このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


ドッガー・バンク海戦に見る機関部の実相

2-2. 軽巡洋艦

2-2-1. 英国軽巡洋艦


サウサンプトンSouthampton
(チャタム級 または タウン級)
 5,400T, ? rpm, 25,000shp, 25.5kts
 ? T, ? rpm, 26,006shp, 26.5kts
 ブラウン・カーチス式タービン、2基、2軸
 ヤーロー式水管缶12基(炭油混焼)
本級では本艦のみ主機がブラウン・カーチス式、2基、2軸で、他はパーソンズ式2軸並列タービン、2基、4軸です。パーソンズ式は段落当りの圧力降下が小さいので、段数が多くなり、通常は2軸並列としますが、カーチス式はよほど大出力でなければ1軸で全圧を吸収できるので、左右2軸で済ませられるわけです。ただし、起源が米国(ゼネラル・エレクトリック社)ですから、英国ではパーソンズ卿の手前も有って、当初は採用をためらったかも知れません。既述のタイガーもそうでしたが、本艦もカーチス式の英国におけるライセンシーであり、ブラウン・カーチス式の考案元である、ジョン・ブラウン社の建造でした。
缶室は3室で、主缶を4基ずつ収めています。各缶室の配置要領は、先行のブリストル級を継承しています。


HMS Southampton.


バーミンガムBirmingham
ノッティンガムNottingham
ローズトフトLowestoft

(バーミンガム級 または タウン級)
 5,440T, ? rpm, 25,000shp, 25.5kts
 公試結果 不詳
 パーソンズ式2軸並列タービン、2基、4軸
 ヤーロー式水管缶12基(炭油混焼)
本級はこと機関部に関しては、前級とあまり差が無いようです。
タウン級(ブリストル級、ウェイマス級、チャタム級、バーミンガム級の総称)は、主として植民地警護の任務を想定した遣外型のため、速力についてはほとんど向上が見られず、自国の巡洋戦艦や駆逐艦はもとより、対抗するドイツ軽巡洋艦にすら凌駕されてしまったため、次のアレスーサ級の登場となっています。


HMS Lowestoft.


アレスーサ級
 3,750T, ? rpm, 40,000shp, 28.5kts
 アレスーサArethusa公試結果 不詳
 オーロラAurora? T, ? rpm, 30,417shp, 27.4kts
 アンドーンテッドUndaunted? T, ? rpm, 32,161shp, 27.5kts
 ブラウン・カーチス式2軸並列タービン、2基、4軸(アレスーサ、アンドーンテッド)
 パーソンズ式2軸並列タービン、2基、4軸(上記以外の6隻)
 ヤーロー式水管缶8基(重油専焼)、主缶使用圧力: 235psi (16.5kg/cm2)
本級は艦隊用の偵察型の性格が明確で、前級より3ノットの優速を得るため、重量当り出力の大きな駆逐艦型の主機と主缶を採用しています。
主機はブラウン・カーチス式ですが、大出力のため2軸並列、2基、4軸となっています。
主缶は全部重油専焼として入熱を増大するとともに、水管は小径(1-3/4in=44.5mm以下)として本数を増加し、占有容積の割に伝熱面積を稼ぎ、力量を増大しています。
缶室は2室で、主缶を4基ずつ収め、煙突は3本で、煙路導設は前から主缶2基、4基、2基に分けています。
なお、本級は公試では各艦とも全力を発揮するに至りませんでした。


HMS Arethusa.


2-2-2. ドイツ軽巡洋艦

コルベルクKolberg
(コルベルク級)
 4,362T, 515rpm, 19,000shp, 25.5kts
 4,915T, 515rpm, 30,400shp, 26.3kts
 メルムス&プェニンガー式2軸並列タービン、2基、4軸
 推進器外径: 2.55m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶15基(石炭専焼)、主缶使用圧力: 16kg/cm2
本級は、先行のドレスデン級より常備排水量を約700トン、機関出力を4,000〜5,000shp増大し、かつ全艦とも主機をタービン機関としたもので、ドイツ軽巡洋艦の発達史上、重要な位置を占めるものです。
ちなみに本級の他の3隻は、
 マインツ: AEGカーチス式タービン、2基、2軸、推進器外径: 3.45m
 ケルン: ゲルマニア式2軸並列タービン、2基、4軸、推進器外径: 2.55m
 アウグスブルク: パーソンズ式2軸並列タービン、2基、4軸、推進器外径: 2.55m
となっていますが、これは各建造所が保有するライセンスの関係でしょう。
機械室は前後2室で、2軸艦は右舷機と左舷機とに、また4軸艦は翼軸と内側軸とに分けて収めており、以下の各級も同様です。
缶室は4室で、艦尾寄りから主缶をそれぞれ4基、4基、4基、3基収めており、各缶室は中央が焚火室で、これに前後の焚口が向かい合っており、主缶の背面はすぐ横隔壁です。
煙突は3本で、いずれも横隔壁の上にまたがっており、煙路導設は艦尾寄りから主缶6基、4基、5基に分け、第1煙突は横長の小判形断面で、円形断面の第2・第3煙突よりも大断面となっています。


SMS Coeln. (Auther's Collection)


シュトラールズントStralsund
(マグデブルク級)
 4,570T, ? rpm, 25,000shp, 27.0kts
 5,587T, 442rpm, 33,742shp, 28.2kts
 ベルクマン式タービン、3基、3軸
 推進器外径: 2.75m
 シュルツ・ソーニクロフト式水管缶16基(炭油混焼)、主缶使用圧力: 16kg/cm2
ちなみに本級の他の3隻の主機は、
 マグデブルク: 本艦と同様
 ブレスラウ: AEGフルカン式2軸並列タービン、2基、4軸、推進器外径: 2.47m
 シュトラスブルク: 海軍式タービン、2基、2軸、推進器外径: 3.40m
となっていました。
本級はコルベルク級より速力増大のため、缶室を5室設け、艦尾寄りから主缶をそれぞれ2基、4基、4基、4基、2基収めています。第2〜第4缶室は中央が焚火室で、これに前後の焚口が向かい合っています。第1・第5の両端缶室はそれぞれ艦尾寄りと艦首寄りが焚火室です。各缶室とも主缶の背面はすぐ横隔壁です。
煙突は4本で、いずれも横隔壁の上にまたがっており、煙路導設は主缶4基ずつです。


SMS Magdeburg. (Auther's Collection)


ロストックRostock
(カールスルーエ級)
 4,900T, ? rpm, 26,000shp, 27.0kts
 6,191T, 449rpm, 43,628shp, 29.3kts
 海軍式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 3.5m
 シュルツ・ソーニクロフト式片面焚水管缶12基(石炭専焼)、同両面焚水管缶2基(重油専焼)、主缶使用圧力: 16kg/cm2
缶室は5室で、主缶配置は艦尾寄りからそれぞれ2基、4基、4基、2基(以上片面焚)、2基(両面焚)と推測されます。
煙突は4本で、第1〜第3煙突は横隔壁の上にまたがっており、また第4煙突は第5缶室のほぼ中央に立てられています。煙路導設は艦尾寄りからそれぞれ主缶4基、4基、4基(以上片面焚)、2基(両面焚)で、缶の力量が両面焚きは片面焚きのほぼ2倍であることより、第4煙突は他の3本と太さがほぼ等しくなっています。


SMS Rostock. (Auther's Collection)


グラウデンツGraudenz

(グラウデンツ級)
 4,912T, 410rpm, 26,000shp, 27.0kts
 公試結果 不詳
 海軍式タービン、2基、2軸
 推進器外径: 3.5m
 シュルツ・ソーニクロフト式片面焚水管缶10基(石炭専焼)、同両面焚水管缶2基(重油専焼)、主缶使用圧力: 16kg/cm2
缶室は4室で、主缶配置は艦尾寄りからそれぞれ2基、4基、4基(以上片面焚)、2基(両面焚)です。
煙突は3本で、いずれも横隔壁の上にまたがっており、煙路導設は第1・第2煙突が片面焚4基ずつ、第3煙突が片面焚・両面焚各2基です。第1・第2煙突は小判形断面、第3煙突は円形断面で、断面積は前者の約1.5倍有り、付け根が艦首側に伸びています。


SMS Graudenz.


全般にドイツ艦艇は、満載排水量をもって公試排水量としていたようであり、特に巡洋戦艦や軽巡洋艦などは公試において大分過負荷を掛けていたことが、黒煙濛々の公試写真からも窺えます。


次のページ

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください