このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください
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私、宮崎に本格移住してから早2年が過ぎましたが、未だに地元の郷土料理屋さんに行ったことがありませんでした。宮崎の郷土料理だってチキン南蛮はよく食べるが、その他はあまり食べたことがない。
“魚山亭”。空港ビルに店舗があることは以前から知っていたが、宮崎県庁近くにある店舗みたいに「値段が高くて手がでない・・・」という概念に縛られていたのである。そして駐車場の料金(1時間150円だったか)。薄給の身にはその駐車料金も惜しくて、さらに手が届かない高級なお店というイメージに押しつぶされていたのである。
まあ、この前空港に行く機会があったときにせっかくだからと寄って見たところ、それは思いっきり間違いということがわかった。なんとまぁ、安くて「うひょ〜っ!」を連発してしまう『楽園』だったのですね。
ちょうど昼時であったのでちょっと奮発をしてみた。注文してそう時間も経たないうちに“チキン南蛮”が運ばれてくる。
“チキン南蛮”というのは揚げた鶏の胸身(店によってもも肉だったり色々)を甘酢に通し、そしてタルタルソースをかけたもの。そして、宮崎人ならみんな大好きな鶏肉料理です。オードブルにチキン南蛮が入っていようものなら、親兄弟なんて関係なしのチキン南蛮一本勝負に突入してしまうことは間違い無しなのである。
ルーツは昭和30年代。延岡の「翁」という洋食屋さんで考案されたらしいが、南蛮酢に通しタルタルソースをかけたこのスタイルは宮崎市内の山形屋の裏にある“味のおぐら”が始まり。その後、国内屈指のブロイラー生産県という立地条件も後押しし、一気に県内に浸透。今では店ごとのこだわりが光る宮崎の名物となったのでした。
県外で甘酢のあんかけを揚げた鶏にかけたものを“チキン南蛮”と称しているものを見かけるが、あれは正当じゃありません。もどきです。その点において、私のフェイバリット弁当である“ほっかほっか亭”のキチン南蛮弁当は、九州の地元企業としての意地からかタルタルをかける形式でして、これには感心の一言。
宮崎人の味覚を十二分に表した食い応えのある料理であります。あつあつのうちにいただくとしましょうか。・・・むしゃむしゃむしゃ。甘酢とタルタルソースの風味が口の中で絡まって非常に「うひょ〜っ!」なのである。確かにこってりとしているのだが、箸が進む。そしてなんといっても鶏肉の柔らかさは尋常じゃないのだ。なんと箸で切れちゃうのですね。鶏肉のどこの部位を使用しているのかはわからなかったけど、これには驚きでした。みそ汁、茶碗蒸し、漬け物が付いて987円也。安い!
チキン南蛮をご飯に乗せて食べようとしていたところに今度は“冷や汁”が到着。完食可能か・・・。ちょっと不安がよぎったが、まあ良いのである。我が国では鎌倉時代から食べられてきた暑い夏の風物詩的な存在なのだが、いまやタレントの宣伝効果もあって宮崎の郷土料理として認知されている。地元では飯屋だけでなく、それぞれの家庭でも作って食べる。
・すり鉢でアジ等の魚、ゴマをすり、地味噌を混ぜ滑らかに
なるまでする。
・これをすり鉢の内部になだらかに塗り、表面に軽く焼き目
が付くまであぶる。
・香ばしくなったところで、味噌に水、手でちぎった豆腐、ス
ライスしたきゅうり、シソ、ごま、みょうが等の薬味を入れ
冷蔵庫で冷やす。
こうやって冷えた冷や汁をあつあつのご飯にぶっかけて食べる。
午前中に炎天下の農作業でくたくたとなった体にかき込むようにして食べる冷たい冷や汁はありがたく、昼からの作業にのぞむことが出来る。周辺の県で見かけることがまれなこのぶっかけ飯はそんなこんなで宮崎に定着したのでしょう。
初めて冷や汁を食べたのは宮崎大学の学生食堂の夏の限定メニュー。刻んだ大葉の風味が心地よくてよく食べていた。今でも夏場の巡回等では昼食に食べる。木城町の食堂に行ったときにはテーブルの真ん中に特大のすり鉢が置かれ、その中の冷や汁を何人かで囲んで食べた。
そういえば“魚山亭”の“冷や汁”だった。ゴマの代わりに落花生を使ってあるのか。とても香ばしかった。具をかき混ぜて一気にご飯へかける。そこからかき込むのであるが、香ばしく濃厚な麦味噌の風味と口の中の熱つ冷えの微妙な感覚が癖になるのである。そして一緒についている“飫肥天”及び、日向灘の深海魚“メヒカリ”の南蛮漬けの小技が光った。これも987円。
“魚山亭”は“ぎょっさんてい”と読む。「ぎょっさん」には宮崎弁で言うところの「たくさん」と言う意味がある。「宮崎の海の幸山の幸をぎょっさん食べないよ!!」というのが店名の由来だそうだ。
窓際の席からは滑走路が見え、離着陸する飛行機を眺めながら食事をすることが出来る。
注文から間をおかず料理が運ばれてくる点がとってもに気になっていた。まさか凄腕敏腕の料理人が複数人いるわけは無かろう。そこで店に入ってくるお客さんを観察してみたのだが、店の立地上、飛行機にこれから乗るor今宮崎に着いた人が多いようだ。つまりは“あんまり時間にゆとりがない人”。
どうやらこのスピード提供は、「提供の時間を出来るだけ早くすることで、お客さんにゆっくりと料理を楽しんでもらおう」という店側の配慮と思われた。うむむ、やるじゃないか。
ふと、目に入った光景があった。居酒屋風のカウンターの奥で火が上がっているのである。
んんんんん!?“地鶏の炭火焼き”ではないですか?後ろの棚には焼酎がずらりと・・・。“松露”、“月の中”、“日南娘”、“藤の露”・・・。これはぁ〜・・・。
・・・ううっ。結局頼んでしまった。945円です。
焼酎は“白麹・旭 萬年”にしました。聞けばここの焼酎。支配人の川越さんの趣味に因るところが大きく、全部で87銘柄あるとか。
蔵元までお邪魔したりと情報収集もばっちりとのこと。
ビックリしたのが焼酎1杯の値段。“霧島”などのレギュラー酒と呼ばれる物は350円程度なのだが、全国的にも知名度の高いものが1杯525円なのである。“百年の孤独”もニシタチなどで飲むよりも何百円も安い。750円くらいであったからその破格さ加減がおわかりいただけよう。
レモンをさーっと搾り、一見グロテスクな鶏肉を放り込んだが、鶏肉の脂が口の中に溶けてそれはもう「うひょ〜っ!」とさけびたくなる。歯ごたえも心地よく、鳥皮の部分なんてこりこりこり・・・と口の中でしばらく弄んじゃうくらいなのだ。そこに宮崎の甘〜い焼酎を流し込む。うふふ・・・(うっとり)。
夜は20:30まで営業していると言うことで、誘導灯が灯った幻想的とも言える滑走路を眺めながらの“酒”というのも良いかも知れない。アクセスは日南線から伸びた“盲腸線”JR宮崎空港線があるおかげで全国でも屈指の便利さだ。JRで空港に繰り出し、お開きの後JRで街に移動・・・ということもオッケーなのだ。昔はなかったが、今は空港駐車場の利用券を発行してくれるということも精算時に知った。誰かこの企画に乗りません?
それにしても本当に良く喰った。家に帰って体重計に乗ってみたのだが、その結果は聞かないでください。
(05.01.10)
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