このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



相田みつを 〜わたしの美術館〜


Tさんへ                         

 Tさんなあ
 あなたの気持
 よくわかるけれど
 いまはなんにも
 いわぬほうがいいな
 いえば弁解になるから

 静かな池の水面にさ
 小石をポチャンと落とすだろ
 水面いっぱいに波紋ができるよね
 その波紋を静めようと手で押える
 すると押えた手のところへ
 また新らしい波紋ができてしまう
 だからね、波紋を静めるにはね
 そのままにしておくことが
 一番いいんだよ

 あなたが弁解すれば
 弁解したところに
 また新らしい波紋ができる
 苦しいだろうがね
 いまはなんにもいわぬほうがいい

 その代り、やることだけは
 やっておくんだよ
 あんなに降った雪でも

 時期がくればいつか自然に解けて
 土の中から水仙の芽が
 ちゃんと出てくるものね

 弁解やいいわけよりも
 いま、ここで、やるべきことを
 具体的にやってゆくことだね
 雪におおわれた土の中の
 球根のように−
出典「一生感動一生青春」(文化出版局)出版


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