このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

第三回釣り問題研究会

9月17日(土) 東京海洋大学において、第三回「釣り問題研究会」が行われました。




今回のテーマは「内水面における釣り問題の諸相」と題し、
サケ・マス、アユ、ヘラブナ釣りの現状と問題を、それぞれの分野のパネラーが報告しました。
みなさん言いたいことがいっぱいあるらしく、かなり白熱した内容となりました。
漁協の悪しき慣習も話題になり、日本の内水面がいかにむちゃくちゃかが浮き彫りなった感じでした。

まずはサケ・マス
やはり食べておいしいことから、資源量の維持は放流、養殖に頼らざるを得ない。
また、本来生息に適さない河川にも放流されており、自然繁殖は難しいのが現状。
反対に北海道はマス類に非常に適した環境のため、ほとんど管理されていないにもかかわらず、大変魅力的な釣り場だったりする。
近年、キャッチ&リリース区間を設けている河川が増えており、一般自然河川の釣堀化が進んでいる。
漁業法は漁師のための法律で釣り人の意見はなかなか聞き入れられない。しかし、現在日本でマスの漁業者は10人程度。
やはり釣り人の立場は弱いと言わざるを得ない。

もはや天然のマスを釣ることは、非常に難しい状況なのですね。
さらに漁協組合員の高齢化も進んでおり、管理を他に委託するなど、何のための漁協なんだか?




次にアユ
日本の内水面で最も盛んな釣魚というイメージでしたが、これまた問題山積のようです。
アユは、湖産と言われる琵琶湖産のアユと、海産と言われる海で捕獲したものを放流しています。
友釣りに向いているのは、湖産のアユで、縄張り意識が強く追いがいいと言われていました。
しかし、90年代中ごろから湖産のアユの釣れ方が変わってきたそうです。
アユは荒瀬と言われる流れの強いところで釣れるのが普通だったのですが、いわゆるトロ場(流れが緩いところ)で釣れるようなったそうです。
また、台風などで増水するとアユが流され、まったく釣れなくなる事態も出てきています。
つまり、魚が弱くなってしまったわけです。
さらに冷水病の蔓延により、人口養殖のアユも増え、病気は出ないが野性味のないアユが増えてしまってる。
天然遡上のアユが理想ではあるが、現実的には難しく、やはり放流に頼らざるを得ない。
琵琶湖産にこだわる漁協と冷水病の蔓延。さらにカワウによる食害と、ある意味バスよりきびしい現実があるようです。





最後にヘラブナ

ヘラブナはいろいろな意味でバスに似ています。釣っても食べないゲームフィッシングであり、競技が盛んに行われています。
道具にこだわり、無数にあるエサのバリエーションから今日のパターンを見つける。まさにパターンフィッシングです。
また、一部を除き漁協が管理していない点もバスに似ています。
ですが、決定的にバスと違う点はヘラブナは組織化されている点だと思います。
「日本ヘラブナ釣り研究会」や「全日本ヘラブナ放流協議会」といった団体が、しっかした管理を行っていたのです。
バスは(筆者もそうなのですが)、どこにも所属せず、自由なスタイルで釣りをしている人がほとんどです。
これの手軽さ、自由さこそが、ここまでバスフィッシングが広まった理由であり、かつ
まとまりがなく、諸問題に対応できず、発言力もない理由でもあります。
しかし、ヘラブナも近年では団体に所属しない釣り人も増え、高齢化も進み、
外来種ではありませんが、「生物多様性」の面から見れば、放流ついてもいろいろ意見はあるようで、
日本の伝統的な釣りだと思っていたヘラブナ釣りも、安泰ではないようです。





今回の釣り問題研究会でも、バスについてはの話はほとんど出ませんでしたし、
質問も制限されてしまったため、前回聞こうと思っていた「バスの位置づけ」も聞けませんでしたが、
日本の内水面が抱える問題が徐々に明るみに出てきた感じです。
以下はあくまで私見です。
非常に複雑な話なので、誤解を招く恐れもありますが、極力簡単にわかりやすく書いてみます。


1. 漁業協同組合
本来、内水面における漁業協同組合は、その水域で漁をすることを許可された漁師の集まりであったはずですが、
現在では、釣人から遊漁料を徴収し、放流事業をする、または一般の釣人より有利に釣るため、組合員になるといった例もあります。
放流事業は、組合員以外の釣人が釣った分、組合員の漁獲量が減るのを補うために行われるもので、
遊漁料は、そのために使われなければならず、漁協の利益にならないのです。つまり、漁協は営利団体ではないわけです。
今や、食料確保のために釣りをする人はほとんどいないでしょう。
ましてやバス釣りが当てはまる余地はまったく無いわけです。
釣りがレジャーとなった現在、制度がまったく追いついていないのが現状です。

2.自然環境保護 生物多様性
バス問題をきっかけに、内水面における自然環境保護や生物多様性が叫ばれていますが、
バスがいなくても、もはや日本の内水面は無茶苦茶な状態であることが理解できました。
怒られそうですが「今頃何言ってんだ」って感じです。
天然のヤマメ イワナが棲める川はほとんど無くなり、アユが天然遡上できる川もほんんど無くなり、
コイやフナが産卵できる場所も無くなりつつある現状です。
むしろ釣人がいたからこそ、釣りがレジャーであるからこそ、川に魚がいるようなものです。
バスが外来種である以上、これ以上の拡散は阻止すべきでしょう。
そして、それ以前に、生物が棲める川や湖沼を守ることも考えていかねばなりません。
人間の経済活動と自然保護。永遠のテーマですねぇ!




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