このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
![]() 公演監督 1963年生まれ 岡崎市出身 | 中野:「豊橋市民オペラでは公演監督をされた吉村先生ですが、今度のポケットオペラでは音楽監督をされるということです。前回の市民オペラについての感想をお聞かせください。」 吉村:私は、市民オペラを立ち上げた時に市民オペラのHPで訴えていますが、私のオペラ作りの精神は「完成度もさることながら、人間的な温かさの感じられる舞台を作ることです。このオペラ制作に惜しみない情熱と真心をくださる人を集め、オペラを初めて聴いた人も涙を流すようなそんな舞台を作りたいと思っています。・・・・」という気持ちは今も変わりません。しかし、市民オペラ実行委員会で論議をするうちに、だんだん完成度が問われるようになったのです。私は実行委員会の方々の意見も尊重しなければならなかったので、少しずつ私の考えている舞台と違ったものになっていきました。完成度を問うようなオペラに、アマチュアの演出家や歌手、役者を登場させるということはありえないことですし、70人の童子も滅茶苦茶でしょう?私は、市民オペラだからできる演出、演奏を目指したかったのですが、私の考えが半分、完成度を求める人の考えが半分入り交じった、何か統一感のない舞台になっていまいました。 中野:「しかし、「魔笛」の公演の評判は上々で、次の企画を期待する声も上がっているようですが?」 吉村:わたしは、「魔笛」の後、タミーノの演奏については、多くの人から賛辞をいただきましたし、舞台や演出について、名古屋や東京の専門家の人々からも多くの高い評価をいただきました。地元の方々からも、その後、演奏の仕事を何本もいただくことができました。しかし、また同じ実行委員会でオペラをする勇気はありませんでした。それは、オペラの完成度を求めるのならば、行き着くところ中央で活躍するプロ歌手や舞台人を呼び、地元の合唱団が加わるような形になると思います。そこには、教育的な活動や、庶民的な活動である「手作り」が見えてこないのです。私自身は、市民オペラの活動をすべてボランティアで行いました。しかし、傍目から見ると、吉村先生はいくらもらったんだろう・・・・というような声が聞こえてくるような公演になってしまったことが大変残念でなりませんでした。私のやりたいことは、子どもたちとその親、専門家とアマチュアが一緒になって行える「手作り舞台」と「音楽教育」なのです。 中野:「教師であり、演奏家である吉村先生ならではの考え方だと思います。確かに、完成度の高いオペラを観たかったら、今は名古屋や浜松でも海外の歌劇場の引越し公演を観られる時代ですよね。」 吉村:そのとおりですね。わたしは、なるべくお金をかけずに舞台を作り、チケットを安くして、いろいろな人に鑑賞していただけるオペラを作りたいと考えています。その上、プロの指導者や、演奏家には謝礼を少なくても出せる組織作りを目指しています。 演劇を経験したことのある人は、壁や柱があるだけで、舞台ができることを知っています。そこには、手間と工夫は必要です。専門家の力を借りることも絶対に必要ですが、それと同時に大切にしたいことは、団員一人ひとりの力を借りることだと思っています。市民オペラで強く印象に残っていることは、子どもの練習の記録をいつも写真に撮ってくださっていた方や、合唱団員のゼッケン(名札)を作っていたふんけんクラブの方々、子ども係のお父さんお母さん、小道具を作ってくれた方々、子どもの靴の色染めをしていた方々・・・そうした、縁の下の力持ちになってくださった方々の姿です。地方でオペラをする意義はそんなところから生まれてくるものだと思います。 中野:「さて、今回の「ヘンゼルとグレーテル」は、文化会館という比較的小さな会場で行われますが、何か意図はあるのでしょうか?」 吉村:子どもたちの発表会のために文化会館を予約したことから、子どものお母さん方と話しているうちに、オペラをやるところまで話が発展したというのがきっかけなので、大きな意図はありませんが、文化会館は、コンサートホールと比べて残響も少なく、ことばが聞き取り易い点が良いと思います。また、アイプラザのような大きなところではわからない、出演者の表情なども見ることができます。それにより、客席との一体感が生まれ、演奏する方はうまく演奏しないと荒が目立ってしまい、力量を必要としますが、演劇的には一番楽しめる場所ではないかと思います。 中野:「ポケットオペラ編とありますが、独自の工夫はありますか?」 吉村:「ヘンゼルとグレーテル」は元々、ジングシュピール(ドイツ語の歌芝居)で書かれ、それを、作曲者自身がグランドオペラに書き換えたという経緯があります。この、オペラのオーケストラパートはワーグナーの影響を受けたと言われ、とても凝っています。今回はピアノ伴奏ですので、全曲を音楽でとおすのではなく、時折せりふを交えた演劇だけの部分も作りました。それから、ポケットオペラは子どもたちと、その父母が作った会です。何と言っても目玉は33人の妖精です。眠りの精、暁の精は子どもたちの二部合唱に書き換えました。そして、最後のフィナーレの合唱は、大人も入っての混声合唱に編曲してあります。男声合唱団「ふんけんクラブ」もほぼ全員が参加してくださると言うこともあり、「悪魔(魔女)のアリア」の部分に、悪魔隊の男声合唱を加えたりしています。このような編曲に対し、魔女っ子が登場したり、天使が踊ったり、ケーキ人間が出てきたりと、子どもたちが大活躍する演出をつけてくださった松山雅彦先生や、ダンス指導の浅野純子先生、そして、そんな舞台にソリストとして演奏していただく方々にも、本当に感謝しています。 中野:「それは、オリジナルの「ヘンゼルとグレーテル」よりも楽しそうですね。舞台や衣装の方はどうなっていますか? 」 吉村:舞台も、衣装も手作りです。お母さん方が子どもの衣装を作り、男声合唱団「ふんけんクラブ」のメンバーの有志に舞台を作っていただいています。お金をかけずに愛情をかけて・・・ が素晴らしいと思っています。子どもが精一杯がんばっている姿も感動的ですが、大人が子どものために一生懸命動いている姿も、涙か出るほど感動的です。 中野:「本当に心のこもった舞台ができあがりそうですね。本番が楽しみです。本日はどうもありがとうございました。」 吉村:プロの指導が入り、プロも一緒に参加し、大人も子どもも入り交ざった文化祭のステージだと考えていただければ、観ていただく方もクラシック音楽と構えず、気楽に文化会館に足が運べるのではないかと思います。ぜひ、多くのみなさんに、舞台の上の人たちの生き生きとした姿をごらんになっていただきたいと思っています。 (インタヴュアー:ポケットオペラ・ホームページ作成委員会 中野和彦) |
![]() ポケットオペラ ホームページ作成委員会 委員長 中野和彦(なかの かずひこ) |
ポケットオペラ
www.toyohasisiden.com/pocketopera
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