このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


独逸軍艦 機関部データ集

ここでは、1890年代から1940年代までのドイツ艦艇の機関部(主缶・主機)について、テクニカル・データの精確な分析を行い、発達の系譜を追ってみたいと思います。
典拠は下記文献で、要目や数値は原則的に建造当初のものを示します。
 蒸気タービン 改訂7版 内丸最一郎 丸善 1916
 蒸気タービン 再訂21版 内丸最一郎 丸善 1943
 艦船 実用機関術 訂正第8版 二瓶壽松 丸善 1922
 Conway's All the World's Fighting Ships 1860-1905. Conway, UK, 1979
 Conway's All the World's Fighting Ships 1906-1921. Conway, UK, 1985
 E. Groener, Die Deutschen Kreigsschiffe 1815-1945 Band 1. Lehmanns, Ger. 1966
 S. Breyer, Battleships and Battlecruisers. MacDonald and Jane, UK, 1973
 G. Koop / K-P. Schmolke, Die Panzerschiffe der Deutschland-Klasse, Bernard & Graefe, Ger.
 G. Koop / K-P. Schmolke, Von der Nassau zur Koenig-Klasse, Bernard & Graefe, Ger.
 G. Koop / K-P. Schmolke, Die Schlachtschiffe der Bismark-Klasse, Bernard & Graefe, Ger.
 G. Koop / K-P. Schmolke, Die Grossen Kreuzer Kaiserin Augusta bis Bluecher, Bernard & Graefe, Ger. 
 G. Koop / K-P. Schmolke, Kleine Kreuzer 1903-1918, Bernard & Graefe, Ger.
 「世界の艦船」各号
 その他
なお、ドイツ艦艇では、出力は仏馬力(メートル法、PSまたはCV)で表示されますので、ここでも仏馬力で記載します。
また、画像は全て当研究所の所蔵品です。

第1章 基本計画



装甲巡洋艦 シャルンホルストSMS Scharnhorst。シュルツ・ソーニクロフト式水管缶と4気筒直立3段膨張機関を搭載。


1-1.機関部の基本仕様


1-1-1. 戦艦

NameDVdQdBNbFPbENsRsds
Kaiser Friedrich III11,09717.513,000C+T8+4C123VTE34.5
Kaiser Wilhelm IIC+S8+4124.5,
4.2
Kaiser Wilhelm
der Grosse
C+Sd+S6+2+2134VTE4.5
Kaiser Karl der GrosseC+Sd+S6+2+214.254.5
Kaiser BarbarossaC+T6+613.54.5,
4.2
Wittelsbach11,77418.014,000C+S6+6C13.53VTE34.8,
4.5
WettinC+T6+613.5
ZaehringenC+S6+614
SchwabenC+S6+613.5
MecklenburgC+T6+613.5
Braunschweig13,20818.016,000C+S6+8C13.53VTE34.8
Deutschland13,19118.016,000C+S6+8C13.53VTE34.8
Hannover20,000S1215
Nassau18,87319.522,000S12C163VTE35.0
Helgoland22,80820.328,000S15C164VTE35.1
Kaiser24,72421.028,000S14M16DT33.75
Prinzregent Luidpold20.026,00024.0
Koenig25,79621.031,000S12+3C+O16DT33.8
Bayern28,60022,035,000S11+3C+O16DT33.87
Scharnhorst31,85929.0125,000W12O50AGT32654.45
Bismarck41,70029.0138,000W12O55AGT32654.85
Tirpitz42,900

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
D: 常備排水量 [t]、WW1後の建造艦は基準排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [PS]、レシプロ機関は指示馬力、タービン機関は軸馬力を示す
B: 主缶形式、Cは円缶、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Wはヴァーグナー式、小文字dは両面焚、無印は片面焚を示す
Nb: 主缶数
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
E: 主機形式、3VTEは3気筒直立3段膨張、4VTEは4気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、AGTはオール・ギヤード・タービンを示す
Ns: 推進軸数
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]、同一艦で2行記載は上段が翼軸(外舷軸)、下段が中央軸を示す

<解説>
表中、ヘルゴラント級までは石炭専焼缶・レシプロ機関、カイザー級からバイエルン級までが石炭・重油専焼缶併設・直結タービン(プリンツレーゲント・ルイトポルトのみ中央軸ディーゼル機関)、ビスマルク級が重油専焼缶・オール・ギヤード・タービンです。

主缶は、初期のものはソーニクロフト式水管缶、またはシュルツ・ソーニクロフト式水管缶と円缶を併用していました。ドイチュラント級からバイエルン級まではシュルツ・ソーニクロフト式が標準装備となり、ドイツでは海軍式と呼ばれていました。
1935年起工のシャルンホルスト級からはヴァーグナー式高温高圧缶を採用し、機関部の占有スペースおよび重量を削減しています。

ドイツ大型艦の主機は伝統的に3軸推進で、この理由は下記が考えられます。
 1. 直立3段膨張レシプロ機関の場合、2軸推進に比べて主機の高さを低減でき、防御が有利となる
 2. 直立3段膨張レシプロ機関の場合、主機が小型化でき、製造が容易となる
 3. 巡航時は中央軸のみ運転することにより、燃費が節約できる
 4. 1枚舵の場合、中央軸の直後に配置することにより、舵の効きが良くなり、旋回圏を小さくできる

表中、ヘルゴラント級とカイザー級がともに計画出力28,000PSとなっていますが、レシプロ主機の前者が指示馬力、タービン主機の後者が軸馬力で表示されていますので、後者は指示馬力では11%増の31,080PSに相当します。一部書物に引用されているカイザー級の計画出力31,000PSはここから来ているものと考えられます。


1-1-2. 大型巡洋艦/巡洋戦艦/重巡洋艦

NameDVdQdBNbFPbENsRsds
Kaiserin Augusta6,05621.012,000Cd8C123VTE34.5,
4.2
Victoria Louise5,66018.010,000D12C154VTE34.0,
3.5
HerthaBv1213
FreyaNi1813
Vineta5,885D1215
HansaBv1818
Fuerst Bismarck10,69018.013,500C+T8+4C124VTE34.8,
4.4
Prinz Heinrich8,88720.015,000D14C154VTE34.65,
4.28
Prinz Adalbert9,08720.016,200D14C13.53VTE34.8,
4.5
Friedrich Carl20.517,00014.25
Roon9,53321.019,000D16C15.53VTE34.8,
4.5
Scharnhorst11,61622.526,000S18C163VTE35.0,
4.7
Bluecher15,84224.834,000S18C164VTE35.6,
5.3
Von der Tann19,37024.842,000S18C16DT43.6
Moltke22,97925.552,000S24C16DT43.74
Seydlitz24,98826.567,000S27C16DT43.88
Derfflinger26,60026.563,000Sd14+4C+O16DT43.9
Luetzow26,741
Hindenburg26,94727.072,000Sd14+4C+O16DT44.0
(Mackensen)31,00027.090,000Sd12+4C+ODT42954.2
(Elsatz Yorck)33,50027.390,000Sd8+8C+ODTF42954.2
Bluecher14,05032.0132,000W12O70AGT33203.15
Admiral HipperLM80
Prinz Eugen14,240LM70
(Seydlitz)W60

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
D: 常備排水量 [t]、WW1後の建造艦は基準排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [PS]、レシプロ機関は指示馬力、タービン機関は軸馬力を示す
B: 主缶形式、Cは円缶、Dはデュール式、Bvはベルヴィール式、Niはニクローズ式、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Wはヴァーグナー式、LMはラ・モント式、小文字dは両面焚、無印は片面焚を示す
Nb: 主缶数
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
E: 主機形式、3VTEは3気筒直立3段膨張、4VTEは4気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、DTFはフェッティンガー式流体変速機付き直結タービン、AGTはオール・ギヤード・タービンを示す
Ns: 推進軸数
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]、同一艦で2行記載は上段が翼軸(外舷軸)、下段が中央軸を示す

<解説>
表中、ブリュッヒェルまでは石炭専焼缶・レシプロ機関、フォン・デア・タンからザイドリッツまでが石炭専焼缶・直結タービン、デアフリンガー級から未成に終わったヨルク代艦級までが石炭・重油専焼缶併設・直結タービン、ブリュッヒャー級が重油専焼缶・オール・ギヤード・タービンです。

主缶は、ベルヴィール式やニクローズ式との比較検討の結果、デュール式が一時期採用されたものの、シャルンホルスト級以降は戦艦と同様シュルツ・ソーニクロフト式が定着しました。
1935-36年起工のブリュッヒェル級の2隻にはラ・モント式高温高圧缶を採用し、機関部の占有スペースおよび重量を削減しています。

主機は、フォン・デア・タンからヨルク代艦級までの巡洋戦艦が大出力のため4軸推進としている他は、3軸推進を踏襲しています。

ここで、第1次大戦期の英国巡洋戦艦とドイツ巡洋戦艦の、機械室と缶室の総床面積を比較してみましょう。
 ライオン(プリンセス・ロイヤル同型) 機械室: 645m2、 缶室: 1,169m2
 タイガー 機械室: 647m2、 缶室: 1,105m2
 ザイドリッツ 機械室: 403m2、 缶室: 925m2
 ヒンデンブルク 機械室: 474m2、 缶室: 880m2
おしなべてドイツ艦は、英国艦と比べると、隔壁が多いのとあいまって、良く言えば緊密に、悪く言えば窮屈に出来ていたようです。
また、機関部の総重量では、
 プリンセス・ロイヤル 主機: 4,482T(うちタービン: 1,803T、主缶: 2,327T)、 補機: 491T
 デアフリンガー 主機: 2,919T(うちタービン: 1,146T、主缶: 1,443T)、 補機: 566T
となって、ドイツ艦のほうが約3割がた軽量となっていました。


1-1-3. 小型巡洋艦/軽巡洋艦

NameDVdQdBNbFPbENsRsds
Greiff2,05018.05,400Cd6C72HDE24.0
Irene4,27118.58,000Cd4C72HDE24.5
Gefion3,74619.09,000Cd6C123VTE24.2
Gazelle2,64320.06,000Ni8C134VTE23.5
Niobe21.58,000T815
Nymphe2,659Sd+S4+115
ThetisS915
Ariadne3VTE
Amazone2,6544VTE
Frauenlob2,706
Bremen3,27822.010,000S10C153VTE23.9
Luebeck22.511,500DT46702×1.1
Koenigsberg3,39023.012,000S11C163VTE24.0
Nuernberg3,469
Stettin3,48024.013,500DT41.9
Dresden3,66424.015,000S12C16DT45401.95
Emden23.513,5003VTE24.3
Kolberg4,36225.519,000S15C16DT45152.25
Mainz26.020,20023063.45
Coeln42.55
Augsburg25.519,00045402.25
Magdeburg4,57027.025,000S16C16DT32.75
Breslau42.47
Strassburg23.40
Stralsund32.75
Karlsruhe4,90027.026,000S+Sd12+2C+O16DT23.5
Graudentz4,91227.026,000S+Sd10+2C+O16DT24103.5
Pillau4,39027.530,000Yd6+4C+O18DT23.5
Wiesbaden5,18027.531,000S+Sd10+2C+O16DTF23.5
FrankfurtS+Sd12+2DT
Brummer4,38528.033,000Sd2+4C+O18DT23.2
Koenigsberg5,44027.531,000S+Sd10+2C+O16DT23.5
KarlsruhePGT23.5
Coeln5,62027.531,000S8+6C+O16PGT23.5
Emden5,60029.046,500S4+6C+O16AGT23.75
Koenigsberg6,65032.065,000
+1,800
Sd6O16AGT
+D
23604.1
Koeln3.7
Leipzig6,51532.060,000
+12,400
Sd8O16AGT
+D
3400
+600
3.7
Nuernberg6,520

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
D: 常備排水量 [t]、WW1後の建造艦は基準排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [PS]、レシプロ機関は指示馬力、タービン機関は軸馬力を示す
B: 主缶形式、Cは円缶、Niはニクローズ式、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Yはヤーロー式、小文字dは両面焚、無印は片面焚を示す
Nb: 主缶数
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
E: 主機形式、2HDEは2気筒横置2段膨張、3VTEは3気筒直立3段膨張、4VTEは4気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、DTFはフェッティンガー式流体変速機付き直結タービン、PGTはパーシャル・ギヤード・タービン、AGTはオール・ギヤード・タービン、Dはディーゼル(巡航用)を示す
Ns: 推進軸数
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]

<解説>
こちらはやや古いタイプの防禦巡洋艦を含んでおり、主機も初期のものは2気筒横置2段膨張のレシプロ機関が採用されました。
ゲフィオンからガツェレ級までは石炭専焼缶・レシプロ機関、ブレーメン級からドレスデン級までは各1隻にタービン機関を試用し、次のコルベルク級からは全艦にタービン機関が採用されています。第1次大戦後のエムデン級が石炭・重油専焼缶併設(のち全缶重油専焼に統一)オール・ギヤード・タービン、ケーニヒスベルク級からライプツィヒ級までが重油専焼缶・オール・ギヤード・タービンです。
なお、ブレーメン級のリューベックの推進器は各軸ともタンデムとされていました。

主缶はガツェレ級のテーティス以降はシュルツ・ソーニクロフト式が定着しました。なお、ピラウ級はロシア向けを第1次大戦の開戦直前に接収したもので、珍しくヤーロー式搭載のドイツ艦となりました。

表中の各艦は、上記のピラウ級と、第1次大戦開戦に伴って受注破棄となったロシア巡洋戦艦用主機を流用した高速機雷敷設艦ブルンマー級を除けば、いずれも使用圧力は16atu止まりでした。ライプツィヒ級(1928年起工)に続くM4級(1938年起工)からヴァーグナー式高温高圧缶を採用する計画であったものの、第2次大戦の勃発に伴って未成に終わっています。


1-1-4. 駆逐艦

NameDVdQdBNbFPbENsRsds
S90-10131027.05,900T3C15.53VTE22.25
S102-10731528.05,900T3C15.53VTE22.25
G108-11333028.06,600S3C163VTE22.18
S114-11931527.05,900T3C15.53VTE22.25
S120-12339127.56,400S3C15.53VTE22.25
S124No
S12535528.06,600S3C15.5DT31.4
S126-13137128.06,400S3C15.53VTE22.25
G132-13641228.07,000S3C17.53VTE22.3
G13758030.010,800S4C17DT31.6
S138-14953330.011,000S4C193VTE22.35
V150-16055830.010,900S4C193VTE22.4
V16159632.014,800S4C19DT22.1
V162-16463932.015,100S3+1C+O18.5DT22.25
S165-16866532.017,500S3+1C+O18.5DT22.15
G169-17267032.015,000S3+1C+O17DT31.65
G17370032.015,000S3+1C+O17.5DT22.25
G174-17570032.015,000S3+1C+O18DT22.25
S176-17956632.017,600S3+1C+O17DT22.25
V180-18565032.018,000S3+1C+O18.5DT22.2
V186-19166632.018,000S3+1C+O18.5DT22.25
G192-19766032.018,200S3+1C+O18.5DT22.25
V1-556932.017,000S3+1C+O18.5DT22.08
G7-1257332.016,000S3+1C+O18DT22.0
S13-2456832.515,700S3+1C+O18.5DT22.0
V25-3081233.523,500S3O18.5DT22.46
S31-3680233.524,000S3O18.5DT22.6
G37-4082234.024,000S+Sd2+1O18.5DT22.5
G41-42,
G85-95
96033.524,000S+Sd1+2O18DT22.46
V43-4585234.524,000S+Sd2+1O18.5DT22.50
V46DTF
V47-4892433.524,000S+Sd2+1O18.5DT22.46
V67-82,
V125-130
34.023,500S+Sd1+2O18DT2
V83-84DTF
S49-5280234.024,000S3O18.5DT22.5
S53-6691934.024,000S3O18.5DT22.6
S131-139S+Sd1+2O18.5DT2
G9699032.024,000S+Sd1+2O18DT22.6
H145-14734.0
B97-981,37436.540,000Sd4O17DT22.6
B109-11236.0Sd4O18.5DT2
V99-1001,35036.540,000Sd4O17DT22.6
G101-1041,11633.528,000Sd2O18DT22.6
B109-1121,37436.040,000Sd4O17DT22.6
S113,
V116
2,06036.045,000Sd4O18.5DT23.2
Moewe,
Grief
92433.023,000S+Sd1+2O18.5AGT22.35〜2.5
Wolf93334.023,000Sd3O18.5AGT22.35〜2.5
T1-4, T5-884434.528,000W4O70AGT25202.6
T9-10, T1-12839
T13-2185329,000
T22-361,29432.529,000W4O70AGT22.6〜2.65
Z1-42,23236.063,000W6O70AGT24273.25
Z5-82,171W70
Z9-132,270Bn110
Z14-162,239Bn110
Z17-222,411W70
Z23-24,
Z29-34,
Z37-42
2,603W70
Z25-272,543W70
Z282,596W70
Z35-36,
Z43
2,527W70

Name: 艦名または級名、斜体はWW1後の建造、()は未成を示す
D: 常備排水量 [t]、WW1後の建造艦は基準排水量 [T]
Vd: 計画速力 [kt]
Qd: 計画出力 [PS]、レシプロ機関は指示馬力、タービン機関は軸馬力を示す
B: 主缶形式、Tはソーニクロフト式、Sはシュルツ・ソーニクロフト式、Noはノルマン式、Wはヴァーグナー式、Bnはベンソン式、小文字dは両面焚、無印は片面焚を示す
Nb: 主缶数
F: 使用燃料、Cは石炭専焼、Mは炭油混焼、Oは重油専焼を示す
Pb: 主缶使用圧力 [atu, 1atu = 1.03kg/cm2]、太字は過熱式
E: 主機形式、3VTEは3気筒直立3段膨張、DTは直結タービン、DTFはフェッティンガー式流体変速機付き直結タービン、AGTはオール・ギヤード・タービンを示す
Ns: 推進軸数
Rs: 推進器回転数 [rpm]
ds: 推進器外径 [m]

<解説>
ドイツでは第1次大戦期には(大型)水雷艇と称していましたが、ここでは統一的に駆逐艦と呼ぶことにします。
S124級までは石炭専焼缶・レシプロ機関、S125, G137, V161でタービン機関を試用し、V162級からS13級までは石炭・重油専焼缶併設・直結タービン機関、次のV25級からは全缶を重油専焼としています。第1次大戦後のメーヴェから重油専焼・オール・ギヤード・タービン機関となりました。

V1〜V6, G7〜G12, S13〜S24の諸艇に関し、「艦船動員史」から、関連の記述を拾ってみましょう。
「1911〜1913建艦年度に於て建造せられたるV1〜V6, G7〜G12, S13〜S24の諸艇は524Tの排水量を有したるに過ぎず。此等の諸艇は排水量を減少したる関係上艦の全長を若干減じ、操縦やや容易となりたれども、艦内頗る窮屈にして耐波力小となれり。加之空積を極力利用したる関係上、燃料の格納位置頗る不便となり、延いては荒天の際石炭を缶前に運搬すること不可能になる状態に陥りたり。蓋し(イ)人員不足勝にして、(ロ)艇の後部より缶前まで石炭を繰るの要ありたればなり。」(P73)

また、V25〜30級に関して同著は、
「先に言及せるV1〜S24は依然として炭油併用式なりしが、1913年以降の建造にかかる諸艇(但しA級艇の一部を除く)は凡て重油専焼缶を有せり。其の最初の一列たるV25〜V30の諸艇は初めて800噸の排水量を有し8.8糎砲3門、50糎発射管6門を搭載せり。実戦の経験は、此等の諸艇こそ初めて充分なる性能を備ふるものなることを証示せり。」(P74)
つまり、当のドイツが、S24以前の駆逐艦は実用性不十分であったと公言しているわけです。

表中、ヴォルフ級(1927年起工)までは使用圧力が18.5atu止まりでしたが、1937年より起工のT1-4級からはヴァーグナー式やベンソン式といった高温高圧缶の採用により、機関部重量当り最大出力を増大しています。


次のページ

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください