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明治・大正期
日本軍艦 機関部データ集

第3章 主機(レシプロ機関)



装甲巡洋艦 吾妻。高中低圧各シリンダに2基ずつのピストン弁を配設。


3-2.基本構成


3-2-1. 戦艦

NameMan'rACOCdegSV2rLL/r
HIL
富士H&TH-I-LH-I-L120-120-120FFF114322864.0
敷島H&TH-I-LH-I-L120-120-120PFF121924384.0
朝日JBH-I-LH-I-L120-120-120PPF121924384.0
三笠ViH-I-LH-L-I120-120-120PPF121924384.0
DuncanTIWFL-H-I-ALH-I-FL-ALPPF1219
香取ViFL-H-I-ALPPF121924384.0
鹿島H&TFL-H-I-ALH-I-FL-AL106.67-93.33-70-90P2PF121924384.0
薩摩YkFL-H-I-ALH-I-FL-AL106-63-98-93PPF1219

Name: 艦名
Man'r: 主機製造所、H&T: ハンフリーズ&テナント(英)、JB: ジョン・ブラウン(英)、Vi: ヴィッカーズ(英)、TIW: テームズ鉄工所(英)、Yk: 横須賀
AC: シリンダ配列、左が艦首側、H: 高圧、I: 中圧、FL: 低圧艦首側、AL: 低圧艦尾側
OC: シリンダ作動順序
deg: クランク位相角、シリンダ作動順
SV: 滑弁形式、P: ピストン(筒形)弁、F: 平形弁
2r: クランク円直径 [mm]、シリンダ行程と同一
L: 連接棒長 [mm]
L/r: 連接棒長/クランク円半径比

<解説>
シリンダ配列は、3気筒式では例外無く缶室に近い艦首側から高圧・中圧・低圧の順になっています。4気筒式では何種類かの配列が有りますが、高圧・中圧の2者に限っては艦首側から高圧・中圧の順になります。

シリンダ作動順序は、3気筒式では原則的に高圧・中圧・低圧の順ですが、三笠は例外的に高圧・低圧・中圧の順であり、推進軸回転方向の指示不徹底または途中変更の可能性も有ります。
一方、4気筒式では2気筒ずつ前後2群に分けた場合、同じ群の隣接するピストンが互いに反対方向に動いて往復部質量による不釣合力がなるべく打ち消されるように決められます。


英国戦艦ダンカンDuncanの左舷主機(模型)。中央の大きな円形ハンドルは正逆転の切換と締切cutoffの調節を司る。その上方は高圧気筒への給気口。


クランク位相角は、3気筒式では基本的に3等分(120度)ですが、4気筒式では往復部(各気筒のピストン、ピストン棒、クロスヘッド、コネクティング・ロッドの一部、滑り弁、加減リンク、偏心棒の一部)の釣合いを勘案して4等分(90度)より若干ずらして設定されます。これはまた、2気筒が同時に上下の死点にかからないような配慮でもあります。

各シリンダの給・排気を司る滑弁は、ピストン(筒形)弁および平形弁が用いられ、後者は多くが背面にバランス・プレートを設けて弁座への押圧を低減した釣合弁(バランスド・バルブ)としていますが、初圧の増大に伴って次第にピストン弁に取って代わられました。なお、表中"2P"はシリンダ1基に対して2基のピストン弁を備えたもので、通常は横梁で結ばれたピストン弁2基を弁装置1組で駆動しています。

連接棒長/クランク円半径比は、舶用のレシプロ主機では4.0とするのが一般的です。


3-2-2. 装甲巡洋艦

NameMan'rACOCdegSV2rLL/r
HIL
浅間・常磐H&TH-I-FL-ALH-AL-I-FL60-110-92-98PFF99119814.0
出雲・磐手H&TH-I-FL-ALH-AL-I-FL75-103-88-94PFF99119814.0
八雲StH-I-FL-ALP2PF1000
Liberte(仏戦艦)LoH-I-FL-ALP2P2P1150
吾妻LoH-I-FL-AL2P2P2P1050
Giuseppe GaribaldiAnH-I-LPFF
春日・日進AnH-I-LPFF1170
筑波・生駒KuFL-H-I-ALP2PF99121344.3
鞍馬YkFL-H-I-ALP2PF99121344.3

Name: 艦名
Man'r: 主機製造所、H&T: ハンフリーズ&テナント(英)、St: シュテティーン(独)、Lo: ロワール(仏)、An: アンサルド(伊)、Yk: 横須賀、Ku: 呉
AC: シリンダ配列、左が艦首側、H: 高圧、I: 中圧、FL: 低圧艦首側、AL: 低圧艦尾側
OC: シリンダ作動順序
deg: クランク位相角、シリンダ作動順
SV: 滑弁形式、P: ピストン(筒形)弁、F: 平形弁
2r: クランク円直径 [mm]、シリンダ行程と同一
L: 連接棒長 [mm]
L/r: 連接棒長/クランク円半径比

<解説>
4気筒式のシリンダ配列は、外国建造艦では艦首側から高圧・中圧・低圧2基の順になっていますが、国産の筑波級では香取級と同様に低圧シリンダを両端に離した配列としています。
吾妻の滑弁は各シリンダに対して2基ずつのピストン弁を備えており、弁は各シリンダに対して通常の首尾線方向でなく、舷側方向に位置しています。弁装置は、同じ建造所の仏戦艦「リベルテ」用4気筒3段膨張機関(高圧のみピストン弁1基、他は2基ずつ)との類似性より見て、通常のスティヴンソン式でなく、ラジアル・ギヤの一種のマーシャル式で、ピストン弁1基ずつの合計8組装備であったと考えられます。


3-2-3. 防禦巡洋艦

NameMan'rACOCdegSV2rLL/r
HIL
和泉HL-
浪速HL-
千代田H-I-L
松島H-I-LPPF
秋津洲YkPP2P
須磨YkH-I-LP2P2F72014003.9
明石YkH-I-LH-I-L120-120-120PF2F750
吉野H&T838
高砂ArH-I-FL-ALPFF838
笠置CH-I-FL-ALH-FL-I-AL90-90-90-90PFF83816764.0
千歳UIWH-I-FL-ALH-FL-I-AL90-90-90-90PFF91418294.0
新高YkFL-H-I-ALH-I-FL-AL90-90-90-90PFF76215244.0
音羽YkH-FL-AL-IH-I-FL-AL68-93-106-93PFF76215244.0
利根YkH-I-FL-ALH-FL-I-ALPFF838

Name: 艦名または級名
Man'r: 主機製造所、HL: ホーソン・レスリー(英)、Yk: 横須賀、H&T: ハンフリーズ&テナント(英)、Ar: アームストロング(英)、C: クランプ(米)、UIW: ユニオン鉄工所(米)
AC: シリンダ配列、左が艦首側、H: 高圧、I: 中圧、FL: 低圧艦首側、AL: 低圧艦尾側
OC: シリンダ作動順序
deg: クランク位相角、シリンダ作動順
SV: 滑り弁形式、P: ピストン(筒形)弁、F: 平形弁
2r: クランク円直径 [mm]、シリンダ行程と同一
L: 連接棒長 [mm]
L/r: 連接棒長/クランク円半径比

<解説>
和泉と浪速型の弁装置は、ラジアル・ギヤの1種のマーシャル式でした。松島型と秋津洲も同様と考えられます。千代田と須磨以降の直立三段膨張機関は、スティヴンソン式です。

4気筒式のシリンダ配列は、外国建造艦ではやはり艦首側から高圧・中圧・低圧2基の順になっていますが、国産の新高級では低圧シリンダを両端に離し、また音羽では逆に高圧・中圧両シリンダを両端に離した配列としています。

クランク位相角は、米国建造の笠置・千歳が正90度とし、国産初の4気筒式であった新高もこれに倣っています。米国式はクランク位相角に端数を付けないのが主流であったようです。
音羽では高圧・中圧両シリンダ間を離していますが、これは途中の蒸気管が長いため、蒸気が膨張途中で冷却しやすく、その分熱効率が低下してしまうので、本艦以外には採用されていないようです。なお、同艦の中圧・低圧両シリンダの滑り弁は、国産初の三口(トリプル・ポート)弁でした。

須磨・明石の低圧シリンダの滑り弁は、シリンダの前後両側面に平形弁を1基ずつ対向して設けた特異な配置で、弁装置は別々か連動か、これも興味が持たれます。


3-2-4. 駆逐艦

NameMan'rACOCdegPV2rLL/r
HIL
東雲ThH-I-FL-ALH-AL-I-FL113.33-90-66.67-90PPF45711435.0
雷・暁YaFL-H-I-ALPPP457
白雲Th483
春雨YaFL-H-I-ALH-AL-FL-I94.5-70.75-89.25-105.5PPP45710164.5
神風
457
457

Name: 艦名または級名
Man'r: 主機製造所、Th: ソーニクロフト(英)、Ya: ヤーロー(英)、特記以外は国産
AC: シリンダ配列、左が艦首側、H: 高圧、I: 中圧、FL: 低圧艦首側、AL: 低圧艦尾側
OC: シリンダ作動順序
deg: クランク位相角、シリンダ作動順
SV: 滑り弁形式、P: ピストン(筒形)弁、F: 平形弁
2r: クランク円直径 [mm]、シリンダ行程と同一
L: 連接棒長 [mm]
L/r: 連接棒長/クランク円半径比

<解説>
ソーニクロフト式の東雲級とヤーロー式の雷・暁・春雨の各級とでシリンダ配列・シリンダ作動順序・ クランク位相角・滑り弁形式に差異が有ります。クランク軸回転数が大きいだけに、往復部の釣合いや蒸気の流動性などが相当シビアに効いてくるものと考えられ、利害得失の比較に興味が持たれます。

連接棒長/クランク円半径比は、4.5〜5.0とやや大きくなっていますが、これは連接棒の傾きを小さくすることで横向きのベクトルを低減し、クロスヘッドとスライドバー(滑り棒)との接触圧を軽減して摩耗や帯熱を抑える意図と考えられます。


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