このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

3.「利き眼」と野球との関係
 「利き手」と同じように,人には「利き眼」があります。小さいすき間ごしに 向こう側を見ようとする時(例えば,銃で狙いをつける時,写真を撮る時) に使う眼が,その人にとっての「利き眼」です。ある調査結果によると,右眼利きの方が多く,60から70%を占めるのだそうです。また,利き手 と利き眼は一致しやすいという報告もあります。
 なぜ一致しやすいかについては,パ−ソンの「原子戦争説」があります。それは,狩猟生活においては,利き手と利き眼が同じ側にあった方が槍を投げたり, 弓を射たりするのに命中率が高く,それだけ生き残る可能性が大きい,という ものです。事実,ラベリ−は,利き手と利き眼が一致している子供は,あらゆる 運動機能が優れているとしており,ランドウは槍投げで,シックはバスケットボ−ル で同様のことを認めています。さらに,ランダ−スはロサンゼルス・オリンピック に出場した射撃選手を調べ,すべての選手が利き手と利き眼が一致していた と報告しています。
 これを野球の話に置き換えると,右投手は右眼利きの方が,左投手は左眼利きの方 が有利だということになります。なぜならば,そうだとコントロ−ルをつけやすいからです。 僕自身,コントロ−ルが悪く非常に気に しているのですが,僕は右投げ・左眼利きであり,もしかするとこれが原因の ひとつであると考えることもできます。
 よく,「リリ−スポイントは前の方で」というアドバイスを聞きます。 これはバッタ−により近いところでボ−ルをリリ−スすることによって, 少しでも球速の衰えをなくそうという意図もあるのですが,それ以上に,リリ−スポイントを前にもってくることによって,そこを自分の視野に入れることが重要であると思われます。ダ−ツを投げる時のことを考えてください。 皆さんはダ−ツを目の前,あるいは横から投げませんか。その方がコントロ−ル がつきやすいのです。
 次に,バッタ−の話に移しましょう。
 先に,60から70%の人が右眼利きであるといいました。その右眼利き の選手が,右のバッタ−ボックスに立つと,右眼は鼻の後ろに隠れ,ピッチャ− の動作や球筋を狭い視野で捉えなくてはなりません。オ−プンスタンスだと ボ−ルが見やすいのは,これと深く関係しているように思われます。さて, ボ−ルを見やすくするにはもうひとつの方法があります。そう,右打ちを 左打ちに変えればいいのです。そうすれば,利き眼である右眼を有効に使う ことができるようになります。イチロ−,松井,高橋など,優秀な右投げ・左打ち の選手が多く存在しますが,これは左打ちだと一塁までの距離が短いばかりでは なく,利き眼の影響も関連してるのではないかと考えられます。

おわりに
 この長い文章を読んでくださり,どうもありがとうございました。もっと短く まとめたかったのですが,うまくまとめることができませんでした。
 どうでしょうか?右利き,左利きに興味を持ちましたか?人間だけでなく, 動物にも「利き」があるのかどうか,個人的には興味のあるところです。 みなさんも,犬が電柱にオシッコをかける時にどちらの足を上げるのか, 猫がねずみや鳥を捕まえる時にどちらの手を使うのかなどなど,機会があったら 観察してみてください。きっとおもしろいと思いますよ。

<参考文献>
「右利き,左利きの科学」 前原勝矢(講談社ブル−バックス)
「空間感覚の心理学 右が好き?左が好き?」 加藤孝義(新曜社)


 

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