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相田みつを

 私が相田みつをさんを知ったのは、数年前の、とある日の仕事帰りだった。東京・銀座数寄屋橋交差点での信号待ち、黒い数寄屋橋阪急をふと見上げると、窓にはそれまでなかった看板がある。白地に緑の文字で「相田みつを美術館」と。
 「相田みつをさんという方の私設美術館かな、どんな人なんだろう?」恥ずかしながら、私が相田みつをさんの事を本当に知るのは、実はその数年後となる。

 不景気やリストラと騒がれている今の時代から考えると恵まれた話しだが、まだ世の中はそれほど深刻な時代ではなかった当時、私は仕事に追われていた。いや、追われていたと言うよりも、たいした事の無い自分の能力では片づけられないほどに、仕事を抱え込んでいたのであろう。本来の設計の仕事に加え、自分で始めた設計支援のコンピュータープログラムの作成にてんてこまいになっていた。そんなある日の深夜、残業から帰りふらっと見た新聞、そこに書かれていた広告の言葉に目がとまる。


アノネ      
がんばんなく
てもいいからさ
具体的に
動くことだね
 みつを
出典「トイレ用日めくり・ひとりしずか」(相田みつを美術館)発行


 とても親しみやすい書体で書かれた文字だった。そこには「相田みつを美術館」と書かれている。数年前の銀座の交差点での一場面を思い出す。と同時に自然とその言葉が体にしみわたった。自分を振り返ってみると、忙しい忙しいと自分の頭の中だけで忙しさが空回りしていた事に気がつく。頭の中だけで、あの仕事はこう片付けて、あの仕事はこうでなどと、がんばろうと言う気持ちだけが先走りしていて、実際には上手に動けていないのではないか。そう考えると、次の日からの仕事はとても楽なものとなっていた。

 それから数ヶ月後、精神的な疲れがどっとたまった私は、自然と美術館へ向かっていた。エレベーターを降りるとそこは、外の喧騒をまったく感じさせない、やさしい空気が流れていた。
 事務的に入場券を買う美術館が多い中、入り口からの丁寧な対応に感銘を受け進んでいく。優しい音楽と照明の中、相田みつをさんの書が飾られている。ひとつひとつの作品を、ゆっくりと見ていく。実物の迫力もさる事ながら、その言葉のひとつひとつを、じっとかみしめる。
 私はひとつの作品を、何度も何度も読み返す。自分が納得できるまで、自分で納得できるまで、何度も。時にはその言葉に涙しながら。
 不思議なもので同じ作品でも、その見る時の気持ちで、感じ方がまったく変わる。誉められたり、叱られたり。それぞれの書に共感したり、自分を反省したりと、繰り返しながら先へ進む。ビデオルームでは生前、お元気だった時の相田さんの姿にも出逢える。

 すべての作品を見終え、休憩室へ。そこには、発売されている相田さんの作品の他に、美術館へ来られた方々の感想が綴られたノートがあるのだが、これが相田さんの作品と同じくらいにすばらしい。自分が悩んでいることが、どれだけ小さくて、どれだけつまらないものだったのか、とあらためて考えさせられる。

 (美術館は2003年11月1日に銀座から丸の内の「東京国際フォーラム」へ移転しました)


私は今でも時々、美術館へと出掛ける

こころの休息のために


わたしの美術館



第28回企画展
ことばのパレット 〜相田みつをデザインの世界〜
2005年3月29日[火]〜2005年7月3日[日]


●開館時間:午前10時00分〜午後5時30分(入館は午後5時まで)

●休館日:月曜(祝・祭日の場合は開館・振替休日なし)

●入館料:一般・大学生800円、中・高校生・70歳以上500円、小学生200円(税込)

●住所:東京都千代田区丸の内3−5−1 東京国際フォーラムB1(ガラス棟地下1階)

●交通:鉄道・有楽町駅・東京駅(JR)、有楽町駅・銀座駅・日比谷駅・二重橋前駅(地下鉄)

注意:2005年3月現在のデータです(詳しくは公式ホームページをご覧ください)


 「美術館イベント」 (詳しくは公式ホームページ等にてご確認ください)
4月29日(金)〜5月1日(日)
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン
熱狂の日音楽祭2005 (第5展示室)
7月2日(土)〜7月10日(日)
ダライ・ラマ法王生誕70歳祝賀特別記念
チベット砂曼陀羅の世界 (第2ホール)
4月29日(金)〜5月29日(日)
PEANUTS FOUND IN TRANSLATION
シュルツミュージアムコラボレーション (第2ホール)
 「地方展のおしらせ」 (詳しくは会場又は公式ホームページにてご確認ください)
4月28日(木)〜5月9日(月)
丸井今井札幌本店 (北海道札幌市)
8月3日(水)〜8月22日(月)
山陽百貨店 (兵庫県姫路市)
7月2日(土)〜7月24日(日)
田舎館村博物館 (青森県田舎館村)
8月26日(金)〜9月7日(水)
ながの東急百貨店 (長野県長野市)
 
 「常設展示」
 
ゆのくにの森 ギャラリー祥
(石川県小松市粟津温泉) 40作品
秩父ふるさと館 相田みつをギャラリー
(埼玉県秩父市)40作品・
一時閉館2004.3.21
足利市立美術館 郷土作家コーナー
(栃木県足利市) 4〜5作品



〜もっとくわしく知りたい方はこちらへどうぞ〜

「相田みつを美術館」の公式ホームページへ

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作品の著作権は相田みつを美術館に帰属します

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