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第10弾:西新井駅西口−高野駅(路線改変)





■「はるかぜⅩ」の路線改変

 「はるかぜⅩ」とは、単に筆者に地の利があるだけではなく、さまざまな連想を与えてくれた交通機関でもある。その「はるかぜⅩ」が路線を改変し、あわせて減量ダイヤ改正を行うことで、なんというべきか「平凡な赤字路線」の様相を呈しつつある。以下、経緯を簡単に追ってみよう。

時期出来事備考
平成19(2007)年 4月14日西新井駅西口−扇いちょう公園間で開業ほぼ終日25分間隔運行・常時二台充当
平成19(2007)年11月 9日停留所新設西新井大師参道入口・西新井本町二丁目
平成20(2008)年 3月25日ダイヤ改正日中の運行間隔を60分間隔に
平成20(2008)年 3月30日日暮里・舎人ライナー開業
平成21(2009)年 4月18日路線改変

ダイヤ改正
扇いちょう公園終点を廃止・高野駅まで延伸
第七中学校経由に変更
ほぼ終日60分間隔運行・常時一台に大減量
平成21(2009)年 5月31日乗継割引廃止日立自動車交通路線相互の乗継割引廃止


路線図



 扇側での路線改変は都市計画道路の開通に伴うもので、日暮里・舎人ライナーへの接続を果たし、そのフィーダー交通としての役割を持つようになった。この観点からすれば、扇大橋駅までの延伸で路線改変意図を充分達したはずである。敢えて高野駅まで伸ばしているのは、折返し場所を求めての措置と推測される。なお、高野駅には小規模ながら交通広場が設置されているというのに、「はるかぜⅩ」をこれを活用していない。

 西新井側での路線改変はおそらく、アリオの買物需要を拾う意図があるのだろう。実見する限りでは、第七中学校でアリオ帰りの利用者が乗りこむ場面もあり、需要の底上げにつながっているものと思われる。

はるかぜⅩ はるかぜⅩ
左:「はるかぜⅩ」は活用しない高野駅の小ぶりな交通広場   右:高野駅からやや離れた場所に停車する「はるかぜⅩ」
平成21(2009)年撮影





■典型的なスパイラル?

 運行間隔60分が基本となった、というよりむしろ常時一台運用に大減量したダイヤ改正の内容は、利用状況を見ればやむをえない措置というしかない。もっとも、これは常識的な感覚にすぎず、当初の記事にて仮定した数字を入力しなおし、直接人件費をまかなえる分界点を探ってみると、また違った状況が見えてくる。

   乗務員  :常時1名
   拘束時間 :6時半〜21時の14.5時間
   乗務員時給:1,500円/時(日立自動車交通のタクシー乗務員求人広告より仮定)
   運行本数 :29本/日(平日)
   直接人件費:1×14.5×1,500=21,750円/日
   必要利用者:21,750÷(29×200)=3.75名/本


 当初の必要利用者数は3.40名/本だったから、実は条件がより厳しくなっている。大幅減便により利便性が低下したことで一本あたり利用者数が減るおそれを想定すべき以上、減量して合理化したはずがかえってハードルを上げる格好になったと指摘せざるをえない。よくいわれる、利用者数減少→運行本数減少→さらなる利用者数減少というサイクルには必然性があるといわざるをえない。直接人件費だけを基準としても上記のとおりだから、さらに間接経費(固定経費でもある)を加えれば、損益分界点はさらに厳しい方向となるだろう。

 日立自動車交通は「はるかぜⅩⅡ」新設など他路線の拡充を図ってもいるから、乗務員を配置するうえで「はるかぜⅩ」を減便せざるをえないのかもしれない。ただし、この点を考慮したとしても、「はるかぜⅩ」の利便性が下がったことは争えない事実であって、路線全体の衰亡を招きかねないと危惧される。

はるかぜⅩ
第七中学校に停車中の「はるかぜⅩ」
(アリオからの買物帰りの利用者がいることがわかる)
平成21(2009)年撮影

 その一方で、路線改変により需要増加が期待できる状況もある。衰退要因と発展要因がどのようにバランスするか、現時点では読みにくい(ちなみに筆者の予測は悲観側である)。

 以上まで記してきたとおり、「はるかぜⅩ」はきわめてローカルなバス路線にすぎないにもかかわらず、さまざまな断面でモデルになりうる素材を備えており、今後の展開にはなお注目を要するといえる。

はるかぜⅩ
新しく開通した都市計画道路を快走する「はるかぜⅩ」
(奥が扇大橋駅・さらに奥は江北橋)
平成21(2009)年撮影





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