このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください



相田みつを 〜わたしの美術館〜


けれど                         

いつかK先生が
何かに書いておりました

「けれど・・・・・・」という奴は
結局は何もやらない−と

ほんとにそうだ
ほんとにその通りだ

「けれど・・・・・・」の次にくることばは
必ず弁解と言いわけだ
それは
やれなかった理由ではなくて
やらなかった弁解だ

自分がやらなかったことを
なんとか、やれなかった
ことにするための
体裁のいい言いわけだ

しようと思ったのですけれど・・・・・・
やらなければいけないと
考えたんですけれど・・・・・・
思うだけ、考えるだけでは
具体的な形にならぬ

やれなかったのじゃない
要するに
やらなかったのだ

やらなかったことに
「けれど・・・・・・」なんて
余分なものをつけることはない

あとにもさきにも
かけがえのないたった一ツのいのち
明日知れぬ
はかないいのち−
と、いうことを
骨身にしみて感じながら
生きている者は
「けれど・・・・・・」なんて
おまけはつけない

具体的に
やるか、やらぬか−
二ツに一ツの選択だけ
余分なおまけを
つけているひまがないのだ

やらなかった時は
やらなかった−
ただそれだけでいい
それでおしまいにすればいい
一切おまけはつけぬこと

そうすれば
毎日の生活が
どんなにさわやかに
なることか
毎日のいのちが
どんなにはつらつと
なることか

人生のプロは
けれど・・・・・・という
ことばは使わぬ

これは誰にいう
セリフでもありません
くちばかりで
身体の動かぬ
怠け屋のわたし自身への
戒めです
出典「しあわせはいつも」(文化出版局)


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