この4月から県北地域の職場に転勤になり、久しぶりに穀物焼酎を醸す2蔵を擁する諸塚村へと向かった。
4月の陽光。日向市から国道327号線にて、九州脊梁山地を目指す。国道327号線の沿線は新緑が輝き、ヤマツツジの紅色が風景を彩る。平野部と違って、沿線の田んぼが田植えの季節を迎えるのはもう少し先。うす紫色のレンゲが一面を覆っていて、「正しい日本の山村」というフレーズがぴったりの春の風景が前左右の車窓に映るのだ。
宮崎の風景の移ろいは緩やか。全国的に問題になっている山村の荒廃は徐々に忍びつつあるはずだが、カーブを抜けた先にピッツァがウリのカフェの看板が現れたり・・・。まだまだ宮崎の山村には活力がある。
とはいえ、近年、中山間地域の農業者を悩ませる鳥獣害のため、田んぼの周囲に巡らされた鹿避けの金属柵が目に付く。休憩のために立ち寄った日向市東郷町の道の駅では、スーパーの店頭のワゴンに爆竹が山積みになっていた。山村の置かれている現実。まさに待ったなしだ。
車を西へ走らす。
国道が沿って上る耳川の流れは、発電用ダムが所々に設置されているため、滔々。ハンドルを右へ左へ、いくつかのトンネルや鉄橋を越えれば、諸塚村の中心部へと出る。いつぞやかの台風で壊滅的な被害を受けた地区であるが、商店街の復旧や道路の嵩上げが進み、眼前の風景は私の記憶の中のそれとは大きく異なっている。
商店街を抜ければ、木訥という言葉がぴったりの真面目な穀類焼酎を醸す蔵がある七ッ山地区に至る国道503号との分岐点だ。だが、今回は時間が無い。村役場で用事を済ませ、一気に山を下る。
その様なことがあり、何だか心残りがあった。なので、蔵の主力銘柄である麦焼酎を買ってきたのだ。米麹で醸す麦焼酎は、麦焦がしのほろ苦甘さが特徴的。そういった風味はロックよりは熱を加えてやった方が伸びると思われるので、この銘柄を飲むときにはぬるめのお湯割りにすることが多い。
じんわりと心地よい酔いが染み渡ります。 |