このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
火と水と油で動く蒸気機関車、それはどのようにして運行されるのでしょう、 ボイラが冷えた状態から運転までのプロセスを順を追って見てゆきましょう。 |
給油 |
![]() ![]() 給油中にこぼれた油はウエスで拭き取りますがが、このウエスは捨てずに点火用に取っておきます。 |
水、石炭 |
注油作業が終わると、次はボイラに水をはります。ボイラに使用する水は蒸留水が一番良く、これは水に溶けている マグメシウムやカルシウム、酸素などが、湯垢(スケール)となって固着し、蒸気の上がりを悪くし、煙管などの 寿命を縮めてしまうためです、長期間に渡り休止せずに使用される発電所の複雑なボイラは水をエバポレータで 処理して使用しています、蒸気機関車では蒸留水がいいことはわかっていてもそこまで手間をかけることはしません、 水道水、川水、井戸水など水質を分析して良ければそのまま使用ます、ただし給水するさい清罐剤を注入し 湯垢の付着やボイラの腐食を防いでいます、また水質は場所によって異なるため、水質の悪い所では最小限度の 給水とし水質の良い所で満水にするといった予防保全処置も取られています。 水を蒸気に変える燃料としては石炭が使用されます。石炭は産地によって性質や熱量に差が有るため、石炭で あれば良いという事ではなく、かつて国産炭が使用されていた頃は、北海道炭が最良とされていました、次いで九州炭、 常磐炭の順になります。粉炭などで作った練炭も使用されます、これは蒸気機関車専用の豆炭で発熱量が高く、また煙 が少ない利点があり、かつては高価なため特急列車用の機関車専用でしたが、戦後は良質の石炭との価格差 が少なくなり、乗務員の労力減少や少煙化で旅客サービス向上のため広く使用されるようになりました、 国内炭鉱が閉鎖された現在では、ベトナムやオーストラリア・中国産の石炭が使用されています。 ![]() 石炭を燃やすには、まず先程の注油作業時に使用したウエスや、機関車の掃除に使ったウエスを火室の火格子 の上に置き点火し薪をほうりこみます、現在ではこの薪の入手も困難な状況にあります、薪が燃え出すと少しずつ石炭を 放り込みます、この時石炭の層にむらが出来ないよう均一に投炭する必要があります、石炭ストーブの点火と同じ要領ながら蒸気機関車の火室は最大のD52形式では3.85㎡もありスケールは段違いです。 この点火時に困るのは通風で、ボイラに水平に配置された煙管は抵抗になるだけで通風の妨げにしかなりません、 そこですでに火のある他の蒸気機関車から蒸気をもらってブロワをかけることになります、点火当初には石炭に火を つけるのに苦労したものが、ブロワをかけて石炭が燃え出すと今度は消すことも出来ないほどの勢いになります。 ![]() 蒸気圧が常用に近づくとコンプレッサー、給水ポンプ、タービン発電機等を動かし作動確認をします、元空気溜めの圧力が上がれば ブレーキも確認します。 こうして火がはいり、適量の水を得、各部の動作の正常が確認されれば、後はテンダに水と石炭を搭載すればいつでも運転が始められることとなります。 |
運転 |
![]() 機関助手が火を焚き、乗客が乗車し、発車の時間が近ずいてきます、やがてホームに発車ベルが響きます、 機関士は後部を確認します、ホームに発車のベルが鳴り駅員の白い手袋がさっと上がると、機関士が「発車」と叫び汽笛が駅舎に響きわたります、機関助手が「発車」と 復唱します、機関士がレギュレータをぐいっと引くと機関車がゆっくりと動出します、さらにレギュレータが引かれる と列車が連結器の伸びる音と共に動き出しだします、ブラストの音が徐々に早くなりスピードが上がります、 機関士が編成の後ろを確認し「後部よし」、投炭中の機関助手はいっときその手を休め後部を振り返り「後部よし」と 復唱し再び投炭を始めます。 ![]() 列車に制動がかけられ車速が落ちます、機関士は巧みにブレーキハンドルを開閉しながら列車をホームの規定停車 位置へ近づけてゆきます、最後は列車にショックを与えないように、編成全体ではなく機関車のみに単弁制動をかけ、ゆっくりとそして正確にホームの停車位置に列車を停車させます。 やがて発車ベルが響くと再び蒸気機関車は終着駅をめざして走り出します。 |
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