七色とうがらし通信 vol.33 2000.4.5 発行 吉川 厚
<シリーズわたしはたびびと>はおやすみ
イラクサあらため、うにうに君(旅の友)からメールをもらい、LIVEに出かけました。
>4/4 吉岡龍見(尺八), 佐々木壮明(津軽三味線), 平松加奈(バイオリン)
> 中村ヨシミツ(ギター)
>尺八と三味線とギターとバイオリンという異色のセッション。
>みんな腕の確かな割とキャリアの長いプロだから間違いはない。
>どちらかというとメロディは邦楽系。津軽三味線のイメージが強いと感じるかも。
新宿3丁目
2丁目ではないよ。末広亭の近く、その店の名は石の花。俳優の桑野幸三郎さんがやっているお店です。居酒屋といっていいのか、ショットバーなのか、やっぱり居酒屋の方が近いかな?3000円のチャージでドリンク1杯もらえます。うにうに君自ら、ぼくの生ビールをついでくれました。いい泡。どこで修行したの?
今週は桜祭りだそうで、毎日、日替わりのLive。さくらさくらがいろどります。せまい(すみません)店がさくらの巣のように、さくらの枝は、がらすのとっくりに足をつけて、今日咲き、明日には散り始めます。風のない中、さくらはどうやって最後を舞うのでしょう…。気のはやいさくらは、女性の赤いセーターの肩に背中に。うにうに君がそれを取ってあげています。
店の中には空気があります。酸素、窒素、二酸化炭素という意味のそれではなく、ときめく心というようなものが充満しています。同じ期待を共有している者たち。そんな一体感が醸し出されます。
LIVEはじまる
まずは、津軽三味線から。音の強さ、明確さに驚かされます。壮明さん(なれなれしいですね。知り合いではないのに…)は、演奏前とかわらぬ、柔和な顔で、ばちをふるいます。みていると、腕以外はどこも動きません。体も頭も、多少のリズムを取ることはあっても、同じ位置に常にあります。手がすごい速さで移動します。うん、弾いているというより、移動するというのが適切な表現に思えます。その動きは直線です。円ではなく、最短距離を結んで無駄のない動きです。
ソロが終わると、吉岡さん登場。尺八とのセッションです。尺八は、円運動ですね。くわえた(適当な表現ではない?)吉岡さんの頭が、円を描き、当然、それにつながる尺八のさきっぽも回ります。音色も動きもやわらかい。津軽三味線が心に響くのだとすると、尺八はしみいるという感じです。息を吹き込んで音を出す楽器というのは、顔面に力が入りますね。吉岡さんの顔が平面にみえます。まゆげが、音の強弱に合わせてよく動きます。
バイオリンのかなちゃん(またなれなれしい?)も、ジャンベ(アフリカのドラムだそうです)の わきたにさんも参加。わきたにさんは、明日のLIVEが本番だそうですが、今日もたたいてくれます。ニコニコしていたわきたにさんの顔が、ドラムをたたくと無表情に。1メートルくらい先の宙をみているような、みていないような視線です。ドラムといっても、手でたたくのですが、よくみると、指をすぼめてくぐもった音をだしたり、手の平(手首の上のつきでた部分)で、ぱーんと爽快な音を出したり。袋のような帽子とやっぱり無表情がちょっと怖い?
かなちゃんは、とても人気者です。おじさんたちにかわいがられているのが、
よくわかります。バイオリンも体の線がぶれません。プロとしてあたりまえなのかなぁ。セッションだと、ずーと弾いているわけではなく、他の楽器を聞いている時間があるのですが、かなちゃんはとてもよく瞳が動きます。吉岡さんが左にいたので、そちらをみて、タイミングを計っている時間が多かったのですが、ぼくはだんぜん右に視線をおくっている姿が、とてもいいと思いました。
本業が高校の先生のパンフルートと、ギターのヨシミツさんも加わり、うえへうえへと上りつめていきます。ときおり、ふっと息を抜いたりして。ミュージシャン同士、なにかを共有しているのがわかります。ちょっと、濃密な空間。これだけ、響く楽器があると、尺八は分がわるいようで、その後、吉岡さんがまた、吹いてくれました。どの人も、誘い合って、また、ステージに立ってくれます。去りがたい夜でした。おまけで、ミニづけ丼がとってもシンプルな味でおいしかった。(きっ)
←Index
|