このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
宮崎県東臼杵郡東郷町 (株)富乃露酒造店
(2004.12.13)
初蔵出しの日、東郷町は雨であった。新しい蔵“
富乃露酒造店
”の創業は人口5000年ほどの小さな山村にとって非常に明るいニュースであったようだ。詳しい経緯は
宮崎日日新聞社
の“みやざき焼酎進化論”の第2部『
風土が醸す
』を参照願いたいが、明治時代から焼酎を供給し続けていた牧水酒造の廃業は地元東郷町にとって大きな痛手であっただろう。当日は強い雨が降っているにもかかわらず、たくさんの人が会場を訪れ、同蔵の芋焼酎を笑顔で飲み干した。
日向市から国道327号線沿いに車を走らせると20分ほどで東郷町の中心部に至る。そこから更に数キロ。すると左側に道の駅“とうごう”が見えてくる。わかりにくければ、県の“東臼杵南部農業改良普及センター”の看板があるので、それを目印にしていただければと思うが、ちょうどこの道の駅の裏っかわが蔵にあたる。
私などは東郷町や更にその奥の入郷4村(西郷、南郷、諸塚、北郷)へ抜ける場合には都農町から東郷町の市街地の手前に出る広域農道を使用する。そこまでの道のり、思うのは緑の濃さであり、川の美しさだ。数字をあげさせていただくと、東郷町だけでも植林地及び人工林合わせて町の面積の87%を山林が占める(平成14年)ことからもいかに緑が濃いかおわかりいただけるだろう。
そのような自然色濃き山村に“歌人”若山牧水が生まれたのが明治18年(1885年)。8700首あまりの歌を詠み、43歳という時間を走りきった。牧水の詠んだ歌についてはほとんど知らないのだが、学校の授業で教科書に載っていた何首かを思い出して見たが、年がら年中旅にでてばっかり・・・という印象しか出てこない。ちなみに牧水の歌碑を数えると全国に259基あるとか。
この焼酎の名前は牧水の歌に因んで“
あくがれ
”という。本来なら都農町以北では見られなかった甘藷製の焼酎であるが、最近は更に北の高千穂、日之影の会社も製品化しているから宮崎の焼酎に見られた地域性も薄れつつあるようだ。
コップに注いだときの香りは終始一貫して大人しいの一言なのだが、生で飲んだときに思ったのは「味噌の麹みたいな味」であった。そしてあまりツンツンしていないことに驚く。生で飲んでも美味いのだが、熱を加えてやった方が私個人としては良いと思えた。お湯割り、そして直燗。こっちの方が、独特の風味が伸びる気がする。
このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください