このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください

九州郵船
(厳原〜壱岐〜博多)

厳原港にて

 韓国からわずかに50㎞、「国境の島」の名称がまさにぴったりの、南北に長細い対馬。長崎県に属しているものの、壱岐とともに、福岡県との結びつきの方が強い場所でもある。この対馬の中心・厳原と博多を結ぶのがこの航路だ。
 対馬の北の玄関・上対馬町比田勝から厳原までは、直線距離にして約70㎞、国道を走ると100㎞近くある。対馬の北端では、中心地の厳原よりも、外国である韓国の釜山の方が距離的には近いのだ!それはさておき。
 厳原は、対馬4万5千人の中心地だけあって、市街地はかなりの賑わいを見せている。県の出先機関だけではなく、税務署や裁判所、自動車登録事務所まである。その気になれば、「対馬ナンバー」「厳原ナンバー」という「離島限定ナンバー」を作ってしまうことも出来るのだ!それはさておき。
ボーディングブリッジ 厳原港にて
 この航路では、ボーディング・ブリッジから乗船する。ちょうど飛行機に乗り込む時に使うあの蛇腹のついたヤツだ。何となく空港にいるような気分になってきてしまう。それはさておき。
 市街地の外れにある埠頭からフェリーは出航する。フェリー埠頭のすぐ横から、見慣れないフェリーが出航していった。博多と壱岐・対馬を結ぶ貨物フェリーらしい。我々ふぇりい倶楽部のバイブルにも載っていない、まさに幻の航路だ。対馬・壱岐の人の間ではけっこう知られているらしい。船体に行き先だけでなく、予約の電話番号までデカデカと書かれた印象的なフェリーだった。機会があれば一度利用してみたいものだ。
貨物フェリー 厳原港にて
 フェリーは厳原を離れ、対馬を後にする。山の上の方は、所々雲がたれ込めている。高い山が南北に長く連なっている様子が離れれば離れるほどはっきりと見て取れる。山の頂上近くの部分だけが島になったような形だ。
 船は緩やかに揺れている。外を見ると、時折白波がたっている。これだけ波が大きいと、フェリーと言えどもある程度の揺れはある。しかし、歩くのに少し苦労するくらいに揺れた船は久しぶりだ。度重なるフェリーの利用で船にはずいぶん慣れたつもりでいたが、この揺れには少々まいってしまった。まだまだ甘い。
 船内は比較的ガランとしていた。立ち歩いても揺れているだけなので、船室で横になる。横になると、船の揺れる様子が体全体から伝わってくる。時には左右に、ときには前後に。落ち着くということを全く知らないかのように、絶えず揺れ続けている。2千トン近いフェリーでこれなのだから、小さな漁船の揺れはどんなものなのだろうか。そんな船で毎日漁に出るというのは、いくら仕事だとはいえ大変だろう。それはさておき。
 ビールのおかげでしばらく眠ることが出来た。目を覚ますと、揺れがいつの間にかおさまっている。外に出てみると、天気は回復し、島影が間近に迫っていた。壱岐だ。山ばかりが目立つ対馬と違い、全体的に平坦な島だ。長崎県で最も大きな一枚田があるというのもうなずける。そう言えば、対馬は佐渡と奄美に次いで大きな島らしい。「離島」だからといって、小さな島だとばかり思っていてはいけないものだ。それはさておき。
 壱岐では団体が下船したが、それ以上に大きな団体が乗り込んできた。小学生を中心とした大団体だ。瞬く間に船内が喧噪の渦に巻き込まれる。もう眠気はなくなっていたので、デッキに一時避難する。島影が遠ざかるとまた、緩やかな揺れが船体を包み始めた。風が強いせいもあり、けっこう揺れる。壱岐が遠ざかるにつれて、反対側には九州の島影がかすかに見え始めてきた。壱岐と九州本土はかなり近いようだ。
 中に入ったりデッキに出たりを繰り返す。子供たちは相変わらずにぎやかだったが、人気のアニメが始まると、瞬く間にテレビの前に人だかりが出来た。人気アニメというのは、我々からは想像もできないような力を持っているらしい。それはさておき。
 アニメを見る気にもなれないので、また外に出る。左舷に島が見えてきた。どうやら福岡市に属する能古島らしい。博多はもう近い。しかしまた、空が黒くなってきた。雨が降らなければいいが。
 すっかり暗くなってきた午後8時過ぎに、博多港に到着。久しぶり(といっても2日ぶりだが)に見る大都会の夜の明かりは、妙に眩しく見えた。

日本よりも韓国に近い
防人の島 対馬
山猫や鹿に誘われて 旅に出る
国境の街へのあこがれと
まだ見ぬ動物たちへの期待を乗せて走る
博多〜壱岐・対馬フェリー


このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください