このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

東北合宿

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東北合宿

5年E組 今野 俊賢

7月24日、12時、角館にて。

 暑い。東京と同じくらいの暑さが身に染みてくる。だが、多くの木々があるため、陰で涼しさが楽しめて、とても清々しい。角館駅付近では少しくばかり閑散としてはいるが、それを逆手に取れば静かで穏やかであるといえる。駅から20分ほど歩いていくと武家屋敷が立ち並んでいて、駅周辺とは違った静けさを感じさせてくれる。それだけでなく、長い時を経て様々な味わいを持っている武家屋敷、木々の葉が揺れている様子なども独特の味わいを醸し出している。結構、風景自体の色は単調であるはずなのだが、時間の経過や風などによって多様に変化していく所がとても鮮やかで美しい。武家屋敷は外観からして古いと感じさせてくれる。中に入ると屋敷を支える柱が目に飛び込んできた。年季が入っているし、木の持つ固有の香りが鼻をくすぐる。そして、屋敷の庭を見てみると、雨に濡れた草木が薄雲の切れ間から出た日の光に照らされて輝いている。縁側に腰掛けて、ただ庭を眺めているだけでも十分に心を満足させられる。庭を見ながら昔の人はなんとも風流人なのだろうかと思ったり、これだけの庭だと手入れが大変だろうなどと考えてしまう。有り触れた庭も少し考えを変えてみるとなんとも飽きのこない映像になるのだなあ、と思わされた。

7月25日、10時、田沢湖にて。

 眼下には青く澄んだ湖が広がっている。昔、酸性度の高い玉川の水を流し込んだため透明度が下がり、魚が生息できない環境になったと聞くが、今見た限りではそのようには感じられない。美しい。その一言に尽きる。田沢湖には「たつこ伝説」などの話がある。こういった伝説もこの神秘的な湖にはとてもマッチしていると思った。まあ、「百聞は一見にしかず!この湖を」直接見てみなければ分からないでしょう

 同日、13時、秋田・久保田城にて。

 市街地は異常な暑さ。30度くらいはあるだろうか。とにかく暑い。太陽がこんなにも憎らしく感じることもないだろう。対して、久保田城周辺は木々が溢れ、青々としている。木陰に身を隠すと何とも涼しい。木漏れ日が差し込んでくる。清々しい気分になる。

 久保田城は戦国末期まで常陸、今の茨城に領土を持っていたが、関ヶ原の戦いで西軍に加担したために領土を55万石から21万石に減封、国替させられた大名佐竹氏の居城である。城は跡形もなくなってはいたが、十分な広さがあることがよくわかった。

 7月26日、正午ごろ、盛岡にて。

 朝方、盛岡での観光にはどれだけ名所旧跡をまわれるのか、という不安があった。だが、なにも問題にするようなことではなかった。石川啄木の家や、石割桜などを見ることができたためである。それらの観光名所は市街地の中にあり、見つけるのは多少難しいかもしれない。

 同日、14時、渋民にて。

 渋民駅はなんともローカルだ。ワンマン列車、無人駅、牧歌的な風景。気分が晴れやかになってくる。落ち着いてくる。映画"少年時代”もこんな風景だっただろうか。団塊の世代にとっては郷愁を感じるかもしれない。虫取り網を持った子供たちが走り回っている姿が浮かび上がってくる。優しい風景だ。

 駅から歩いて石川啄木記念館に行く。陽射しが容赦なく照り付けるため、汗が体内から噴き出し頭がクラッとする。それでも目に入り込んでくる田畑の風景が美しく優しく感じられた。時折風も吹き、まさに「地獄に仏」自然はなんてありがたいものだと思う。歩き続けた末、やっと記念館に辿り着いた。そこには啄木が教師として勤めた小学校の旧校舎、住み込みの家などがあった。旧校舎は古くはなっていたが、木独特の薫りが優しい気分にさせてくれ、とても居心地がよかった。口では語り尽くすことはできない世界がそこにあった。

 何事もその場所に行かなければ分からないものがある。ドラマチックかどうかは私には分からないが見る人それぞれの感覚で旅してみてはどうだろうか。