このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



何故だか分からないのですが、肉が嫌い、豚肉が嫌い、豚肉の脂身の臭いが嫌いと云う人は西日本出身者な事が 多い気がします。 そう感じているのは私だけではなくて、JA2RM氷室さんも長い会社員時代を振り返り、そういえば と思い当たる節があるそうです。

そこで推論;  「西日本と東日本では豚の餌が違う (違った)のではないか?」

何故こう思うかといいますと、豚に限らず肉の臭いと云うものは肉の脂の匂いが大きな部分を占めています。 特に肉を料理した際の熱して溶けた 脂身の匂いは肉料理の美味さの大きな部分です。 

牛と豚の餌

日本では、殆どの肉用家畜が配合飼料を与えられて肥育飼育されています。 配合飼料とは何かと云うまえに、そもそも牛や豚は歴史時代に何を食べていたか? という事を明らかにしましょう。 牛と豚では食べるものが違いますから、いっぺんに説明はできません 。 

まず牛から。 牛は草食です。 牧草を食べて育ちます。 

ニュージーランドや、その他、古典的牧畜を行っている国々では、牛は牧草を食べて育ちます。 牧草は牧場にボサボサ生えている雑草では有りませんよ。 牛 の栄養や土の養分の維持、青々としている期間を如何に長く保つかなどを考えて何種類かの牧草の種をわざわざまいて、肥料をやったりして育てている「牛用の 野菜」だと思ってください。
クローバーやアルファルファなどのマメ科の植物は、根っこに寄生している空中窒素固定細菌が空気中の窒素をとりこんで土地を豊かにします(昭和50年代に 高校生だった人は覚えているでしょうアゾトバクターと云う言葉)。 イネ科の牧草はマメ科と比べると、栄養価は低いかわりにはるかに大きく育ちますから、 牛が腹いっぱい食べる事が出来ます。 

栄養価が低くて腹いっぱい食べられるなんて、味の点を無視すれば人間の減量ダイエットにも最適ですが、牛は人間とは違う消化の仕組みを持っていますから、 この栄養価の少ないイネ科牧草を体内で栄養豊富にしてしまいます。
牛には胃袋が4つも有るというのは皆さんご存知の通りです。 牧草と云うのは、その構成成分の殆どが食物繊維です。 人間は食物繊維を分解する消化能力を もっていませんから、食物繊維は「便通をよくする」くらいにしかメリットが有りません。 (大腸がんの予防にはなりませんでしたと日本政府も発表しまし た)  しかし、牛はその4つの胃袋の中に数え切れない(銀河系の恒星の数くらいかな?)数の微生物を飼っています。 特に第1胃は漬物工場状態ですが、 そこでは、牧草の食物繊維を酢酸、プロピオン酸、酪酸、乳酸などの形に分解生成します。 同時にゲップの元になる炭酸ガスやメタンガスも出します。 さら に、そういう分解された成分は牛の体に吸収されたり、牛の胃袋に居る他の細菌や原虫の栄養分となります。 そして、それら微生物は下流の胃や腸で又分解さ れて、栄養素として牛の体に吸収されるわけです。 

つまり牛や羊などの反芻する、胃袋がたくさん有る動物は見た目は草しか食べていませんが、実は体の中では、他の生物を消化している、いわば肉食動物だった りするのです。
ともあれ、牛は本来こういうものを餌としています。

そうそう、乱暴な言い方だけれども、イネ科牧草を牛の胃袋の中と同じような仕組みで発酵させて作っているのが牧草の漬物サイレージ。 
北海道と云うと内地の人が思い浮かべるタワー式サイロは、サイレージの製造装置なのです。 こうして牧草を漬物にしておけば、冬の間も栄養価の高い餌を牛 に与えられるという昔からの知恵なんですね。

豚の場合
豚のご先祖様はイノシシ。 こいつは悪食で、何でも食べる。 木の実、葉っぱ、木の根、草の根、きのこ、昆虫、蛇まで食べる。 だから、人間に飼われる様 になったイノシシの子孫である豚も何でも食べる。 古くは人間の残飯で育てられていました。
豚は消化の仕組みは人間と同じだから、牛や羊のようなややこしいことは要らない。 やった餌が結果として肉質にでてくる。 どんぐりや片栗の根を多く食べ て育ったイノシシは美味いといわれております。

配合飼料

前置きが長くなりましたが、やっと配合飼料まで話が届きました。  配合飼料は牧草などの粗飼料に対して、濃厚飼料とも云います。  日本の畜産業は配合 飼料を使って育てられています。 これは均質で質の高い肉や乳、卵などの畜産製品をできるだけ短期間で得るという目的が有るからです。 日本は決して小さ な国では有りませんが、むやみやたらと山がちで利用可能な国土が極端に少ないので、どうしても効率という事に目が向きます。 
地平線の向こうまで「オラの牧場だべ」というZLでは、たくさんの牛をのんびり草で育てて、良さそうなのを見つくろって出荷すればよいですが、JAではそ うは行きません。 少数精鋭で育てて、全部の牛に良い肉になってもらわなければなりません。
というわけで、日本の牛は配合飼料で育ちます。 
豚は日本も西洋の諸国も一部の残飯で育てている例外を除いて、近代化した養豚は配合飼料で育てます。 

配合飼料と一口に言っても中身は色々な種類が有ります。 牛様豚用鶏用鯉やハマチなどの魚用。 牛や豚用のものも、霜降り牛用、とんかつ豚用などから、 「ともかく早くでかくなれば良い」用まで、様々な原料の組み合わせが有ります。 家畜飼料学はすっかり忘れてしまいましたので、どの組み合わせがどういう 効果を家畜の成長に関係するかは省きますが、食品屋として忘れていない大事な事が有ります。
やっと本題にたどり着いた。

魚臭い豚肉。

いわしの不良が続いておりますが、鰯がどかどか取れた戦後昭和30年代40年代をピークとして。 この時代はUS$と日本円の交換レートが360円/US $1.00だった時代ですから輸入飼料も高かった。 そこで当時、かなりの量の鰯が家畜の餌として使われておりました。 
散々長い前講釈をしましたが、結果は一言。 魚系の飼料を豚に多給しすぎると、魚粉、魚粕中の魚の臭いの元となる魚油成分を豚がしこたま食べる事になりま す。 そして脂肪分は、豚肉中に脂身として蓄えられる事になります。
このような豚肉を焼くと魚臭いのですよ。 

豚肉は本来牛肉と比べて臭いの少ないあっさりした肉です。 これに、においが強くなる成分を多く含む餌を与えると、その臭いが肉に出てしまいます。
そこで、冒頭の西日本の人の豚肉嫌いの話が出てきます。 西日本ではよほど酷い餌を豚にやっていたのではないか?と云う私の疑問は、こういう理屈から思い ついたものです。 
私は西日本に住んだ事は有りませんし、現状どうなっているか分かりませんが、今「豚肉が嫌いだ」といっている人々が子供の頃、その人たちの周りには、おそ らく「そういう変なにおいの肉が出回っていたのはないか」というのが、私の推論です。。

美味い豚肉を作る

先ほどどんぐりや片栗の根を食べているイノシシは美味しいと言いましたが、これはどちらも澱粉の多く含む植物です。 澱粉で育てる豚は美味いですよ。  ジャガイモを餌にして豚を育てると実に美味い豚肉ができます。 餌に脂肪分が無い=臭みの成分がすくなくなる。 と言うわけで美味しくなるのです。  よ く黒豚がうまいとか言い居ますが、あれは黒毛和種と云う牛の肉が高いので、黒豚農家が「同じ黒いからと」あやかっただけで、美味しい豚を作るには品種より は、餌の種類で決まります。 一般に出回っている豚はヨークシャー、ランドレース、デュロックという三種類の豚の混血ですが、こういう当たり前の豚でも、 良い餌で育てれば効率よく美味しい豚肉を得ることができます。
で、美味しい豚肉でどんな食べ物を作るか? 
ハムを作るとその差が一番よく分かりますよ。 とんかつは意外と周りの揚げ油にだまされて肉の良し悪しが分からないものです。

ついでに牛に肉骨粉。

説明したとおり牛は草食動物ですが動物性たんぱくも消化吸収できます。 そこに目をつけた欧州の畜産業が目をつけたのが、牛豚羊など家畜の皮や骨、内臓な どを粉にして牛などの草食動物にやったら、早く大きくなるのではないかという手法です。
結果は上々で、世界中の配合飼料で牛を育てる畜産業に広まりました。
そしてBSEウシ海綿状脳症が広がったのです。 
この手法はBSEが出る前から人為的に共食いさせるのは如何なものかと云う意見がありました、なぜなら、人間にも人食い人種の間には似たような病気が知ら れていたからです。 
日本は、いま、晴れてBSE汚染国です。 英国(G)の週間科学雑誌ネイチャーにBSEの原因がたちの悪いプリオンで、そのプリオンを破壊するにはとてつ もない高温が必要だと載ってからも、日本の農水省は何もしませんでした。 そして、これが結果です。

高い教育を受けた日本人のなかでは、官庁の役人くらい英語嫌いが多いところはありません。 外国貿易にかかわる役所でも翻訳文の提出を求められます。 こ れがタイ(HS)語だとか、デンマーク(OZ)語なら、役所の翻訳要求も分かりますが、大卒の役人なら少なくとも8年は英語の教育を受けているわけで ねぇ。 「そのくらい読んでくれよ」と云う気がしますよ。 
その英語嫌いが英語の科学雑誌を本棚の肥やしにしている間に、日本はしっかりBSEに汚染されてしまいましたとさ。

人間だって理屈は同じ

西洋人がそばに来ると脂臭い、チーズ臭い と日本人は思います。 西洋人は日本人は魚くさいと言います。 これまた、食べ物のにおいが体臭に出ている一例 です。 肉に匂いが付く位ですから、体臭だって食べた物の影響を受けます。
昨今日本では加齢臭を防ぐというので、バラのエキスや、その他植物のエキスを飲むのが流行りだそうです。 にんにくを食べるとにんにくの芳香成分アリシン が血液中に溶け込み、体中、特に肺から、かなり長い間放出され(24時間くらい)、歯を磨いたくらいでは「息のにんにく臭さは消えない」という例も有りま すから、確かに、理屈で言えば効くかもしれません。 
  
しかし、そんなことするくらいなら、ちょっとおしゃれなオーデコロンでもつけましょうよ。 あの手の健康食品の馬鹿高さを考えたら、一瓶2万円のオーデコ ロンだってはるかに安い買い物です。 それに、気分で日々香りを変える事が出来ます。 
だいたい、バラの香りの爺様婆様なんて、、、皆さん。 どう思います?

とてもよくわかる肉や肉製品の科学は 岡 山大学のこちら を参照ください。


ホームに戻る

話 の種の見出しへ戻る

(c) ZL2PGJ 2004-2006 使用条件

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください