このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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極彩色でユニバーサルな桜島線
■桜島線のイメージ
桜島線といえば、大阪環状線から分岐する 4km余の短い支線であり、工場地帯の殺風景な眺めの中を往く路線という感覚がある。その由緒をたどればただの支線どころではなく、大阪環状線西九条以南より開業の早い、本線格の路線だったといえる。今日でもスーパーレールカーゴの起終点は安治川口であって、佐川急便の宅配便を背負う拠点となっている。
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スーパーレールカーゴ(安治川口にて平成20(2008)年撮影)
駅の数も少なく、西九条・安治川口・桜島しかない。筆者は終点桜島で降り、渡船まで歩いて天保山に渡ったこともあるが、殺風景で味気ない、くすんだ灰色じみた景色に失望を覚えた記憶がある。
……もっとも、こんな感覚はほとんど共有されえないであろう。ユニバーサルシティ駅が繁華と殷賑をきわめている現在においては。
■別世界への玄関口
ユニバーサルシティ駅の開業は平成13(2001)年。 Universal Stadios Japan(USJ)の玄関口にあたる歴史の新しい駅である。ついでにいえば、USJの開設にあわせ、線形を振ったうえで、桜島駅を移設しているという経緯もある。
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ユニバーサルシティ駅(左:駅舎全景 右:駅前からUSJを望む)
以下全ての写真が平成21(2009)年撮影
桜島線のなかで、ここだけは別世界という趣がある。歓喜と悦楽の街、USJ。多くの観光客がUSJに魅力を見出し、浮き世を離れるよろこびを求め、集まってくる。
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左:大阪環状線からの8両編成直通電車 右:線内折返しの6両編成ラッピング電車(ユニバーサルシティにて)
それゆえか、桜島線を走る列車は、目が痛くなるほどの彩りに包まれている。極彩色をまとった桜島線は、もはや元の桜島線にあらず、という風情である。
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左・右:スパイダーマンのラッピング電車(ユニバーサルシティにて)
ここまで強烈に塗られると、けばけばしいというより毒々しいと呼ぶべきかもしれない。もっとも、毒がなければ効能もないというのも道理であり、毒性を感じさせるほどの色彩があればこそ、人々によろこびを与える存在になりうるのだろう。
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左:サセミストリートのラッピング電車 右:USJのラッピング電車(ユニバーサルシティにて)
特にこどもは派手な原色が大好きだ。真っ赤なエルモや真っ青なクッキーモンスターにこどもらが魅き寄せられるのは、当然すぎるほど当然である。色が派手でフワフワとくれば、魅力を感じないはずがないのだ。もっとも、彼らはセサミストリートの住人であって、ユニバーサルスタジオとはほとんど無縁のはずなのだが、そのへんの無節操さもUSJの魅力のひとつであろう。
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左:エルモと娘 右:クッキーモンスターと娘(USJにて)
USJは良くも悪くも“ネバーランド”といえよう。歓喜と悦楽に全身どっぷり浸かることができる、現実世界の苦しみやしがらみから離れた、いわば空に架かるヴァーチャルな別世界である。桜島線は、その別世界への玄関口へとなった。
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空を翔ぶピーターパンとウエンディー(USJにて)
■桜島線のサービス
桜島線のダイヤは日中およそ10分毎の運行で、 6両編成の線内折返し列車と 8両編成の大阪環状線直通列車が交互にやってくる。線内折返し列車はラッピング電車、大阪環状線直通列車はオレンジ色の103・201系が、それぞれ充てられるのが基本である。運行頻度はやや少なく思われるものの、郊外型の路線と割り切れば相応のサービスは確保されている。
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大阪環状線からの直通列車(ユニバーサルシティにて)
大阪環状線直通列車は、大阪−西九条間ではむしろ空いている。西九条から乗り換えてくる(=南側からやってくる)観光客の方が多いように見受けられる。その西九条では、桜島方面への列車は中線に停車し、両側の扉を開き、乗換の便利を図っている。
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西九条に停車中の桜島線列車
西九条では両方向の列車と接続をとる場合が多い。このような乗換形態は関西私鉄では決して珍しくないものの、JRでは類例が乏しいものである。階段移動のない乗換は便利で、まさしくユニバーサルなデザインといえようか。極彩色の衣の下に隠れた、桜島線のすぐれた特質である。
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