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ギズボーン水害 Gisborne Flood 2005


2005年10月のLabour weekend (勤労感謝の日)の洪水は、気候温暖平穏といわれているギズボーンには将に「青天の霹靂」でありました。
3日間にわたって降り続けた雨は、我が家には「多すぎる雨」でしかありませんでしたが、ギズボーン地区の農業は大被害を受けました。

さらに、その1ヵ月後の11月の集中豪雨と長雨は、やっと始まった復旧作業をすべて押し流し、被害は前回以上となりました。

ギズボーン当局によりますと10月分の被害だけでも、被害を受けた作物と耕地は3,000ヘクタールに及び、損害はヘクタールあたり最低でも$1,000になるとのこと。
特に日本向けとうもろこしや、日本向けかぼちゃなどの産業は甚大な被害です。  ましてや、11月末の分もともなると見当もつかない被害です。
    
以下の空中撮影は1回目の洪水10日後の状況です。  


水害10日目の航空写真。 左上部を細く流れているのが川。
川砂が畑地を埋めているのがわかる。
水がまだ残っている。


同左。
畑地が池と化して、発芽直後から若い苗までの野菜は全て枯死。
 

 
同上日。
こちらの畑地も川砂で埋没している。


同上日。
こちらは、逆に川から遠いために排水が悪く、完全に池と化している。



ここから下は、洪水から2週間経って道路が復旧してから見てきたときの様子。 


ここから下は、洪水2週間目の写真
茶色くなっているのは枯死した作物。 手前は表土が流失してしまった部分。


同左


圃場の復旧作業。
復旧できる農家は、まだ恵まれている。

 


溺死した牛。
家畜の被害600頭との報道もあり。


肥沃な表土が失われ、代わりに泥土に覆われてしまった畑。 
復旧のしようが無い。 
水はけが悪く、美味しいかぼちゃはもう作れないだろう。


奥のフェンスに引っかかっているのは、流れて枯れた作物の苗。
このフェンスに引っかかった枯葉を取り除く為にボランティア出動!

11月11日の報道によれば
その燃料代やトラックのリース代などに政府が出したのは、
たった7万ドル(560万)。
どれだけ広いと思ってるんだぁ!!



上 

かろうじて生き残ったとうもろこし畑。 スイートコーンではないと思う。 
防風林の手前は水没して枯死した部分。



右 

水没を免れたワイン用ブドウ畑。

 


まだ、水の引いていない畑
再度畑として使えるのはいつになるか?


同左 当地の重量級トラクターが入れるようになるにはよほど乾燥が必要。
11月中の再耕起ができるかどうか?


道路も砂をかぶって、2週間経ってもこの有様。


切通し部分の崩落は数え切れず。 全復旧は来年以降の見通し。


路肩崩壊もきりが無い



なにしろ川の氾濫たるや凄まじく。


  道路も寸断されて、あちらこちらで、ご覧のとおりの片側交互通行。
  
  

10月31日の新聞報道によりますと2006年収穫予定野菜の被害額は現在判明しているもので、
 

日本向けかぼちゃ
日本向けとうもろこし(スイートコーン)
澱粉もしくは飼料用とうもろこし
ブロッコリー
輸出できなくなる損失額
生産がなくなることで支払われなくなる給料
 

 

約3億3千万円
約1億円 
約1億2千万円
約1億2千万円
約9億円
約2億円
                                                       



政府曰く
「大雨は、何年か一度に降ります。 いちいち個別の大雨にかまっていられません。 自助努力してください」

農地を高くするとか、堤防を築くとか、水門を整備するとかしないとまた来年もこうなるかもね。
なぜなら、上流はあちこち右の写真のような感じ。 
林業は「良い材木を選んで選択伐採」。 ではなく「どうせ安普請用材木かパルプ用で選ばず皆伐」だから伐採したら最後、丸坊主の山になり20年は保水力は期待できません。 

他の一見、緑が有る場所でも、実は牧草地だからこれも保水力は、まったく期待できません。
ニュージーランドのほとんどの川は、雨が降ればいきなり増水します。
つまり、いままでギズボーンで洪水がなかった方が幸運だったわけです。

治山治水は一朝一夕にはできず、そのような技術の有る土建会社も国内には非常に稀。
かくして、この災害は起きました。 
90%人災。


 
 

11月3日の報道によれば 

地域道路の被害 

約3億2千万円以上(国道を除く)
おまけに道路工事業者はオークランドの都市開発工事で忙しく、田舎の工事は後回しとのこと。 当分、あちこちで片側交互通行(ずっと上の方の写真参照)。

農産物の被害

日本のカップスープ(ポッカやクノールなど)のコーンスープ原料やミックスベジタブルなどのコーン原料を作っているシデンコ社の350ヘクタールのスイートコーン畑がほぼ全損で種の蒔きなおし。 それだけでも被害額約1億円以上。 
同社グループは、ニュージーランド産とうもろこし製品の大部分を生産しているので、影響は同社製品を原料としている、缶詰のコーンスープ、冷凍コーン、ミックスベジタブル、等などに拡大するでしょう。

同社の別の畑の200ヘクタールのスイートコーン畑のうち45ヘクタールが種の蒔き直しが必要だそうですが、 
「早熟タイプのコーンを蒔くことで生産量は巻き返せる」と強気の発言。

実は深刻な農業被害

ギズボーンでは平年 とうもろこしや、かぼちゃなどの夏野菜を9月から12月まで種まきして、1月から5月まで収穫します。 
2回の洪水で3か月分の畑がパァになったわけで、いくら早熟品種を蒔いても1月に収穫は無理でしょう。 

となると、平年どおりの生産量を確保するためには、加工場や選別場の作業効率を上げねばならない。 なぜなら生産量同じで生産時期が短縮されるということは1日あたり生産処理量を飛躍的に伸ばさないとノルマが達成できないから。

「これは簡単。 掃除をやめればいい。」とか「規格を甘くして」とか、頭の悪い業者はこれをやる。 この手法で日本でも食中毒で古来死人が出ていたり、品質不良で受け入れ拒否されたりしているんだなぁ。
こういうことが無いように願いたいものです。

しかし、いくら数が確保できても、品種が違って畑が荒れれば、同じ品質の作物を作るのは難しい。 というか常識的にありえません。
こういう天災の後は害虫や病気も出るから農薬使用量も日本並みに増えるし、農薬撒かなければ品質は落ちるし。。。

唯でさえ為替がNZドル高で輸出がつらいのに、高くて品質の落ちた産物を日本のうるさいお客さんが買ってくれるのか?
品質が劣るなら、安いアメリカ大陸産がいくらでも手に入るわけで、NZ産のメリットは「高品質」なのに。。。
日本市場への理解の足りないニュージーランドの会社はしばしば、「量で補う!」みたいな失敗をやるけれど、どうも同社も同じトラップに陥ったようで。 ナンマンダブ。

ともあれ、気の毒なのは普通のお百姓。 これまた、同情票が集まらず寄付の「き」の字も街で語られないのは不思議。
今年の初めや去年の他の地方の水害では、ものすごい寄付が数日で集まったのに。。。。。


1回目の洪水のときに政府や自治体の無策を非難していた農夫は2回目の洪水の後は、涙でインタビューに答えていました。 12月に入ってやっと政府は「個々の農家について対応する」と発表しました。 選挙前の洪水の時には一律いくらの最低保障を出したのにねぇ。

別の報道によれば
南半球から日本へ向けて出荷される日本品種のかぼちゃ(あじへい、えみぐり等)は供給過剰。 ただでさえ原油高で船賃高騰で値段が合わないのに、この有様ではかぼちゃビジネスをあきらめる農家はもっと増えるだろう。 とのこと。 


日本の皆様、来年のギズボーンのかぼちゃが少しくらい甘くなくても、粉質が悪くても、傷が多くても、腐れが多くても、とうもろこしの味が おかしくても、甘くなくても、洪水で流された種がアッチコッチの畑に混ざってしまってトレーサビリティーが無くても、ロットの中の品種が混ざりまくりで も、みかんが酸っぱくても、助けると思って買ってやってください。
お願いします。 


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