかなかこだわった酒類を扱うお店だと感じていたのだが、富乃露酒造産に購入出来るお店を尋ねた際に真っ先に出てきたのがこの“ 七福酒店 ”さんだった。
代表者である藤井武士氏にお話を伺ったところ、予約販売分だけでも相当数の引き合いがあったそうだ。店頭販売についても、酒店の開店と同時に動いているという。お話しを聞いている間にもおっちゃんが一升瓶を抱えていった。

「これをきっかけに“地元”東郷町がもっと盛り上がると良いですね。」

と藤井氏は話される。

現状ではこの“あくがれ”の県内での販売はこの七福酒店と日向市のもう1件になるそうだ。価格は1升瓶が2,460円、4合瓶が1,360円。

東郷町に行かれた方は是非とも覗かれて見てはいかがでしょうか?
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(04.12.06)

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