| このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
南海電鉄和歌山港支線・和歌山港〜水軒(2002年5月26日廃止)| 存 続 区 間 | 和歌山市 |
| ↓ | |
| 久保町 | |
| ↓ | |
| 築地橋 | |
| ↓ | |
| 築港町 | |
| ↓ | |
| 和歌山港 | |
| 廃止 区間 | ↓ |
| 水軒 |
【和歌山港支線の概要】
南海各駅に掲示されていた運賃表にも、「水軒行きは1日2列車です。係員におたずねください」という 奇妙な表記があった。朝夕の通勤通学時間帯に列車の運行が無いのだから、和歌山港〜水軒間の利用客は 極めて少なく、南海電鉄の資料によると廃止直前(2000年度実績)の1日平均利用者数は9人しかなかった という。休日の午後便(=水軒行き最終)利用者のほとんどは鉄道ファンという状態だったらしい。した がって、係員に水軒行き列車に接続する列車の時刻を問い合わせるような客も皆無だったに違いない。過 疎地のローカル線でも、ここまでひどくはない。和歌山港〜水軒間は、いつ廃止されてもおかしくなかっ たのに、21世紀まで持ちこたえてしまった不思議な鉄道路線なのである。
この区間の廃止要望を持ちかけたのは、電車を運行する南海でも線路を所有する和歌山県でもなく、何と 地元住民からであった。この和歌山港〜水軒間にある唯一の踏切「和歌山港1号踏切」の幅員が狭く、付 近に和歌山中央卸売市場や木材工場などがあるため、元々大型車両の通行が多いうえに、交通量の増大に よって朝夕に渋滞が発生する元凶となっているなど、安全面での問題が指摘されていた。そこで、南海電 鉄と和歌山県・和歌山市との協議結果、

和歌山港駅はフェリー乗り換えのためにあるような駅だ。なぜか、高架駅であるのも興味深い。駅名板に は年期が感じさせられるが、駅周辺は臨海地帯独特の非常に殺風景なところである。(【画像】左:和歌 山港駅駅舎、中:駅名板、右:和歌山港駅ホーム水軒方を望む)和歌山港駅は島式のホームが1つある。 画像右(北)側のホームは難波からの直通列車などが発着する。このホームの線路がこの駅のはずれで行 き止りになっているため、水軒行きは画像左(南)側のホームからしか発着できない。日中は和歌山市〜 和歌山港間の各駅停車が発着しているようだった。水軒行き列車は和歌山港駅を出ると左(南)に曲がっ て地上に下りる。



そんな、いわくつきの踏切を越えてしばらく行くと赤い橋が見えてくる。その手前で単線だった線路が3 本になりホームが突如現れる。これが水軒駅なのだ。周りに何も無い。その姿にしばしあ然とした。ホー ムは1本しかないのにレールが3本もあるのは、この駅が周辺の貯木場や和歌山南港からの木材をこの駅 から輸送するという、この鉄道本来の目的を果たすためであったのだが、開業前にトラックにその役割が 移行してしまったので、遊休地となってしまったのだ。1日に2本しか電車が来ない駅だけに、駅員はお ろか、駅舎すらない。車止めに向かって歩くと階段があって、そこから外へ出られるのだが、外から水軒 駅への案内看板などは無かった。私が訪れた時は廃止1週間前だったので、2両編成の電車は大混雑で、 水軒駅に到着するやいなや、6分間という極めて限られた時間内で廃止を惜しむ即席撮影会が行われた。
ホームから下りる階段の脇に汚い小屋みたいなものがあった。これに時刻表や運賃表が掲示されていた。こ の小屋、いったい何なのか。駅舎にしては小さすぎるし、清掃器具庫としても無人駅だから掃除する人は 基本的にいない。倉庫といっても1日2本しか電車が来ない駅に備蓄せねばならない備品があるのだろう か。これは後日、某サイトの情報でわかったのだが、実はこの小屋はトイレだったという。管理が行き届 いていないため、内部は荒れ放題だったという。
鉄道敷設時に計画されていた当初、予定されていた貨物輸送は実際には行われなかった。しかし、この区 間における上下分離方式のおかげで、改善策や利用者振興策が講じられることもなく、南海和歌山港支線 ・和歌山港〜水軒間は和歌山の空気と物好きな一部の鉄道ファンを30年も輸送し続けた。1日2往復の電 車を運行させるだけの南海側にとっては大したことはなかっただろうが、線路の持ち主・和歌山県の支出 は相当なものだったはずだ。また、鉄道の敷設費用のほか、電車運行による赤字補填も和歌山県民の税金 と無縁ではないはずだ。予定されていた貨物輸送が無くなった段階で和歌山県は見直すべきだったし、和 歌山県民からも見直しの声があってもよかったはずだ。しかし、「待った」の声はどこからもかからなか った。結局、この区間は行政が暴走した末の犠牲に遭ったようなものだ。和歌山県民が納めた血税は、有 益に利用されること無くドブに捨て続けていたのである。
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