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七色とうがらし通信           vol.22 11.6.23                       発行 吉川 厚    
<シリーズわたしはたびびと>
                         
GW、まだ、寒いかなと思いつつ、北海道にいってきました。

かたくりの花
 今回の旅の目的は、かたくりの花をみるためでした。雪解けを待って咲くといいます。ニセコよりもさらに西、島牧(しままき)にむかいました。小樽から寿都(すっつ)までバスで2時間40分、乗り換えてさらに40分。島牧は、北海道の中でも、てつかずの自然が残っているところというのもうなずけます。島牧ユースホステルは、海岸沿いにある、おしゃれな建物でした。あの奥尻の津波で昔の建物はそっくり流されてしまったといいます。食事は、うどやふきのとう、アイヌネギなどの山菜や、さくらますなど、地のものが上品に料理されていて、たいへんおいしゅうございました。
 翌日、木巻灯台を目印に山の方に入ってゆくと、ありました。生まれてはじめてのかたくりです。斜面に顔を下にむけ、かれんなむらさきの花を咲かせていました。にりんそうや、なんとかいちげも咲いています(なまえ忘れました)。とても、晴れて気持ちのいい日、高台にでると、光る海がみえます。かたくりを写していたわたしが遅れて下りてゆくと、みんなが海辺の道道(北海道の県道のこと)でポーズをとってくれました。 ぱちり。

二股ラジウム温泉
 島牧に2泊して、ニセコにいく途中、Iさんの車で、二股ラジウム温泉によりました。キューリー夫人が発見したというあのラジウムです(温泉を発見したわけではありません。念のため)。
 温泉は、崩れかかったドームの中にありました。効能書きを読むと、「2、3日たつと、だるさを感じる」とのこと。「でも、ひるんではいけません」と続きます。温泉は混浴の他、女性専用露天風呂もありますが、見晴らしがとてもよく、どっからでものぞけますのでご注意ください。

ニセコの雨
 ニセコにむかったのは、「かたくりの大群落がある」という情報を得たからです。でも、雨…。
かたくりは、陽がささないと、こうべを深く垂れ、花を閉じてしまいます。
 かわりにやったのがラフティング。ゴムボートに10人くらいが乗り込み、激流を下ります。ドライスーツに着替えるのですが、体に密着して、頭がつかえてでてきません。ヘルメットをかぶり、手袋をはめ、バスに乗り込みました。
 春は雪解けの水が多く、しかもここ何日かの悪天候で、川は茶色い激流になっています。ニュージーランド人のインストラクターの声に合わせて、前、後ろ、漕ぐのやめ、など基本動作を確認し、いざ、川の中へ。もっとすごいかと思ったら、意外に快適な乗り心地です。
 すると、インストラクターが
「きっかわさん、落ちてください」
「えっ?」
「救助の練習をしますから、さっさと落ちてください」
 笑顔でインストラクターはいいますが、目は笑っていません。覚悟を決めて、ざぶん。ひっしにボートにしがみつくと、みんなでひっぱり上げてくれました。

西から東へ
 かたくりに未練を残しつつも、ニセコを後にし、道東をめざします。ニセコの宿に泊まり合わせたおばさまと札幌へ。わたしが、旅先の焼きたてパン屋めぐりが趣味だというと、屋久島にいったことがあるかと聞かれました。屋久島には、ペイタという、喫茶室から海がみえる、とてもおいしいパン屋さんがあります。なんと、このパン屋さんは、もともと滋賀県の人で、このおばさまのご近所さんだったそうです。話しがはずんで、札幌の中央卸売市場にあるお寿司屋さんに連れていってもらいました。かわいい鮨なのですが、うまい。生臭さがまったくありません。また、1コずつ頼めるので、いろいろ楽しめます。再びここを訪れるぞと固く心に誓いました。
 昼過ぎ、札幌駅から、スーパーおおぞらに乗り込みました。

鶴がいるから鶴居村
 旅の最終地は、釧路湿原の北にある鶴居村、丹頂鶴がいるから、鶴居村です。宿は民宿風来坊。
予約をすると、それに合わせて?、アイヌネギぎょうざパーティを開いてくれました。アイヌネギは北海道ではおなじみの山菜で、本州では、ぎょうじゃにんにくの方がとおりがいいようです。ぎょうざにんにくがなまったのだというような、おやじギャグをいうのはやめましょう。体調15センチくらいのただの草なのですが、にんにくという名にふさわしく、とてもにおいます。ぎょうざに使う分は、前の日に収穫済みとのことでしたが、釧路湿原の宮島岬で探してみました。釧路湿原は、もともと入り江で、半島に相当する高台が今も岬と呼ばれています。岬から下りて斜面を探すと、そこにはエゾジカの角が。鹿は春になると、その角をおしげもなく落とします。アイヌネギもそこそこ収穫して、さあ、ぎょうざ作りです。
 一人暮らしなので、自炊はしますが、ぎょうざはセブンイレブンで買ってくるもの。元スタッフのKちゃんは実に器用にぎょうざを包んでいきます。宿の夫人のMさんの、肉が出ないようにというおことばに、みょうにへりが頑丈なぎょうざができあがりました。北海道が好きで鶴居村に住みついてしまったAちゃんや、日本野鳥の会の人なんかも集って、にぎやかにぎょうざパーティです。フライパンがひとつしかないので、1回焼けても、ひとり1個。最初はがっついていたのですが、8ラウンドくらいになると、みんなみんないい人になり、ゆずりあうようになりました。
 アイヌネギを醤油漬けにして瓶につめ、いよいよ、北を去る日です。飛行機の搭乗待合口で、「これはなんですか」「ネギです」「…こっちはなんですか」「角です」「…どうぞお通りください」という会話を交わして、乗り込みました。
 北の大地が、遠くなってゆきます…。                        

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