このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

金の露
日向
川越酒造場 宮崎県東諸県郡国富町

(2004.08.05)
国富町は農業の町。

春、本庄川の河川敷は菜の花に染まり、畑はエン麦の濃い緑色。風が吹けばイタリアンライグラスの花粉が舞う。桜が咲くかと言う季節に早期水稲の植え付け。それに続いて、6月。転作奨励品種である飼料イネ“モーれつ”の苗箱が農機の背中を若緑色に染める。国の粗飼料増産事業の後押しもあって急激に広がった。新富町と並んで県下で最大の栽培地となっている。

初夏には広大な面積で栽培される葉たばこ、そして牛の重要なTDN源として給与されるデントコーン(飼料用トウモロコシ)・・・。前者は日本一の生産量を誇り、取引先からの厳しい注文をクリアーするために結構な苦労をされているそうである。後者は青刈りで給与される事もあるが、大抵はコーンハーベスターで収穫と同時に細断され、サイレージへと調整される。青空に入道雲がむくむくとわき上がる8月の頃。

そして忘れてはならないのが甘藷。初夏に植え付けが終わり、8月から収穫が始まる。生食、加工用と振り分けられるが、昨今の焼酎ブームを受けて、今年も熾烈な“取り合い”が繰り広げられるのだろうか。

秋、そして冬と大根の栽培がピークを迎え、これまた生産日本一の千切り大根の季節へと移っていく。台地では櫓が組まれ、河川敷(畑にも当然ながら・・・)にはムシロがかけられ、大根の白が宮崎の冬に彩りを添える。

このようにして国富の一年は巡る。

日向金の露”。国富で昔から愛されてきた銘柄の一つである。しかしながら隣町の綾町、高岡町で生産される雲海酒造の銘柄に押されて、町内に看板は皆無と言っても良い。郊外に行けば、雲海酒造に経営統合された“森の露”の看板と並んで掲げてあるのを何とか見つけることができる。

味わいは骨太、そして香り高い焼酎である。お湯割りでいただいた時に残る(芋焼酎独特の)しっかり甘みが印象的であるが、長く地元で見向きされないという異常な状態が続いた。県外出荷に重きを置き、米焼酎とのブレンドである“川越”などが全国的な支持を得る今、地元の酒屋が望んでも取引をできる余地はない。今まで地域の酒をないがしろにしてきて、売れているからと手のひらを返したって遅いのである。

宮崎の焼酎。残念なことだが、このようにして蔵と地域とのつながりが希薄な場合が多いのである。もっと地域を大切にしていれば、もう少し蔵も残っていたのではと考えなくはない。
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