このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください





「はるかぜ」導入の経緯





■足立区の計画

 「はるかぜ」の導入経緯に関しては、実は公開されている資料が極めて少ない。現在の足立区サイトには断片的な情報が掲載されているのみで、以前掲載されていたはずの計画路線図や計画思想などは見当たらない。そのため、以下の記述は相当部分が調べた当時の記憶・間接情報・伝聞に基づくものにすぎず、一部には筆者の推測が含まれていることを御承知おき願いたい。

 足立区は平野部に立地している面積の広い区で、国道4号や環状7号などの基幹道路は比較的整備水準が高い一方、都市計画道路の随所に未成区間が介在している。また、区内の鉄道路線にはJR常磐線・東京メトロ千代田線・東武伊勢崎線・新交通システム日暮里舎人線(平成19年度開業予定)などがあり、これらの拠点駅や大きな住宅団地などをバス路線が結ぶ格好になっている。

 足立区内のバス路線網は、第三者的には充実しているように見える。しかし、都市計画道路が未成のため、既存の大型車ではほんらい需要があるはずの区間に設定ができないという状況に加え、主要な駅前広場のバスベイ容量が限界に近いという課題があり、常識的な手法では新規路線の導入は至難であった。

 足立区では、区内の公共交通不便地区を解消するため、バスアクセス距離を極小化する発想から「はるかぜ」の導入を計画した。ここで、足立区は公的助成を停留所整備などの最小限にとどめて、車両購入に関する補助や運営費補助などを行わない方針を採ったため、既存バス事業者は当初参入しようとしなかった。





■「はるかぜ」第1弾の成功

 さまざまな経緯を経て結果的に第1弾に参入したのは、それまでバス部門を持っていなかった日立自動車交通であった。なお、第2弾に参入したのは朝日自動車(越谷営業所)である。朝日自動車は東武バスの系列会社とはいえ、足立区を地盤とする東武バスがじかに参入しなかったという点に、既存バス事業者は「はるかぜ」をリスクの高い事業と判断していた形跡がうかがえる。

 「はるかぜ」第1弾及び第2弾は典型的なニッチ路線であり、公共交通不便地区に新規バス路線を導入し、潜在需要を顕在化させたという点において、社会的意義が大きい成功事例と評価できる。さらにいえば、公開資料は存在しないものの、経営面でも旨みのある路線であると考えられる。そのため、既存バス事業者もようやく重い腰を上げ、東武バス(セントラル)が第3弾に、国際興業バスが第4弾に参入したが、両路線とも相対的には低需要路線にとどまっているのは、たいへん皮肉な状況といえる。

 第5弾には新日本観光自動車が参入した。同社の車庫が終点付近にあることから、続く第6弾にも同社が参入している。つくばエクスプレス開業によって、利用者が大きく動くとも想定されたが、第6弾までには大きな動きはないばかりか、第7弾が追加され現在に至っている。新交通システム日暮里舎人線の開業後はさすがに無風とは想定しにくいものの、需要地が競合する第3弾・第4弾・第6弾各路線とも、需要の方向性は日暮里舎人線とは異なることから、このまま安定的に推移する可能性も指摘できる。





■細切れの情報開示

足立区のコミュニティバス
 事業の方法は、区が走行環境の整備を行い、バス事業者が独自に運行します。
  「あだち広報」平成18(2006)年 6月25日付第1470号より

コミュニティバスへの補助
 事業採算から開業できない路線について、区民の利便性向上のため、事業者への助成をしてでも新路線を検討すると答弁。
  「日本共産党足立区議団ニュース」平成20(2008)年11月付第 151号より



 既に記したとおり「はるかぜ」運行スキームや導入経緯に関する情報開示はごく少ない。以上のように稀に、隙間から情報が見えてくる次第。他の自治体でも参考になる先進事例の一つであるはずなのだから、積極的に情報開示しても良いように思えるのだが。





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