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耐久性と操作性に富んだテレメーター発信機追跡システム。
中型以上の野生生物(鹿とか、熊、イノシシ、狸などなど)の行動範囲を調べる為に、小型の発信機を動物にくくりつけ て、そこから発信される微弱電波を追っかけるというARDFにも似た手法は、いまだに野生動物を扱う人々の間では普通の方法です。 たとえばこんな研究 に使われています。
給餌が植林地のシカの生態に与 える影響
給餌が植林 地のシカの生態に与える影響 (継続)
この方法は、リアルタイムで対象動物の動静が把握する方法の中では最も安価なものでしょう。
リアルタイムで追う方法で最先端の方法は、400MHzの発信機を人工衛星で追跡する方法ですが、これは免許や資金 が大掛かりとなり、なかなか実用向きではありません。 安価で正確な追跡ができるシステムとして現在利用されているのは、GPS搭載のPHSだそうです。 ただし、これはPHSの圏外ではお手上げですから、熊や鹿のような動物には向かないですね。 人里近くにいる狸にはいいかも。
リアルタイムでは分からないけれど、回収してダウンロードできるデータロガー方式のGPSテレメ(こうなるとテレメ トリーとは言わんけど一般呼称としてテレメ)もあるそうで。 こういう、後から回収するタイプはテレメをつけた動物を捕獲するか、機械を自動的落下させ て、これを回収せねばなりませんが、この際にはやはり古典的な電波発信源探知をせねばなりません。
現在どのようなスタイルが一般的かどうか知りませんが、丹沢札掛、玄倉等、神奈川県近辺で使われていた方法は、受信 機にオフバンド改造したヤエスの弁当箱(2m=144MHzBand近辺)使用し、アンテナは2m用3エレを使うのが一般的でした(90年代)。
(落下PHSの探索なら、6cm程度の幅のアンテナでOKですから全てをプラスチックケースに入れたらポケットに入りますね。)
こういう活動の実働部隊は大抵学生さんですが、理系の学生があらかたはハム免許を持っていた時代はとっくに去り、こ の時代錯誤なシステムを何とかしようと云う人は居なくなってしまったようです。
とりあえず、こんな装備で、山の中で藪コギしていればエレメントを引っ掛けて折損するのは日常茶飯事。 しかもエレ メントをアルミ材から切り出して修復しようなんて人材はいないから「部品」で注文。 寄付や自然保護団体からの補助金で運営している団体も多かろうに、 意外と頓着なく修理費の無駄遣い(メンバーにお役人が多いから仕方ない?)。 さらに重たいアルカリ電池を8本も入れたベント箱持っているから動きも取 れない。
私が昔使っていたのは、これらとは縁の無い以下のようなシステムです。
146MHzテレメーター用試作1型(1995)
塩ビパイプ製
受信機: ユピテルのSSB受信可能なポケットサイズのワイドバンドレシーバー。 型番は忘れた。
アンテナ: 太目の厚めのジュラルミンで作ったZLスペシャルの2エレ(ZLのハムが開発したからZLスペシャル。 私が開発したわけではないhi)。
受信機は、現在購入可能な製品としては ア イコムのIC-R20 、バーテックススタンダードの VR500 等 でしょうか。
一般のAM、FMが受信できるだけの安価な広帯域受信機ではテレメーターの信号は受信できません。 CW(電信) か、SSB(シングルサイドバンド)が受信復調できる機械となるとかなり限られます。 でも、送信機能は使わないわけで、重いオールモードトランシー バーを使う必要は無いですから、はるかに安い買い物です。
丹沢などで、動物調査の業務連絡に無免許で送信している人を良く見ましたが、自然保護派も密猟派も電波法違反と云う 面では、やっていることは同じなのですね。hi
アマチュア無線交信と違い、利得がどうこうより、指向性が鋭い方が、この目的のアンテナには良いのでZLスペシャル もしくはHB9CVは理想的なアンテナです。 八木アンテナの3エレを振り回す労力の半分以下で同等の追跡が出来ます。 しかも、2エレのアンテナは ブームを真ん中で2段接ぎにできるので携帯性に大変優れます。 つまり移動時の破損が少ない。 さらに、径の太いパイプで作れば丈夫で壊れ難い。 市販の 通信用アンテナは空中にさらすために作られているわけで、藪コギする為に作られたわけではないので。。。 小枝に引っ掛けただけで見事に折れます。
さて、寸法はそれぞれの周波数によって違いますから省きますが、概念は絵のようなものです。
一方、ZLの電波監理官が、電波障害の発信源探知に使用している優れもののアンテナがあります。 2エレの HB9CVで、マッチングセクションを可変コンデンサーにしたものですが、これのエレメントがU字型に加工されたタイプのスチールメジャーで出来ているの です。 これなら引っかかっても、柳に風と、しなりますから引っかかっても折れない。 折れくせが付いて交換の必要があっても、部品は安い。 素晴 らしい。
HB9CVはマッチングセクション無しで作ると指向性がやや落ちます。 気になる方はマッチングセクションが不要で 指向性を出せる下右のようなエレメント構成で作るZLスペシャルがFBです。
加工はHB9CVに比べてややこしいけれど、こういう手もありますね。 自然保護団体のメンバーにハムが一人もいないとは思えないわけで、、、若者よ、これをヒントに工夫しておくれ。 もしくは、
ツキノワグマ研究者藤田さ んのweb
に無線家以外の人たちに向けて書かれた超詳しく判りやすい教科書があります。
切りっ放しでは、肌に触れると切れたりして危ないので、
熱収縮チューブを先端にキャップの様に被せ、
熱収縮させ安全性を高めます。
ZLスペシャルではないけれど
以下3点の図と写真は
ツキノワグマ研究者藤田さんが
私の情報を元に工夫された変形HB9CVの実際 の作例です(図、写真提供藤田さん)。
これを読んで、ちっともピンと来ない電波の初心者で、作ってみたいと思う山で活動してる人はメールください。
スチールメジャーをエレメントとしたZLスペシャルの案。
簡易HB9CV式アンテナの配線はこのように
科学的検証の方法
さて、以上はアンテナの作り方の話ですが。
昨今は、PHS方式、GPS方式、サテライト等など、色々な探知追跡方式が出てきているのですが、それら先端的追尾 方式と、この最も古典的かつ一般的と思われている2mのテレメの併用試験が殆ど行われていないのがJA(日本)の自然科学の世界だそうです。 どうにも縄 張り意識が強いのか(縄張り喧嘩は畜生に任せておればいいのに、研究対象の行動パターンまでに身についてしまうのは、やはり自然を友とする仏教徒日本人だ からなのか?hi)、はたまた、過去の大先輩のデータをゴミ箱行きにするのをはばかる、奥ゆかしい日本人ならではの遠慮が原因か?
ともあれ、電波の理論をまったく無視しながら、電波を道具にして研究なさっている方が多いようですから、きちんと検 証をするべきです。
「テレメは微弱電波だから反射しない」と言う、昨日4アマ取ったばかりの小学生でも分かる嘘を信じている人までいるようで。
波動は反射し屈折し回折するんだよ。 物理でやったよね? 今の世代は知らんけど。
「古典的テレメーター追跡では、この電波の受信状態なら、この地点にいると推定していたけど実際には、それはマルチ パスの合成波で、GPS測定では実際はここでした。 だから、今後、このような地形での探査の場合は、確認の為に云々」 と言うような検証と研究が進めら れていかなければ、いつまでたっても進歩が無い。
旧石器考古学の世界で、大先生を批判できないまま放置して、ゴミデータと嘘遺跡の山を作った人たちもいましたが、ど うも、世界と競争していない分野の学問の人たちは、どうも検証と批判と再評価と言うものが下手ですねぇ。
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