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時は昭和。
雪がしんしん降る寒〜い日のことでしてん。
旅人が、みちのくの山奥を旅していましてん。 と、目の前の山の中腹に大きな大きな煙突が現れましてん。
「おお、こんなところに温泉があつたとわ。
風呂でも入って温もって行こか」
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旅人は煙突を目指して山を登りはじめましてん。
山の中腹にさしかかたっところでしてん。
「おやおやまあまあ、こんなところに」
なんと、線路が敷いてありますやんか。
「お、こんなとこに線路があるわ」
「温泉に行く電車と違ゃうか」
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と、「ぱーん」と警笛が聞こえます。
黄色い機関車が見えます。
「おお。来たわ来たわ。渡りに船、
違うわ、温泉に電車やがな。」
「乗ろ乗ろ」「停めて停めて」 | | |
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「おお、何やら、狭そうな電車やなぁ。
これが岩手の馬面電車かいな。」
「おーい、温泉まで、乗してんか」
「いわさぐばっておるおや、もうさげぇねども、ふろへはぁ、ゆかないばんげ」
風呂へは行かん、言うのに、南部弁がさっぱりわからん旅人は、なぞの列車に乗込みます。 | | |
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ごとん、ごとっと、ごごとと、ごと、
大きく揺れながら、列車はゆっくりと走ります。
「何じゃこら、えらい揺れる列車やな。」
列車はどんどん山の奥へと入ってゆきます。
「なんやなんや、昼間の銀河鉄道かいな」 | | |
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やがて駅みたいなとこに着きましてん。
何か変ですな。
隣の列車には石をいっぱい積んでまっせ。
「あらら、お、温泉はどこや、どこやどこや」
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「こ、これは何や・・・」
そこには都会の電車では見たことも無いような、不可思議な鉄道風景が広がっていましてん。
貨車は横が開くようになってるし、
三角に敷かれたレールは、何やろ?
どうやら車両の向きを換えるためのもののようですわ。 | | |
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それに、この、へろへろのレール・・
別の線路が山の上へ伸びています。貨車をロープで引張りあげています。
「こ、これが、うわさに聞く、インクラインやがな・・」
やがて、列車はなにやら灰色の石を満載して発車してゆきます。 | | |
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「これは夢と違うやろか」
旅人は鼻毛を引張ります。
「は、はくしょい」
「い、痛っ。本物やがな・・」
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旅人は、ついに、線路の幅を測り始めます。
「508ミリ」「狭い」「実に狭い!」
そして、旅人は・・・
狭い線路にはまった自分に気付くのでした。
「この道は、引き返せないんや・・」 | | |
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===完===
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と、言うわけで、多くの旅人をナロー鉄ちゃんにしてしまった軌道がありました。
岩手県岩泉にあった、「日本粘土鉱業」の構内線です。国内では貴重な耐火粘土資源を産出、脱鉄製法など優れた技術を有していましたが、平成8年に軌道は廃止、今は鉱山も無くなりました。
[ここらへん]
にありました。
今回出演した北陸重機製の機関車は、廃止後も永らく現地に置かれていましたが、今は再起に向け新潟県へ移動しています。
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昭和60年1月25日撮影 |
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【おまけ】
岩手にはほんまに温泉に向かって走っていた狭い電車もありましてん。
こちらが本物の馬面電車。今も花巻市で余生を過ごしてはります。
こちらは軌間762ミリです。
[ここ]
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