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七色とうがらし通信 vol.20 11.4.13 発行 吉川 厚 <シリーズわたしはたびびと> もう春かなと思って、春分の日に、瀬戸内海の小島、岡山県にある真鍋島にいってきました。 瀬戸の雨 暑さ寒さも彼岸までというのに、とても寒い。真鍋島は、温暖な気候で、花づくりが盛んな(正確には盛んだった)ところですが、寒気団には勝てません。笠岡から乗り込んだ普通船の窓には、雨が幾筋となく走っていました。どんよりした中、およそ70分、真鍋島に着くと、乗客は蜘蛛の子を散らすようにどこかへ吸い込まれてしまいました。港にはわたし一人。めざす真鍋三虎ユースホステル(以下YH)は、島の反対側、山をこえたところにあります。幅1メートルに満たない道を心細く登っていくと、YHがみえました。そして、帰ってきたなと思いました。ここへ来るのは2度目です。 潮騒 受付を済ませて、裏の浜に出ます。潮騒が耳に心地よく、ああ、この音を聞くために来たんだな、とつぶやいていました。天気がよければ、青い海に島影がきれいなのですが、今日は霞んでいます。食堂は海に面して建てられていて、食事をしていても、耳をすませば、波の音。車の音など忘れてしまったかのようです。ペアレントさんがいっしょにご飯を食べてくれました。自称「おじさん」なので、おじさんと呼ばせていただきますが、70をこえた「おじいさん」で、この2月には胃の手術で入院されたそうです。ゆっくりゆっくり、ご飯を食べて、ゆっくりゆっくりお話されます。仙人のようなおじさんですので、一度、会いに来てください。9時半になると、おばさんからドクターストップがかかりました。 島探険 翌日も雨です。泊まり合わせた人たちは、1泊で島を後にしてしまいました。午前中は、食堂で潮騒を聞きつつ、本を読んでいました。昼過ぎ、ビールとカップめんを買いに港までいくと、こころなしか明るくなってきました。いいかげん、たいくつしていたわたしは、お昼をすますと、島探険です。前回は、山の中で道がなくなるという体験をしたので、今回はルートをかえて挑みました。YHから、島の南側の山道を進んでいくと、「山の神」という、祠が祀られている山頂にたどりつきました。ここから、港を見下ろせます。さらに進んで、「まるどうさん」をめざしましたが、山の中の1軒家で犬にほえられ、以前にもここを通って行き止まりになったことを思い出して、断念しました。 島探険2 3日めも、天からぱらぱらおちてきます。今日もぼーっとしているか、と思ったのですが、Fさんが島を回るといいます。女の子1人でいかせるのもということになり、4人で出かけることにしました。昨日と同様、山の神を通って、犬の家まで来ました。でも、今日は前進です。去年のうちに草刈りをしてあるはず、ゆうべ、奥さんがいっていました。ここらあたりは、農業試験場跡だそうで、真鍋島には、熱帯植物園跡とか、とにかく跡には不自由しません。 まるどうさんというのは、太い石の灯籠のようなもので、けっこう、古いものだと教育委員会のコメントがありました。そのすぐ先には、全国のまなべさんが組織した「まなべ会」の石碑が建っています。この島が発祥の地らしいので、まなべさんは、訪問されることをおすすめします。 まるどうさんを後にして、山道を下っていくと、海に出ました。難破船が放置されていて、記念写真を1枚。夏に来れば、プライベートビーチです。さあ、どうやって帰ろうかということになり、行きとは別の道を探しました。おそるおそる登っていくと、遠くで犬がほえています。さっきの犬です。庭を横切ると、中から人が。おこられるかと思ったのですが、お茶に誘ってくれました。こんど中学生になるという少年とおかあさんで、自然農法をしているそうです。おかあさんは、関西出身の三虎YHの元ホステラーで、この島でご主人と出会い、結婚したとのこと。たくさんごちそうになり、あっというまに2時間近く、長居をしてしまいました。外に出ると、雨の中、深紅の花をつけた木がありました。少年にきくと、アーモンドの木だといいます。ほんとかなと思いましたが、今日はすなおに信じてみることにしました。 潮騒で宴会 今日、島を離れるMさんを港に見送ってから、島で唯一のお店により、地元メーカーのカップめんと、地酒の2合瓶を3本、買い求めました。YHに戻って、海に面したテラスでキャンプ用のコンロを使ってお湯を沸かし、フリーズドライのカップめんを食べました。フリーズドライのめんは、ふつうのとちがう、みんな、口をそろえましたが、だれもおいしいとはいいませんでした。 雨が激しくなってきたので、かさをさし、熱燗に挑戦しました。2合瓶は3人で分けると、いくらもありません。雨にぬれつつ、熱燗をすする3人。潮騒を肴に、なんだかいい気分で、だれも中に入ろうとはいいません。 酒がなくなり、買いにいくにあたって、さすがに撤収することになりました。港まで山をこえていくと、酒屋には、2合瓶がもうなく、飲みきれるか心配だったのですが、1升瓶をかかえて戻ってきました。 おこたでぬくぬくやり始めたのですが、夕飯を待つことなく、1升瓶は空になりました。日頃、たまっていたものも、空になりました。冷たい雨の中、夜の浜に出ると、やっぱり、潮騒だけが聞こえます。 翌日は快晴。青い海をみました。 また、来よう。また、会おう。船に乗り込むと、真鍋島は、遠く霞んでいきました。 ←Index |
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