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恵那弁基礎語彙

特徴的な語彙を紹介していきます。

書けない漢語を使っています

勘考(かんこう)咳気(がいき)僭上(せんしょ)
安気(あんき)功罪(こうざい)新造(しんぞう)

勘考かんこう

用例:勘考する

「かんこうする」と聞けば、普通は「観光する」んだと思うだろう。しかし、恵那弁では「勘考」つまり「工夫する」とか「考える」という意味になる。 「勘考しとくは」というのは「考えておくは」という意味である。もちろん共通語とほぼ同じ使い方である。
まだ子供のころ、「かんこうバス」に初めて乗った。普通のバスと違って、窓にカーテンがあったりイスがパタンと倒れるようになっていたり、いろいろな設備 がついていた。まだ子供の私は親にこう訊いた。「かんこうバスちゃ、勘考したるもんで、勘考バスってゆうの。」 一瞬間をおいてこう答えが返ってきた。 「ほうやに。観光したいくもんで観光バスっていうんやに。」 私が観光バスの漢字を正確に覚えたのは随分後のことである。

咳気がいき

用例:咳気しょっとる

「がいきしょっとる」とは「風邪を引いている」ということだ。漢字で「せき」の「け」と読めばなるほどとうなずくこともできるだろうが、そんなこと は関係無しに使われている。なぜなら、咳じゃなく鼻水が出ているときにもこう言われるのだから。「やい、がいきしょうなよ。」

僭上せんしょ

用例:いらん僭上すんな

「僭上(せんしょう)」とは身分を越えて出過ぎたまねをすることである。恵那弁では「せんしょう」は「せんしょ」と短くなり、余計なお節介をするこ とをいう。まさに「要らぬこと」である。 僭上とはいうが、恵那弁では誰に対してするお節介でも使う。

安気あんき

用例:安気こく

「あんきこく」とは、「安心する」「ほっとする」という意味である。「家に帰ると安気こく」という具合に結構使われる。なお、地名の『あぎ』は神様 がお産をした後に「安気こいた」もんで名付けられたそうだ。ほんとかね。

功罪こうざい

用例:功罪をいう

いろいろと文句をつけることを「功罪をいう」という。恵那弁の「こうざい」に本当にこの漢字が当てあてられるのかは分からないが、意味は善し悪しを あれこれいう様をいうのであたらずも遠からずといったところだろう。 この言葉は特に、してもらったことについて文句を言ったときにたしなめるために使われる。 例えば、物を貰っておいて、それについてもっと他の物がいいのにと文句を付けたり、 自分は準備をしていないのに、店が悪いとか料理が悪いとか人の手配に文句を付けたりする場合である。

似たような表現に「講釈こうしゃくを垂れる」というのがある。 これもつべこべ言うことを指すが、 あれこれ理由をつけて言い訳をするのをとがめて言う場合が多い。 また、役に立たない理屈を言って議論を混ぜっ返すことに対しても使う。

新造しんぞう

用例:ご新造さ

若いお嫁さんのことを「ごしんぞう」という。会話のなかでは「○○さのとこのごしんぞうが○○しょうらしたげな」といった感じで使 われ る。「新造」というのは武家のお嫁さんということだけど、全然関係ないようだ。僭上といいこの地域には漢語を使うインテリが昔いたにちがいない。

おこっている訳じゃないに

あらすかえかなにー
しょうるやい

あらすか

「そんなものアラスカにもあらすか」という寒いギャグで無理に使う場合はともかくとして、普通は「そんなものあるはずがない」という意味で、「店に 行くのが遅かったけど、まだ品物残っとった。」「あらすか。」という感じで使われる。この語は感情が入って声が大きくなりやすいが、別におこって急に大き な声になるとは限らないのでそんなに気にする必要はない。

「-すか」は「-したはずがない」という意味で多用される。

えか

「えか」とは「よいか」と軽く確認をしているだけで、特に念押しをしているつもりもない。

という感じでほんとに軽い場面で使われる。が、それだけに、他の地域に出たときに方言だと気がついていない場合がある。気のせいか岐阜出身の職場の 上司が指示の最後に「いい」を付けていたような気がする。初めて言われた他県の人はどう感じていたのだろうか。「いい」を付けられて何も感じなかった 私には全く想像はできない。

なにー・しょうる・やい

呼ばれたとき、「なにー」とつい返事をしてしまう。別に虫の居所が悪いわけでもなく、そういう返事なのだから仕方がない。恵那弁で は動作 が進行中の状態をあらわすときに「しょうる」を使う。「しよる」というのは関西では「しやがる」といった感じの語感ということだから、「何しょうるよ」 (何をしていますか)と言われたらびっくりされそうである。「やい」というのは、最近は使わないが「おい」とか「もしもし」と言った程度の軽いかけ声であ る。

えらいから偉いのかな

えらいつもいたるい
きいないおそがいそうましい

えらい

「えらい」は2つの意味で使われている。一つは共通語とおなじ「偉い」。 もう一つは「疲れる、きつい、つらい」という意味の「えらい」である。 「走ってきたから、えらかった」とか「頑張ったもんで、えらかった」という具合に 使うのは別に自分を誉めているわけではなく、単に疲れたといっているだけである。 この文脈だと「偉い」と間違えられるかもしれない。 でも「昨日は風邪をひいていてえらかった」になると、「えらい」の意味を知らない人に とっては意味不明であろう。子供のころ、偉いの意味より先に、「えらい=疲れる」と 覚えていたので、「総理大臣がえらい」というのは、たくさん仕事をしなければならない から「えらい」のだと思っていた。実際に激務ではあるから、ある意味間違ってはいなかったのかな。

つもい

おもに靴が小さくてきついときに用いる。服が窮屈なときにも「つもい」を使う。

たるい

恵那弁でいう「たるい」は「悲しい、不快だった」といった意味で、 最近よく使われている「気乗りしない、やる気がでない」という意味ではない。 小学校の国語の時間によく綴り方(生活作文)を書かされたものだが、そこでは「悲しかった」 と書かずに「たるかった」書く方が多かった。というのも「たるい」の方が、「不快感、やりきれなさ、 不満」といったものが入り混じって分別不能な心境をより適切に言い表していたからではないか と推測される。「悲しい」に含まれている「泣きたい気持ち」は含まれていない。

きいない

意味は「黄色い」。更に「きいなくなる」は通常「きいのうなる」として使われる。

おそがい

恐い、恐ろしいの意味である。


阿木村総合案内板 2000 年3月29日設置 E-mail: agi_jin_sa@yahoo.co.jp
2005年1月15日更新

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