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意外な底流の変化?〜〜 781系「ライラック」「すずらん」引退





■781系「ライラック」の置換

 JR北海道はこのたび、 781系「ライラック」を置換する新車を導入のうえで、 785系「スーパーホワイトアロー」と名称を統一するため新名称を公募するという。JR北海道には旧い車両を大事に使いすぎる傾向があることがうかがえる。 781系の場合、とにかく無理矢理にでもあと約10年延命させて、北海道新幹線開業時に「スーパー白鳥」用の 789系を転用して「ライラック」「すずらん」用 781系をまとめて置換する、というシナリオがありえると想定することも、決して無理筋ではなかった。そうはならずに、老朽劣化がはっきりした現段階で置換が進むとことじたいは、慶賀すべきであろう。

781系
近年では珍しい 6両編成の 781系「ライラック」
平和にて 平成19(2007)年撮影

 以上の観点において、「ドラえもん海底列車」から 781系が引退したというのも、老朽劣化の進行と関連づけるべきなのかもしれない。その一方で、この五月連休から設定する臨時特急「旭山動物園号」になんと 183系 0番台を改装投入しようというのだから、JR北海道の意図にはわかりにくいところがあるのだが(札幌−旭川間において 183系 0番台は最も性能が劣る車両の一つでありダイヤ阻害要因となる可能性が高い)。

 この件は、老朽劣化が進んだ車両の置換と括ってしまう限り、ごく単純な話にすぎない。その一方で、状況証拠から按ずるに、JR北海道が営業戦略を修正してきたと読むことも可能である。自由席車主体の「スーパーホワイトアロー」「ライラック」を、指定席主体の列車に改組する意図がある、としては深読みにすぎるだろうか。

785系
既にデビュー後15年以上を経た 785系「スーパーホワイトアロー」
平和にて 平成19(2007)年撮影





■旅客流動の大きな変化

 北海道観光ではここ数年、大きな地殻変動が起こっている。旭山動物園が日本一の動員力を誇る、知名度と集客力がきわめて強い動物園に成長したことは、大きなインパクトがあると考えなければなるまい。従来の北海道観光においては、旭川にはめぼしい観光地がなく、専ら通過するだけというのが実状だった。しかし、旭山動物園を目的地とする観光需要の伸びに伴い、旭川は観光の一大拠点に躍進した。そのため、北海道観光の最大拠点札幌と旭川との間に太い流動が形成されつつある。

261系
6両編成に増結した 261系「スーパー宗谷」
白石にて 平成19(2007)年撮影

 観光客が増えれば、鉄道にも相応の準備が必要になってくる。パッケージツアーを設定するにあたり「スーパーホワイトアロー」「ライラック」では着席を必ずしも保証できず、かわって時間帯が良い列車の指定席車が混雑することになる。かくして「スーパー宗谷」指定席車が混雑し、指定席車 2両+自由席車 2両の 4両編成が所定であるところに指定席車 2両が増結され、稚内行の列車だというのに旭川で観光客が大量下車するという、本末転倒な事態が出来するのである。

261系
JR北海道の新エース 789系「スーパー白鳥」
木古内にて 平成17(2005)年撮影

  785系では指定席車(uシート)と自由席車の仕様をまったく変えているから、需要に応じて指定席車を増減させる措置をとるのは難しいだろう。これに対して、 789系は基本仕様が共通であるから、現在の「スーパー白鳥」がそうしているように、繁忙期に指定席車増結が容易に出来る列車になるのではないか。さらに新千歳空港駅は 6両編成が上限であり、札幌−新千歳空港間は特別料金不要の快速列車としている現状を鑑みれば、「答」はおよそ見えてくる。

781系
架線下にない 781系(今後こういう風景が増えるか?)
苗穂工場にて 平成18(2006)年撮影

 おそらく、現「スーパーホワイトアロー」は 785系そのまま、指定席車 1両+自由席車 4両の 5両編成という組み合わせで、かつ新千歳空港直通は現状維持となるではないか。現「ライラック」は 789系に置換のうえ、指定席車 1両+自由席車 3両の 4両編成を基本として、 2両単位で増結対応をとるのではないか。あるいは、繁忙期には指定席車と自由席車の比率を変えるとか。別のサプライズとしては、モノクラス編成をやめ(半室含む)グリーン車を連結する可能性も指摘できる。





■新情報による修正

 本稿については、プレスリリースを熟読してから書けばよかったと後悔しつつある今日この頃(苦笑)。知らぬ顔で修正してもいいけれど、これだけ綺麗に読み間違えるというのはある意味記念になるし、自戒を籠めて既に書いた文章はそのままで置いておく。以下、新情報。現「ライラック」は 5両編成を基本とするらしく、後述する電車特急の編成統一を考えれば、グリーン車の連結などありえない模様。


JR北海道・鉄道事業本部運輸車両の現況と課題

 (前略)
 また、L特急「ライラック」及び「すずらん」で使用している 781系車両については、車体の腐食や各種電気機器等の老朽・劣化が著しいことから新型車両に置き換えることとし、 789系特急電車35両の製作を進めています。
 これにより捻出された 785系特急電車については、札幌〜東室蘭間のL特急「すずらん」に投入することにより、 130km/h化による時分短縮及び「uシート」導入に伴う増売チャンスの拡大を図ることとしています。
 (後略)

  鉄道新報第 368号(平成19(2007)年 2月26日付)記事より



 ここで、現在のJR北海道電車特急の所要編成数は下記のとおりである。なお、SWAとはスーパーホワイトアローの略である。

   SWA  : 5両× 5編成
   ライラック: 4両× 4編成
   すずらん : 4両× 2編成

 これに対して、形式毎の車両編成は下記のとおり。

    789系: 5両× 7編成  予定
    785系: 5両× 7編成  うち 2編成は(3+2)両
    781系: 4両×10編成  ただし稼働編成のみ挙げた

 難しく考える必要などなかった。これは保有車両数を減じるという、極めてシンプルなコストダウン方策である。電車特急所要全11編成は、全て 5両編成に統一のうえ、 789系及び 785系の計14編成でまかなうことができる。現「SWA」と現「ライラック」を共通運用化し、旭川での折返時間を30分以内とすれば、所要10編成で間に合わせることも可能であろう。その場合、両形式とも 2編成の予備があることになり、必要かつ十分な余裕を持って運用できるものと想定される。

 ただし、現「SWA」と現「ライラック」を共通運用化してしまえば、新千歳空港でのホーム長の関係から、増結余地が事実上なくなってしまう。それゆえ共通運用化は行わず、折返時間短縮とダイヤパターン見直しだけで所要10編成に圧縮する展開もありうる。異常時対応がより容易になる等の利点もあるから、おそらく現「SWA」と現「ライラック」はそれぞれ独立した運用になる、と見る方が現実に近いかもしれない。

 筆者が増結余地を強調するのは、「スーパー宗谷 1号」の混雑を知る機会があったからである。同列車は札幌発 8時30分で、札幌市内の宿泊先から出発するにはちょうど手頃な時間帯だ。旭川着は 9時51分、旭川周辺で観光行動を開始するにはまさしく絶好の時刻といえよう。そんな列車に稚内行特急をあてはめるというのは、やはりミスマッチと評するしかないところだ。

 もっとも、指定席車の容量不足が問題になりそうなのは、この「スーパー宗谷 1号」と現「スーパーホワイトアロー 5号」くらいであろうから、たったそれだけの材料で「底流の変化」まで主張するのは些か行きすぎであったかもしれない。より現実的な線としては、「スーパー宗谷 1号」直前に、指定席車の容量を補完する現「ライラック」相当の列車を設定する、というところだろうか。否、それすら実は考えすぎで、「スーパー宗谷 1号」の現状がそのまま据え置かれる可能性もあるわけで、JR北海道の選択が注目される。





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