このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

えびの 酒屋寸景
家族で温泉に浸かりにえびの市京町温泉へ行った帰り。このまま県境の向こう側の吉松(今は合併によって姶良郡湧水町となっています)へと向かったのだが、いつもの悪い癖で国道から田園地帯へ一つ路地を入った。

そのあたりはえびの市岡松集落というらしいが、牛舎があったり、集落の中に温泉があったり・・・。細いくねくね道を抜けたとたん軽トラックと出くわして、軽い会釈とともに行き違いをする。集落の直ぐ北側には人吉盆地とえびの京町盆地を隔てる矢岳の山が迫ってきており、田園の向こう側には頂が真っ白になった霧島連山がこれまたのんびりと山塊を横たえていた。

もう時間が午後3時を回ろうとしていたこともあっただろうが、農村風景らしく長閑すぎる。その日が日曜日であったことも関係するのだろうが、人の姿が見えないだけによけいにそのように思えた。

集落の間に延びる道を進むと2又にぶち当たる。その2又の基点にはtop画像のような酒店の看板が掛かっていた。

酒屋が簡易郵便局をかねている。田舎ならば当たり前の風景なのかもしれないが、こういうのって私としてはやっぱり珍しい。『650m→』という案内につられて、その白石酒店へと行ってみることとした。
しばらく進むのだが、いっこうにそれらしい店舗は見えてこない。やや不安になりかけたところで、細い路地が急に開けた。えびの市を中心に西諸県郡一円で「標準形」とも言える地元 明石酒造 の醸す明月焼酎の看板が立っている。そして案内の通り、郵便局の『〒』のマークと年季が入った『簡易郵便局』木製看板もあった。その脇に小さな角形の郵便ポストがあって、「ここは郵便局です。」と風景を引き締めていた。

福岡時代に強く感じたのであるが、酒屋はまるで地域の交流の場。北部九州の郊外では店の多くに“角打ち”のスペースが置かれてあったことも大きいだろう。粕取り焼酎探査の道すがら、いつも店のカウンターではビール会社の名前が入った小さなコップに酒が注がれていた。だが、南九州では酒と言えば晩酌であろうから、酒屋を中心とした地域コミュニティの形成は難しい。だが、(全国と同様に)酒だけでなく生活雑貨を扱う店も多く、人々は酒屋に買い物に来て、何かしら会話を交わして帰っていくのであろう。簡易郵便局も然りではないだろうか・・・。

店の方は日曜日と言うこともあって休みのようだ。遠くで牛の鳴き声がするだけで、周囲に人の気配は全くない。店の中を覗いてみたかったが、いつかの土曜日にでもくることにして、元の道を引き返した。
(06.02.12)
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