このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

目指せ福島県JR駅全駅乗降!

初めての常磐線は狂気の旅で

1月14日。AM6:00。空は暗く、強風が冷たい。 眠い。今日は常磐線に乗る。……と言うより常磐線 の駅に降りる、と言った方が正しい。福島県にJR の駅が140ある。その全駅に乗降しよう、という わけである。今日はその実践編の1日である。

さて郡山から平へ磐越東線に乗るのだが平へいく 列車まではまだ時間がある。要田舞木船引三春と初乗降を達成しておく。木造の大きな駅舎の残る要 田にはもう駅員はいない。手入れの行き届いた秘話は 駅舎同様に荒れてゆく日も、そう遠くない。……通学 生のいつもの朝。見馴れぬ趣味人が1人。吐息の白さ は視線の白さでもある。他人の日常に非日常の自分。

ようやくの平行き。川前江田と山深い渓流の中を進む。 上下5本づつしか停車しないこれらの駅は今後の乗降作戦の ネックとなること必死である。しかし早起きがたたり、居眠り。

AM11:00前。平着。いよいよ常磐線へ。全車禁煙の磐越東線 から開放。一服。最近、禁煙車が増え、当方としては乗りづらい。 常磐線を北へ。海岸線のチラリズムは鉄輪の音同様に単調であ る。数駅で空席の目立つ車内は幹線のそれではない。途中すれ 違った〔スーパーひたち〕 の存在が浮いている。1時間の時流れ、浪江着。10数分滞在で双葉へ。夜までこの繰り返しである。双葉。 ここは原発銀座。取り残されたように木造、瓦葺きの駅。静寂の 駅前。真昼のけだるさが全体を包む。けだるさの残る食堂で 昼食。時の日だまりに身を置く。

再開して、磐城太田へ。無人駅。 しかし駅前商店で切符を扱う。そこにはJR東日本では消えた はずの硬券が存在。嬉々として列車に 乗る。小高に下車。ところが予定表には大野に下車とある。気付いた瞬間、列車は 既に動いていた。

予定外の空白が1時間。駅前は活気に乏しい。スーパーのBGMは むなしく流れ、強風が舞う。こんな自分を嘲るかのように。無為の 時間も過ぎ、桃内へ。またも40分の空白。 荒れ果てた無人駅に風が吹き付ける。時の止まった待合室。戸の鳴る 音だけ。向かいのベンチにアベック。 とても居づらい。こうしてうらぶれた駅と町の午後は終わりを告げた。

原ノ町日立木鹿島新地駒ヶ嶺相馬と乗降。 荒れ果てた駅に硬券。時流に取り残された駅たち。 列車発着の賑わいも、すぐに失せる。初めての街の夕暮れ。狂気の一日が暮れる。鹿島では祭りがあるらしい。夕餉時の賑わいと 一緒に街は浮き立っていた。そして車内にもほのかに仙台のにおい。暗闇となった空を列車は行く。岩沼へ出て今日はもう帰ることにする。逢隈で10分も 停車。どうやら遅れているらしい。岩沼には接続列車の姿は既になかった。PM10:40 金谷川着。観光地を見たわけで なく、「旅」とは言えぬ代物であった。が、16時間の乱闘は確実に体力を 消耗させた。

この時点で県内140駅中57駅に乗降。40.7%にすぎない。 目標達成はまだ遠い。

※時刻表地図を参照にしつつ読んだ方がわかりやすいと思う

鈴木 雄一郎著


『PLATFORM vol.4』(1992.4.18発行) 所蔵

電脳版編集:CHU


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