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続・清廉潔白の話
都政停滞を深刻に憂う





■清廉潔白

 こんなくだらない話は書きたくもないのだが。 二年前にこんな記事を書いている 以上、書かねばなるまい。五月連休中と記憶するが、筆者宅で交わされた会話を以下に紹介する。





 娘「いま学校で話題になっているんだけど、マスゾエさんって良い人なの悪い人なの?」

 私「う〜〜ん、良い人悪い人というよりむしろ、ダメな人というべきではないかな」

 娘「へえ〜〜」



 娘が納得したかどうかは必ずしも明らかではないが、その後の展開は論ずるまでもない。舛添知事はまさに「ダメな人」であった。その人物像を論っても筆が汚れるだけ、という虚しさが残る。





■本題

 だから本題はそこには置かない。筆者は敢えて、誰も指摘していない点を挙げる。

 東京都は、実に四代も続けて、「神輿」の如き都知事による治政が行われてきた。このように書くと、石原慎太郎は違うだろう、と言われそうだ。確かに石原元都知事には功績が多く、都民のために働いた実績はあり、その恩恵に与った都民は多いはずだ。とはいえ、石原元都知事は「三年寝太郎」に近い存在で、都庁での不在時間があまりにも長すぎた。都庁官僚の担ぐ神輿に乗っていたという意味では、青島幸男、猪瀬直樹、舛添要一と大同小異と筆者は見る。

 一連の舛添問題のなかで、筆者の耳に残ったのは、TVニュースに採り上げられた問答である。外国出張でファーストクラスやスイートルームを多用した理由を問われ、

「準備してくれたのは事務方ですから」

 という旨をシレッと答えたのである。これが言い逃れである可能性は否定できないが、TV取材に表明した以上、真意の如何を問わず、真意として捉えなければならない。筆者は実は、知事が自らの意志・意図を以てファーストクラス・スイートルームを選んでいるならば、納得する余地が充分あると考えていた。しかし、実際の答弁は部下への責任転嫁だった。知事は都庁官僚の担ぐ「神輿」に乗っていただけに過ぎないことを露呈した瞬間でもあった。

 かような小人物の資質を云々しても始まらないのだ。根本的な大問題は、「神輿」知事が(少なくとも)四代20年以上続いている点にある。この間、都政の陳腐化が進み、旧態依然な停滞に陥りかけているというのに、誰も是正できず、それ以前に指摘すらしない、寒々しい状況が続いている。( 都政の旧態依然は音喜多駿都議が孤軍奮闘で伝えている

 次の都知事に誰が就くにせよ、突然の選挙に臨む以上は、充分な準備ができるとは考えにくい。かくして都政の現状は温存されてしまう。

 筆者が都民になってから十年以上になるが、他自治体と比べ満足度はかなり高い。以前住んだことのある某自治体は、恵まれたロケーションと潤沢な法人税収入にあぐらをかき、まともな都市政策を打ち出さず、住民満足度がきわめて低かった。東京都は先進的な都市政策を提供し続けてきており、住民満足度の高さにつながっているが、ほころびや低迷の兆しはすでに見え始めている。

 現時点での東京都政の本質はそこにあると筆者は考える。舛添問題の喧騒と、五輪開催の熱狂にかき消され、顕在化が東京五輪後になるようでは危うい。





■蛇足的補遺

 志学館の本旨に則り、交通に関する見解を敢えて載せておく。

 本事案はもともと、知事の海外出張費が高額すぎるという批判から始まっていると記憶する。実際のところはどうなのか。 東京都庁のHPに海外出張記録が公開されていた ので、これを参考に簡単にコメントしてみよう。

 昨年のパリ・ロンドン出張はのべ20名、全行程参加は14名。総額は50百万円。うち旅費は26百万円で、航空賃は14.4百万円。これはのべ人数で単純割でき、計算すると72万円。便利な時間帯のビジネスクラス相当、という運賃である。宿泊はパリ三泊、ロンドン二泊。宿泊料 9.2百万円をのべ宿泊人数85名(想定)で単純割すると一人一泊あたり10万円強と、パリ・ロンドンの高い物価を考えても、かなり高めの水準に感じられる……と思ったら、ロンドン一泊をキャンセルしていたとの由。のべ宿泊人数は 102名(想定)ということになり、一人一泊あたり 9万円強。見た目は多少緩和したものの、やはり高水準である。

 旅費以外の24百万円については、単純割する意味がない。車両借上・現地案内人は必須であるし、通訳も必要だ(たとえ当人が英語の達人でも)。講演会費用等も、こんなものだろう、と思われる水準だ。

 総額50百万円については、全般にいささか高水準かなと思われるものの、決して「高額すぎる」内容とはいえない。

 では何故、都知事の海外出張が批判の対象となったのか。筆者はてっきり、出張記録を公表していないから、と直感していたのだが、東京都庁のHPでの公開情報は通り一遍であるが、国際交流に関する広報活動として特段の不足があるわけでもない。

 となると、理由は一つしかない。「その海外出張は都知事の仕事なのか?」という疑問を払拭できない点に尽きる。舛添前都知事の海外出張先はソチ、北京、ソウル(×2)、トムスク、仁川、ベルリン・ロンドン、パリ・ロンドン、ニューヨーク・ワシントンと、回数が頻繁(特に平成26年に 6度も)であるうえに、行先がスポーツ・文化に偏し過ぎている。物見遊山という批判は、一面の真理を衝いている。

 のべ 9度もの海外出張の機会がありながら、経済団体・企業団体どころか、JOC等のスポーツ団体すら帯同しなかった事実は、これら出張に実利がないことを裏づける傍証といえよう。

 筆者が知る限りにおいて、例えば富山県石井知事は、まさに富山県を代表する形で海外出張に臨んでいる( 平成24年平成27年 )。東京都知事は確かに「トップリーダー」で、地方の田舎県知事などとは比較にならない別の在り方がありえるのかもしれない。しかしながら、筆者の目から見て、東京都民のために働いていない知事は二代続いてしまった。資格なき者が逐われたのは幸いとしても、次の都知事が資格ある者とは限らない。せめてまともな候補者に立って貰いたいものだ。

 (文中敬称略)





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