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ピジョン 覆面発表会②「こどもの城水ぜめ」

1998.10.24(土) 於:早稲田どらま館 18:30開場 19:00開演 全席自由(前から四列目最左端で鑑賞)

 

【内容&寸評】全てがアドリブ。筋書きはないのだ!
 入場時、客は舞台での即興(エチュード)のお題を紙に記入。残念ながら劇場到着が開演ぎりぎりだったため、わたしは書けなかった。

 入場すると、舞台ではスクリーンに昔なつかし「世界一周双六ゲーム」のビデオを上映中。(世界の50都市を双六の目にしたて、クイズに正解するとさいころの目に従って回答者はコマを進めることができる。時間内に50番目の都市に到着すると確か海外旅行に行けるんじゃなかったかなあ。で、最後までたどり着けなくても、回答者四人の中で一番先まで進むと景品がもらえる。……という趣向のクイズ番組だった。途中、一気に何都市もジャンプできるマニラだとか、ボーナスポイントがいくつか設置されている。一方、そこに止まると一気に出発地点の東京まで戻されてしまう、という地獄ポイントも。司会のおっちゃんの容赦ないつっこみと、双六ゲームの単純な面白さが幼い私を夢中にしたものだった。昔のクイズ番組は面白かったよなあ……クイズハイ&ローとか。
 閑話休題。
 どうやら夏休みスペシャルらしく、回答者は子供。その中に、幼い日々の今林の姿が!波瀾万丈、荒れ放題のゲーム展開を堪能。

 ビデオ終了後、今林が登場、キャスト&趣旨紹介。「今、この瞬間で、この言葉で。」がテーマの今回、筋書きは一切無し。全てアドリブ(エチュード)で進行する。
 ただし、完全なアドリブだけでは面白くないので、ルールを設定し、ゲーム形式で進行。エチュードのお題は、入場時にお客さんが書いた紙を入れた箱のなかからピックアップする。


最初は、ルール設定なしの、普通のエチュード。お題の言葉を必ず入れて、3分以内にエチュードを完成させなければならない。

拙者ムニエルチーム(加藤・千代田・村上)のお題は「ホタテ」

 海辺で潮干狩りをしている村上の所へ千代田登場。「ここは海の幸の産地なんだ。」(千代田)「何が採れるんですか?」(村上)イカ、とかタコ、とかじらしまくる千代田。そこへ加藤登場。大ボケをかましまくったあげく、舞台から逃走。「逃げんじゃねえよ!」ふんづかまえる二人に向かって「俺はホタテが食いたいんだよ!」
 雪崩状態のまとまりない流れだったが、これで何とかカッコがついて完成。

カムカムミニキーナチーム(松村・今村・聖・藤田)のお題は「子持ち」

 人気俳優(今村)の楽屋。演技に注文を付ける映画監督(松村)。そこへ、臨時のTV(聖)ニュースが。今村に子持ち疑惑浮上。突撃インタビュアー(聖)が楽屋口に迫る。どうする!こんなスキャンダルが持ち上がっては映画がめちゃくちゃになってしまう!慌てふためく一同。ついに、楽屋へ入り込んでくるインタビュアー。とりあえず、ごまかしで付き人(藤田)を女優に仕立て、子持ち男の演技指導中、でお茶を濁す一同。(記憶があやふやになってしまってます、すみません)

双数姉妹チーム(今林・明星・三咲)のお題は「おま。」

 帰宅してくるサラリーマン(今林)を妻(明星)が迎える。食事を出してくれ、という夫に「これから作るから、ちょっと待ってて」と妻。キレる夫。「お前、今何時だと思ってんだ。もう深夜だぞ。オールナイトニッポン始まっちゃうんだぞ。」などと、あれこれ伏線作りに苦労する今林と明星。そこへ、いきなり三咲乱入。「おま。」乳幼児役で、一気にお題放出。場の空気も何も読んでない三咲にペースを乱される二人。仕方なく「パ、パパがおンましてやろうな。」と今林フォロー。しかし、やはり空気を読まない超マイペース三咲に舞台は荒らされ放題。そのまま体勢を立て直すことができず、時間切れ。

 

やはりなんの手も加えないエチュードはとりとめなさ過ぎることが分かりましたね、ということで、
二番目は「NGワードエチュード」。二チームに分かれて、互いに相手のNGワードを決める。決められた言葉をエチュード中に言ってしまうと、負け。ただし、相手のNGワードを誘導するなどの小細工は可。戦うのは明星+加藤チーム VS 松村+三咲チーム。それぞれ一人ずつが対戦。

一回戦明星×松村。NGワードは明星が「ちょっと」、松村は「」。

穴のような物を掘っている明星。松村登場して、「あと、どれぐらいかかるの?」「そんなにかからない。」懸命に時間で引っかけようとするが、引っかからない明星は「ところでさあ、手伝いに来るはずだったでしょ?三人。」と逆襲に出る。「あとの三人はどこなのよ。いつ来るのよ。ねえ。」と言い募る明星につい松村「三人って、なんだよ。」

二回戦三咲×加藤。NGワードは美咲が「何が」、加藤は「いけてる」。

夫婦の設定で開始する三咲。夫の帰宅に合わせてごちそうを用意したし、服も新しいのを買ったし。なのに全然気づいてくれない夫に不満の三咲。「どう、今日の私、いけてる?いけてない?」むっちゃストレートに誘い水を向けるが、どうボケるかだけに夢中な加藤は引っかからない。全く呼吸が合わないままに、双方NGワードを言わないままタイムアップ。引っかけられるにも引っかけるにも呼吸を合わせるのが必要なことがよく分かった。

三番目は「ことわざエチュード」。二人組のエチュードで、片方は相方に、決められたことわざをエチュードの中で必ず言わせなければならない。ただし、相方はそのことわざがなんなのかは知らない。村上×今林で、ことわざは「策士策に溺れる」。
戦国物から将棋対局など、さまざまなシチュエーションでことわざを引き出そうとする村上。ニュアンスは十分にわかるも、今林あと一歩で正解にたどり着けない。更にシチュエーションを考える村上。(この人、発想の瞬発力があって面白い。)もてない男(今林)に友人(村上)が恋のアドバイス。手紙に彼女が好きな花の花束を用意して、彼女がいつも通る道の角で待ち伏せて……。仕込みはばっちり!だが実行当日!告白する男に向かって、彼女(村上)はこんな花大嫌い!こんな手紙も気持ち悪い!クソミソに言って立ち去る。一人残された今林、ぽつりと
「ミイラ取りがミイラになっちまった〜」
惜しい!惜しいけど違うんだ!もうこれ以上シチュエーションを考えられない、どうしよう。悩む村上、「意味は分かるんだ、意味は!最初の音だけでも教えてよ」すりよる今林。ついに村上が考えついたのは。
「あっ、ポテトチップスだ。……サクッ。サクッッ。」
「さ、策士策に溺れる〜!!!」

四番目は、役を与えてのエチュード。自分の額とヘアバンドの間に役名を書いた厚紙をつけてエチュード。自分が一体なんの役を与えられているのか展開の中から想像、最後に当てられるかどうか。

役割:村上・バツ二、今林・ゴンドラ、三咲・不運、千代田・友達、加藤・AV、藤田・リーチ、今村・連ドラ。場面設定は「一次会が終わって庄屋から出てきたところ」。
みんなからもみくちゃにされる千代田、常にエチュードのリーダーシップをとりながらも「お前は隅っこに行ってろ!何しきってんだよ」と隅に追いやられる今林。何を言っても「やっぱ言葉に重みがあるよな〜」とか感心されてしまう村上。リアクションを受ける役者の戸惑った顔がおかしい。藤田、今村はうまくからめなくて、印象薄し。

終了後、自分の役名をきちんと当てられた人はいなかった。からくも、今林が「ドラが一緒だよ」ともらしてしまったために勘づいた今村のみ。 

五番目は、「こんなの、誰だってできる。俺らがお前達を凌駕してやる!」と挑戦状を送りつけてきたコンビ、GUN×DAMのエチュード。お題は「微笑」。ステージ四隅に今林、松村、村上、今村があぐらを組んで値踏みのまなざしを投げかける。ピッチャーと野球監督。なんかよくわかんない展開。秘密のサインが微笑だとか。めためた状態で終了、ブラックアウト。アムロのテーマがもの哀しく流れる中、今林らがぼそぼそコメント。……きつかった……

六番目は「誰がその役なのか分からないエチュード。設定は、地震のために3F、2Fの間で止まってしまったエレベーターの中。閉じこめられた乗客の中に、無差別殺人鬼が一人混じっている。ウィンクしただけで人を殺せるという殺人鬼を、最後の一人になるまでに見破ることができるか?あるいは、殺人鬼は完全犯罪を完成できるのか?

エチュード開始前に、役者全員を後ろ向かせ、松村が殺人鬼役に指名する人間の背中にタッチ。殺人鬼にウィンクされた役者は、すぐに死ぬと犯人が分かってしまうので、しばらくたってから死ななければならない。指名されたのは千代田。他、エチュード参加者は松村を除く全員。

今回、一番作品として楽しめたエチュード。犯人を捜す役者達の推理、緊張感。殺人鬼にウィンクされたときの驚きの表情。見破れなかったくやしさ。犠牲者を、一体いつ死ぬんだろう、と思いながら観察するどきどきはらはら。

アドリブでからむのが苦手らしい今村が犯人だと思いこまれたのも手伝って、無事千代田は完全犯罪を成立させた。お見事!

七番目は、「演出つきエチュード」。村上がマイク片手に、エチュードする役者につっこみを入れる。三咲・加藤・千代田・今村で。お題は「愛人」。タイミング良い村上のつっこみ、冴える冴える。エチュードよりもこっちの方が面白いぐらい。互いに自分のペースしか考えてない、まとまりの欠けたエチュード(それなりに面白くはあるけど)を、スムーズな流れに演出、しようと奮闘。でも、みんな勝手だから結局まとまりに欠けたまま終了。

八番目は、「音楽の力を借りたエチュード」お題は「チャッカマン」。三咲・松村・聖・藤田のチームで。貧しい母子家庭の食卓。「お腹空いたよう、母ちゃん。」「我慢おし。ああ、父さんがいてくれたらねえ……」つぶやく母役・藤田。父親ははるかな昔に事故にあって遭難、行方不明になってしまっているらしい。チャッカマンでガスコンロに火をつけ、煮炊きを始めようとする母。(エチュード冒頭でお題が出ちゃうと、ちょっと興ざめする。あとの展開が面白かったからもったけど。個人的には、引っ張りまくったあげくに出てくる方が好き。)そこに登場する、巨大な熊の化け物。子供を守ろうと銃を取って立ち上がる母!その時!「母さん……」熊が喋った!「母さん……僕だよ。……」なんと、化け熊は、家出中の長男だったのだ。感動的な盛り上がりのままに、終了。なかなかまとまりよかった作品。どんな音楽が使われたかは、忘れてしまいました。ごめんなさい。

九番目は、「衣裳の力を借りたエチュード」。お題は「カニ鍋」。衣裳は、全員黒いフォーマル+サングラスで。明星・加藤・村上・今林で。のったり、シュールな会話劇風展開。いまいちまとまりに欠け、ぴりっとせず終了。

最後は、観客から挙げられた「今日一番面白かった役者」三人でフリーエチュード
選ばれたのは
加藤、今林、松村。お題は「武士」。
 今林、松村は武士二人。町なか出会って抜刀するも意気投合、二人連れだって茶屋へ。小姓の加藤はなんか分際こころえず、ばっさばっさ切りまくられては全然死なない。とっぽい演技◎。茶屋へ入って飯盛り女を呼ぶ二人。飯盛り女加藤登場。つぎつがれのうち、おきまりの「良いではないか、良いではないか。」背後に回って加藤の胸をもみしだく松村、今泉。「あっ何をされるのです」とか動揺の振りをしつつ、ちゃっかり目の前の猪口から酒を飲む加藤。「飲むなー!」ばっさばっさ切られる飯盛り女。でも死なない。ナイスボケ大爆発。

本編終了、役者挨拶のあと、青山円形劇場でのピジョン本公演のダイジェスト予告編上演。のあと、再びGUN×DAMによるさぶい新作コント。

感想。お芝居、というより完全ライブ。筋書きに頼ることができないだけに、ルールの面白さ、役者の瞬発力に負うところの多い企画。私は楽しめた。が、瞬発力のある人と、そうでない人の差が歴然。役者の顔ぶれをもう少し精選してみたらどうかなあ、と思うこと時々。やっぱり、瞬発力に欠ける、他人と絡むのが苦手な人は、見ててもきつい。村上、今林のつっこみ、加藤のボケは縦横無尽、どんなシチュエーションにもマッチして◎。つきぬけてスゴイものを得た訳ではなかったが、十二分に楽しませてもらったステージ。

【DATA】

 企画構成/今林久弥
 出演/今林久弥(双数姉妹) 加藤啓(拙者ムニエル) 千代田信一(拙者ムニエル) 松村武(カムカムミニキーナ) 三咲ひとみ 明星真由美(双数姉妹) 村上大樹(拙者ムニエル) 今村佳岳(カムカムミニキーナ) 聖ノム(カムカムミニキーナ) 藤田記子(カムカムミニキーナ) 五味祐司(GUN×DAM) 元尾裕介(GUN×DAM)

早稲田どらま館にて 1998.10.24(土・19:00開演)・25(日14:00・19:00開演)開催(全日程終了)

 

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