このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください |
都電で唯一残った路線です。12.2kmを50分弱で結びます。路面電車とは言いますが、ほとんどが専用軌道で、併用軌道区間は400mくらいしかありません。この併用区間の少なさゆえに生き残ったとも言えるあたりが若干皮肉です。下町の軒先をかすめるようにして走る電車は、沿線住民の足として、愛され、活用されています。ホームは全てかさ上げされたホームで、高床タイプの電車に段差無しで乗り込むことができます。
始発の三ノ輪橋は「関東の駅百選」にも選ばれた(平成9年認定)、花のあふれる明るい停留所です。折り返し部分は単線で片面のみのホーム配置になっており、乗降分離のため手前に降車ホームがあります。町屋駅前では京成本線、東京メトロ千代田線に接続します。車庫は「荒川車庫」のみ。運行途中での乗務員の交代もここで行われます。王子駅前ではJR 京浜東北線 、東京メトロ南北線に接続。新庚申塚停留所付近で都営三田線を跨ぎ越し、近くには西巣鴨駅がありますが、特に連絡はありません。大塚駅前ではJR 山手線 に接続します。向原停留所付近で東京メトロ丸ノ内線を跨ぎますが、ここでも接続はありません。東池袋四丁目停留所は東京メトロ有楽町線の東池袋駅の直上にあります。終点早稲田は道路の中央。ここも折り返し部分は単線ですが、折り返し部分は左右両方にホームがあるため乗降は確実に分離されます。加えて、このホームを延長する形で混雑時対応の降車専用ホームが手前に設けられています。なお、東京メトロ東西線の早稲田駅はかなり離れたところにあります。
<乗車記>
京成電車から乗り換えた、町屋駅前停留所。三ノ輪橋行きの電車はすぐにやって来た。陽気のせいもあってか、電車にはかなり人が乗っていた。よっしゃぁ、乗るぞっ。…なんと、小銭がない。27円しかない。両替機くらいはついてるだろうと思って前の人越しに運賃箱を見ると、「紙幣挿入口」というのがある。お、もしかして…。果たして、野口英世の1000円札をそこに突っ込むと840円のお釣りが出てきた。すげぇな、東京。車内に貼ってあった割引乗車券類の案内を見ていると、「バス共通カード」の案内があった。いわく、「5,000円カードで850円もお得」「3,000円カードで360円お得」この中途半端な「お得額」、どっかで見たような気がしたと思ったら、仙台市営・宮城交通共通カードと同じ割引額であった。ちなみに西鉄バスだと5,000円で750円、3,000円で400円お得。ん、3,000円カードなら西鉄の方がお得だ。
とりあえず終点の三ノ輪橋まで行く。住宅地の小さな商店街に頭から突っ込むような停留所である。近くにあったイトーヨーカドーでお買い物。狭い商店街の路地の向こうに、常磐線の電車が駆け抜けて行くのが見えた。この辺は、住所でいうと南千住である。「こち亀」で、本田クンの実家のバイク屋があるところだ。暑いのでアイスの「ピノ」を買って食べようと…食べようと…こ、これはもしかして!! なんと「ハートのピノ」が出た!! …おぉ、これに出会うために全ては仕組まれていたのか!! 今朝寝坊して当初の計画がおじゃんになったのも、山形新幹線が遅れたために変更した計画までもおじゃんになったのも、どうでもよくなって、なんとなく嬉しくなってきた(単純)
ホームのスピーカーから、「こちらは荒川電車営業所です…」という肉声アナウンスが流れてきた。「本日は行楽日和のため、電車大変混雑しております。全部の電車少し遅れておりますので、乗降時間短縮にご協力下さい…」…別にいいやんか、路面電車なんやし。多少遅れてもさほど深刻な事態になるとは思えないのだが。やって来た電車の運賃箱に、今度は160円きっちり投入して乗車する。最初は座席に座ったのだが、おばちゃんたちがわらわらと乗ってきたので席を立った。「あらまお兄さん、どうもねぇ。こっち座る?」「いえいえ、まだ乗られる方いるみたいですし、どうぞ」「ありがとねぇ」…下町、という感じである。対向列車がやって来た。折り返し部は単線のため、発車を急かされる格好になる。…あっち、新型車両やし。くそ。早稲田で待ってて写真撮ってやる。
チンチン! というレトロな発車合図の後、ごろごろと電車が動き出す。そこにIC制御の合成音声案内放送が入るのだから面白い。何もないところで停車したので何事かと思ったら、踏切が降りるのを待っていた。かつて東急世田谷線に乗った折に似たような光景を見たのを思い出した。春のうららかな日差しの下、顔を覗かせている都電を見ておばちゃんが自転車を止めたりして、のどかな雰囲気である。電停にはどこも少しずつお客さんがいる。「荒川二丁目」電停は最寄の「荒川自然公園」を利用する人たちの乗降が多かった。この荒川自然公園、都の「三河島水再生センター」の上に造られた人工の公園だ。老人ホームか何かのグループだろうか、車椅子に乗ったお年寄りが何人か、中ドアから乗ってきた。車内はますますごった返してきた。
運転士はしきりに電車の遅れを気にしているらしく、「ご乗車されましたら中の方に進んでくださ〜い、ご乗車のお客様たくさんいらっしゃいますので降りる方は早めに後ろのドアまで進んでおいてくださ〜い」「電車遅れておりま〜す。乗降時間の短縮にご協力下さ〜い。電車遅れますと大変多くの方々にご迷惑となりま〜す」などと、停留所ごとにアナウンスを入れていた。まぁ確かに混雑しているし、遅れているのも確かなのだろうが、そこまでピリピリすることはないだろう。専用区間がほとんどの、往復だけの路線だ。折り返し時間を調整すればいくらでも融通は利くのではあるまいか。もっとも、部外者でよその土地の人間である私が言うことではないのかも知れないが。
町屋駅前で結構な乗降がある。乗降と言うか、乗車が多い。対向する電車も混雑が激しい。気楽な足として定着している証拠だろう。荒川遊園地前で車内の乗客が入れ替わった。いやはや大変な騒ぎである。乗車時、運賃箱が運賃確認機能を備えているため、複数人で乗車の場合はその旨告げてから運賃を投入しないときちんと認識してくれない。家族連れが多いこともあって、乗車に手間取るのが遅れの最大要因だろう。荒川遊園地前の次は荒川車庫前。唯一となった都電の車庫である。ここで乗務員交代。今度の運転士はそれほど「遅れ」を叫ぶことはしなかった。対向電車、ダンゴ運転になっている。路面電車ではありがちな風景で、微笑ましい。…多分、乗務員の方々にとっては微笑ましいどころの騒ぎではないのだろうが。
右に急カーブを切って王子駅前。京浜東北線の209系が頭上を走り抜けていく。ここで降車があった。車内がやや空いてくる。向かいのホームに目をやると、ホームで運賃収受を行っていた。そしてホームで電車を待つ人、人、人…。三ノ輪橋行きと荒川車庫前行きが続けてやって来たが、多分、積み残しが出ただろう。王子駅前から飛鳥山までの400mの区間が都電唯一の併用軌道区間。軌道内の車両通行が許可されているので、普通に自動車が軌道内に入ってきている。地方都市で路面電車が生き残っているところでは、軌道内通行を規制しているところが多い。道路交通がいかに共生していくか、選ぶ道はそれぞれである。
電車は、軒先をくぐるような専用軌道を走り抜けていく。庚申塚でふと車両の後方に目をやると、すぐ後ろに「早稲田」の方向幕が見えた。どうやらこちらもダンゴ運転になってしまっているようだ。とげ抜き地蔵で有名な庚申塚、都電の車内放送でもしっかり案内されていた。駅前広場を回り込むようにして大塚駅前到着。この大塚駅前で降車がかなりあり、立ち客が2、3人という状況まで空いた。再び駅前を回り込むようにして発車。池袋のサンシャインを背にして走る、写真などで有名な区間に入る。鬼子母神前の停留所は軌道部分が仮桁のようになっていた。これは、池袋〜渋谷間で建設中の「地下鉄13号線」の工事である。このあたりでは都電に沿って都道を整備し、その下に地下鉄を建設するというプロジェクトが進行中なのである。鬼子母神前停留所の直下に「新雑司ヶ谷」駅ができる。先日、学校の「学外研修」で新宿三丁目駅の工事現場を見学させていただいたことも記憶に新しい。
もうすぐ早稲田、終点だ。学習院下を過ぎ、車窓を見やると、桜がちらほらと咲き始めていた。陽気のせいもあり、沿道で行われていたイベントもまずまずの賑わいを見せていた。ほどなく、電車は終点、早稲田停留所に到着した。手前側に降車ホームがあったのだが、ほとんど減速せずそのままポイントに突っ込み、奥のホームに停車した。すぐ折り返し三ノ輪橋行きになるようだ。左側の前後のドアが開放され、乗客がぞろぞろとホームに吐き出された。反対側の乗車ホームにはこれまた結構な人だかりである。都電の身軽さ、手軽さ、気楽さが愛されているのではないかなぁと漠然と感じた。
鬼子母神前停留所付近にて後方展望
[05.04.03乗車]
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