左は第70回選抜高等学校野球大会(1998)、右は第80回全国高等学校野球選手権大会 (1998)における野球留学者の出身都道府県です。
ひと目見てわかるように、大阪がどちらとも圧倒的に多いのです。
それに特徴的なことは、大都市圏の出身者が多いことも挙げられるでしょう。 つまり、「都市から地方へ」と人がながれているのです。 少しでも甲子園へ確実に行ける確率を求め、地方の甲子園常連校へと進学するのです。
それでは、なぜ大阪がダントツに多いのか?
それは、夏の選手権大会の出場校数が1校というのが大きな原因だと思います。
ご存知の通り、東京からは西東京・東東京と2校が出場できます。 東京と大阪の野球部部員数を比べると、東京は約9200人(2で割れば約4600人)、 大阪は約7000人であり、大阪の方がいかに甲子園へ行くことが難しいかわかるでしょう。 しかも大阪には、PL学園をはじめ、上宮、北陽などなど、実に多くの実力校・伝統校が ひしめいているわけです。そんな現状では、甲子園に出ることを考えたら、大阪を出るのが 得策だとはだれもが思うでしょう。 3.「野球留学」の効用
とかく、悪いものと思われがちな「野球留学」。
しかし、思わぬ効用もあるのではないかと思います。
僕のよく知っている東北地方を例にとって説明してみましょう。
東北地方の高校野球のレベルは、まだまだ全国レベルに追いついてないと個人的に思っています。 抽選会で東北地方の学校が対戦校と決まると、勝ったものと喜ぶという話を聞いたことがあります。 では何が足りないのか?いろいろ言いたいことがありますが、まずは意識改革だと思います。 甲子園に出ることが最大で唯一の目標であり、甲子園で勝つというのはあまり意識されては ないのではないでしょうか(一部の学校を除く)? その点、東北以外の地方から来る生徒の意識は高いものと思います。
昨年、青森山田高校がベスト8に入りましたが、ベンチ入り選手の中に大阪出身者が8人、 東京出身者が3人いて、野球そのものの力以外に、精神的な面で大きな役割を担ったのではないか と勝手に想像しています。
それに加え、このような全国で実績を残すチームが自分の県から出れば、それに追いつけ追い越せ で、その県全体のレベルが上がっていくのではないかと思います。 4.「野球留学」の決断
今まで述べた肯定的な意見は、ある前提にたったものです。
それは、「野球留学」をするという決断を本人が行ったものであるというもの。
実はこの「野球留学」には、おとな(特に監督、コーチ)がからむ場合がかなり多い。
高校の監督と、リトルリーグ・ボーイズリーグの監督が裏で話し合って、生徒の意思によらず 勝手に進路が決まってしまう事例もあるようです。
そのようなことはもちろんあってはいけません。
あくまで、本人が「自分は他のところで力を試したいんだ」という意識を持ち、 親も了承した場合のみにおいて、僕は「野球留学」を肯定的にとります。
5.おわりに
なぜ、ここまで「野球留学」が流行するかというと、甲子園の存在が大き過ぎるからだと 思います。高校野球というのは、文字通り高校生がする野球なのですが、その文字以上に 大きな存在となっているような気がします。我々は数十年という高校野球の歴史を前にして、 それを否定することはできないでしょう。日本という国の土壌、国民の意識の中で育まれてきた わけですから。
僕自身、以前は正直言って「野球留学」をいいものだとは思っていませんでした。 やはり抵抗感がありました。しかし、インターネットでいろいろな人たちの意見を見て、そして 考え、決して悪いものではないのではないかと考えるようになりました。この問題に関して、 正しい答えはないと思います。それこそ10人いれば10通りの考え方があるのではないでしょうか。 そのひとつの考えをここに述べたつもりです。
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