本州最北端の町、大間と函館を結ぶ航路。北海道に渡る航路の中では所要時間が最も短い航路である。自走で北海道を目指すことを主目的とし、フェリーに乗る時間と距離を最低限にしたい人にとってはおなじみの航路だろう。ところで、この航路に就航している船の名は「ばあゆ」であることを知っている人は多いだろうが、これがインドの風の神の名前であることを知っている人はどのくらいいるのだろうか。それはさておき。
真夜中に苫小牧を出るフェリーで帰る私にとって、今回このフェリーで北海道に渡るのは「帰り道」以外の何者でもない。しかし、自宅からの距離は走れば走るほど遠くなり、最高到達点は「苫小牧」ということになってしまう。東北と関東を結ぶフェリーがないために、このようなおかしな走り方をしなくてはならなくなってしまうのだった。帰るのに家とは逆方向へ向かわねばならないとは妙なことである。それはさておき。
大間と言えば連続TV小説「私の青空」。町の入り口には、「なずなのふるさと」と書いた看板が建っている。ゆかりの地には看板が立ち、町中のそこかしこに「なずな」のポスターが貼ってある。ドラマの効果とはこれほどなのか、とちょっとびっくりした私変衆長なのでした。
大間港からは、北海道の島影が大きく見える。遙か彼方の北の大地というイメージは全くない。ツーリングシーズンはすでに終わっており、旅するライダーの多くが南下を始めているこの時期、北へ向かう便に乗り込むバイクは数少ない。それでも私と共に3台のバイクが乗船した。他府県ナンバーの車もけっこう多い。キャンプの季節は終わってしまったとはいえ、まだまだ北海道は旅行シーズンなのだろうか。
港では、車を置いて乗船する人も目立った。大間、風間浦、大畑、佐井など下北北部では、買い物などで街へ出るときには必ずといっていいほど函館へ向かうらしい。そういえばドラマでも、「なずな」は船で大間を離れて函館へ向かい、そこから飛行機で東京へ向かっていた。車で3時間以上もかかる青森よりも、海を挟んで40Km程しかない函館の方が、身近な存在なのだろう。日帰りも十分に可能な範囲であり、中には遊びに行く人もいるのではないだろうか。
港から出ると、最初から大きく見えていた北海道が、見る見るうちに目前に迫ってくる。北海道へ渡ると言うよりは、瀬戸内で目の前に見える島にちょっと渡っていく、と言う感じだ。遠くに見えていた青森からのフェリーも、ぐんぐんと近づいてくる。その船体は、こちらに比べると二回りは大きい。やはり航行距離の差がそこに出ているのだろうか。
あまりにあっけなく函館に到着してしまった。午後1時過ぎ、帰るためにやってきた北の大地に上陸する。バイクで北海道に上陸するのはこれで8年連続8回目となった。しかし8回目の北海道は、滞在時間10時間弱の、ただ走り抜けるだけの北海道となるのでした。この日の真夜中、私変衆長は、大洗へ向かうフェリーに乗って、静かに北海道を離れたのでした……。
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