このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

(資)甲斐商店 鹿児島県大口市

(2008.08.23)
伊佐美
前々から紹介したいな・・・と思っていた銘柄がこの“伊佐美”であったりするわけだが、昔からいろいろと人の縁があって、ちょこちょこと飲む機会をいただいている。

この銘柄を初めて見たのは小学生の頃で、確か母方の実家(鹿児島)に遊びに行った時だったと思う。押入の中に大事そうに瓶が置いてあったのだった。鮮やかなラベルが妙に印象に残り、それ以来この焼酎のファンになってしまったのだが、祖父は普段から牛乳をよく飲んでいたりとあまり酒を飲まない人。焼酎の瓶が押入の中にある事に違和感を感じ、祖母に聞いてみたのだが、曰く。「人が遊びに来た時のために取ってある。」とのこと。事実、親戚一同が集まった正月にその瓶は開封されたのだった。

(なお、この焼酎。中曽根元首相が「うまい!」と絶賛したために人気が高まった焼酎であることは皆さんご存知。ただし、当時の私はその様な背景は知るわけもなく、「なかなか買えない」という事実だけを認識していた。思い出したが、鹿児島市内のガソリンスタンドにて給油の景品にこの焼酎が貰えるだか、買う事が出来るだか・・・の店頭ポスターを見た記憶がある。)

私の体質は一体誰から・・・?と思ってしまうくらいに、私の父はウワバミである。陸自という職業柄もあるだろうがとにかく酒に強い。九州出身とはいってもかんしょ焼酎文化圏の生まれではないため、夏は麦茶割り、冬はお湯割り(レモン汁絞り)と南九州の人から見れば???な飲み方を当時はしていた。記憶がだんだんと曖昧になっているが、親戚一同が集まった宴席に私も一緒にいた記憶があり、ワイワイがやがや・・・とした雰囲気の中で甘酸っぱい“伊佐美”の香りを嗅いでいたと思う。

それから十数年。大学に入ってからこの焼酎を初めて飲んだ。宮崎のすっきりあっけらかんとしたかんしょ焼酎の味に舌が慣れていたので、その味の濃密さが堪らなく美味く感じた。開封直後の香りも味わいに負けずと強い。そうこうしているうちに2000年前後の焼酎ブームが近づいて来た。その間に蔵は道路拡張から移転があったり・・・といろいろな変化があった事を聞いた。造りについては不変で、かたくなに黒麹仕込みを変えず、ブームの後になっても単一銘柄での営みを変える事はない。

先日のお盆の帰省の際、実家を出る時に“伊佐美”を1本渡された。

いつもなら人にあげたり、職場の宴席で振る舞ったり・・・する事が圧倒的に多かったのだが、今回はきちんと飲んでみたかった。子供が起きないようにコソコソとお湯割りを作る。う〜ん・・・。味わいは以前より軽くなったような気がするし、香りも学生時代に感じた程ではない。飲み口は柔らかく、全体的にゆるり・・・とした焼酎だ。それでも芯の部分の主張ある甘さは変わらず、妙に飲んでいて安心してしまう。
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