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まだまだ走るであります!





■もと東急5000系

 東急5000系といえば名車の誉れ高く、筆者がここで云々する必要すらないほどだ。ただ、大量に譲渡された長野電鉄時代を含め、筆者自身はその活躍を目の当たりにしたわけではなく、その価値を認められても、愛着を感じるほどの車両ではなかったりする。

熊本電鉄5000形
15年前の熊本電鉄5102
上熊本にて  平成11(1999)年撮影


 熊本電鉄を前回訪れたのは前世紀末の平成11(1999)年。15年を隔てて熊本を再訪する機会を得た。熊本電鉄に譲渡された5000系はいまだ現役、製造年は昭和32(1957)年と、車齢は還暦に近いわけで、近頃珍しいことだと、時間を割いてみることにした。

熊本電鉄5000形
草蒸すなかを走る熊本電鉄5101A
打越にて  平成26(2014)年撮影






■「ケロロ軍曹」とのコラボ

 再会して驚いたのが率直なところ。「アマガエル」と呼ばれていた事績に関連してか、アニメ「ケロロ軍曹」のラッピングが施されているではないか。このラッピング、筆者は迂闊にも知らなかった(平成24(2012)年10月13日より運行)。乗車した瞬間、驚きは更に倍増する。

御乗車感謝であります! 」

 なんと、TVで見ていたケロロ軍曹の声でアナウンスされるではないか。車両本体よりもむしろ、こちらの方が懐かしい。こどもが面白がって見ていた番組で、オープニング曲の歌詞含め、あまりにバカバカしい内容に筆者も笑わせてもらったものだ。

熊本電鉄5000形
このラッピング、「かわいい」とするべきか、「イタイ」と評すべきか?
池田にて  平成26(2014)年撮影


 それにしても熊本電鉄は勇気がある。この種のアナウンスには当然ながら賛否両論伴うはずで、特に地元利用者には違和感があるはずだ。通学時に参考書を読んでいる高校生や、「ケロロ軍曹」を知らない高齢者に向かって「ペコポン人諸君にお願いがあります!」とアナウンスしたところで、意味が通じるとは思えない。それが受け容れられているというのは、利用者の少なさと裏腹か?

熊本電鉄5000形
車内は閑散としている
北熊本行車内にて  平成26(2014)年撮影






■熊本電鉄の面白さ

 熊本電鉄の状況は、一瞥してすぐわかるほど厳しい。肉眼でわかるほどギクシャクしたレール、毎時二本の単行でさばける程度の利用者数、などなど。社会的使命を終えた鉄道として記述するも可だし、LRT化による飛躍の可能性を論じてもよいし、ローカル色を前面に出してルポ風にまとめる選択もありうる。

熊本電鉄5000形
草蒸すなかを走る熊本電鉄5101A
韓々坂にて  平成26(2014)年撮影


 筆者は現地を歩き回ることで、熊本電鉄への興味が湧いてきた。

  ●沿線の地理的条件
  ●鉄道事業の当初の目的
  ●頻繁な線路付替改良実施
  ●交通環境の激変
  ●結果として熊本都市圏輸送に対応し切れていない現状の厳しさ


 などの点が特に興味深い。今日の地形図を眺めてみても、旧線の痕跡がうっすら残っており、なぜ付替改良を行ったのか、それ以前になぜ元々の線形で線路を敷こうとしたのか、思案をめぐらせるだけで楽しくなってくる。歴史的・地理的アプローチの先に、将来交通論を掲げられるという意味では、ある鉄道路線と強い相似性も認められる。

熊本電鉄5000形
熊本電鉄では自転車の原姿持込が可能である
北熊本にて  平成26(2014)年撮影


 そもそもの成り立ち(鹿児島本線への貨物連絡輸送)、頻繁な線路改良実施の経緯と、それでも熊本都市圏輸送に対応し切れていない現状には、論じる意味も意義も価値もある。ただし、これらを記事にすると相当な時間を要することは確実で、躊躇せざるをえない。「ケロロ軍曹」ラッピング電車は今秋までの限定運行らしいから、まず写真を中心に紹介してみた次第。





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執筆備忘録

 訪問:平成26(2014)年初夏
 執筆:平成26(2014)年初冬





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