このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


 杞憂 京終 京三・作 >40F & 1F
 ぼくはとんでもないことに気がついてしまった。
 ぼくの会社は、40階までが吹き抜けになっている。その吹き抜けを取り囲むようにして、いくつも部屋があるのだ。
 しかし、ぼくのいる41階から上は、吹き抜けではなく、フロア全体が部屋と廊下で占められている。
 そう、つまりこの総務課は、フロアの中央に位置しているから、この床の下は吹き抜けなのだ。
 階数にして40階分、1階まで床がないのだ。

 この床が抜けたらどうしよう…
 今、ぼくのいる床の部分にパカっと穴が開いて、そこに落ち込んでしまったら…
 40階のビルの屋上から、飛び降りるのと同じだ。
 即死だな。即死だよな。
 あ。この総務課、大きい課だから、このひと部屋に100人はいるじゃないか。
 こんなにたくさんの人数がいたら、床が重みに耐えかねて、抜けてしまうぞ。
 こうしちゃいられない。逃げなきゃ。
 いや、今仕事中じゃないか。だめだだめだ。こんなこと考えていては。
 だいたい、現代の建築技術でそんなことがあり得るわけがないじゃないか。
 でも、こないだどっかの国で、大地震があったよなあ。巨大なビルがいくつも倒壊しているのを、テレビで観たなあ。
 このビルは耐震構造、万全なのか。
 ああ。ああ。だめだ。仕事が手につかない。

   *   *   *

 わたしはとんでもないことに気づいてしまいました。
 わたしの会社は、40階までが吹き抜けになっているのでございます。その吹き抜けを取り囲むようにして、いくつも部屋があります。
 でも、41階から100階までは、吹き抜けではなく、フロア全体が廊下と部屋で占められているのです。
 そうです、つまりわたしのいる1階受付は、フロアの中央にあるので、私の頭上は40階分の空間をおいて、60階分のフロアの直下なのです。
 階数にして60階上の高さが、この1階の天井なのです。

 あの天井が落ちてきたらどうしましょう…
 突然、60階分すべてのフロアが抜けて落下してきたら…
 60階分の重圧が、のしかかってきます。
 即死。即死ですわ。
 あ。41階以上は、うちの社長から重役から平社員まで、本社の社員2000人以上はおります。
 それだけの人数がいたら、床が重みに耐えかねて、抜け落ちてしまいます。
 こうしてはいられません。逃げなくては。
 いえ、今は仕事中です。こんなことを考えていてはいけません。
 そもそも、現代の建築技術でそんなことが考えられるはずがないじゃありませんか。
 でも…最近どこかの国で、大地震がありました。大きなビルがたくさん倒れているのを、テレビ中継で観ました。
 このビルは、本当に大丈夫なんでしょうか。
 もう、全く仕事が手につかないのです。


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