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LEDの基礎知識

2004/2/5 作成
2005/11/17 更新

 
・イントロダクション
 LEDは省電力、長寿命などの特徴を持つ発光素子ですが、その鉄道模型への使用に当たってはいろいろな点で気をつけなくてはいけません。

 このページでは「LEDとは」みたいな話は極力避け、実際に使う上での注意点や具体的な使用法について説明したいと思います。
 

・LEDとは
 とはいえ、これから後の説明のために「LEDとは」の説明は一応必要です。ありきたりな「一般的には〜」説明ではつまらないので、ある具体的なLEDを使って説明してみます。
 ここで取り上げたのは1個10円とかで買えそうな緑色LEDであるagilentのHLMP-3507です。はっきり言って、適当に選びましたw 以下、 PDFカタログ からの引用です(一部見やすくする変更はしました)。
 

セレクション・ガイド(TA=25℃)
型名
発光色
パッケージ・特長
ly(mcd)
Min. Typ. 条件
1/2(°)
外形図
HLMP-3507
5mmφ緑色拡散
4.2 5.2 IF=10mA
60
C

 セレクション・ガイドはシンプルにその製品の特徴を示したものです。型名、発光色、外形図はそのままです(w 他の3つはLEDの特徴を読み取る上で重要です。

-パッケージ・特長
 パッケージとは製品の外見的な特長です。この場合、「太さが5mm、頭の部分の樹脂は緑色、光は散らす(拡散)ように設計してあります」ということ
-ly(mcd)
 LEDの明るさです。(mcd)は明るさの単位カンデラの1/1000であるミリカンデラ単位だということを示します。この場合、「IF(順方向に流す電流のこと)が10mAのとき、ハズレ(wの製品でも4.2ミリカンデラ、平均的な製品なら5.2ミリカンデラの明るさがあります」ということ。LEDは流す電流の量で明るさが変わります。
-2θ1/2(°)
 明かりの広がり方の特性を示したものです。“2θ1/2(°)”は「真正面からθ°の角度ずれた角度で見ると、真正面から見たときと比べた明るさが半分になります」ということ。この場合「真正面から30°(2θが60°なので)で明るさ半分となる」。
 

電気的/光学的特性(TA=25℃)
項目
記号
型名
Min.
Typ.
Max.
単位
条件
順電圧
VF
HLMP-3507
2.1
2.7
V
IF=10mA
 
 この表にはもっといろいろな項目がありますが、最も(アマチュア的に)重要なのは順電圧(VF)です。順電圧とは、LEDのアノード・カソードの間に順電流IF(条件より10mAの時)を流したときに生じる電圧降下です。
 VFは抵抗で電流制限するときに、その抵抗値を決定するのに使用します。VFはLEDの種類によって変わりますが、2V〜4Vくらいまでのものが多いと思います。白色LEDは若干高め(3.6V程度)のものが多いです。

絶対最大定格(TA=25℃)
項目
HLMP-3507
単位
ピーク順電流
90
mA
平均順電流
25
mA
DC順電流
30
mA
瞬時最大電流
500
mA
逆電圧(IR=100μA)
5
V
保存温度範囲
-55〜+100
動作温度範囲
-55〜+100
はんだ付け温度
(本体から1.6mmの位置)
260℃、5秒間

 絶対最大定格として書かれている事柄はLEDを壊さないために守らなければならない事柄です。
 電流についていくつかの項目がありますが、一般的な動作時(普通に光らせるとき)にはDC順電流を守るのが鉄則と言えます。まぁ、ほとんどのLEDは30mA程度までですが、30mAも流さなくても十分に明るい場合がほとんどです。ピーク順電流や瞬時最大電流は「LEDが壊れてしまうかどうか」という話と思ってください。
 逆電圧は電流の向きによって付いたり消したりするヘッドライト/テールライトでは切実です。LEDに逆電圧が12V直接かからないようにしなければなりません。最大逆電圧はだいたい5V程度のものが多いです。

 とはいえ、LEDの寿命(明るさが半分になるまで数万時間)まで鉄道模型で使うことはまずないでしょうから、少しくらいなら定格を破ってもあんまり支障はないでしょう。もちろん、保証はしませんが^^ 10円くらいで買える保護用のダイオードはケチらないほうがいいでしょう。


・電流制限

 先にも述べたように、LEDには流れる電流を制限する必要があります。その方法はいくつかありますが、代表的なものを挙げると

・抵抗
・定電流ダイオード(CRD)
・その他の定電流回路など

の3つと言ってよいと思います。

‐抵抗
 抵抗は最もコストが安く、決まった電圧の電源(例えば9Vの乾電池)で光らせる場合は最適と言えるでしょう。可変電圧電源(例えばパワーパック)の場合は、最大電圧(Nゲージ用パワーパックならば一般的に12V)を考えて抵抗値を決定します。 鉄道模型で使う場合は1個のLEDに抵抗で電流制限する場合、400〜500Ω程度が無難だと思います。仮にLEDのVFが2Vで、IFとして20mA(0.02A)流したいとすると、次のようになります。

  R = (最大電源電圧 - VF) / IF= (12 - 2) / 0.02 = 500(Ω)

 ただし欠点として、電源電圧の上下に伴いLEDに流れる電流が変わってしまうので、速度の変化に伴い、明るさが変わってしまうことが挙げられます。
 KATOのLEDヘッドライト/テールライトにも使われています。

‐定電流ダイオード(CRD)
 CRDは「電圧が変動しても回路に流れる電流を一定に保つ」というLEDにとっては非常に都合の良い部品です。今(2004/2現在)では15mAの製品が一番容量が大きいものです。その下に12mA, 10mA …と製品があるので、明るすぎる場合など、細かく明るさを調整することも可能です。また、どうしても30mAなど流したいときは、15mAのものを並列に接続することで対応できます。
 抵抗に比べると若干値段が高く、1個数十円程度(秋月で50円)します。
 特性としては、ある程度の電圧(5V程度)がかからないと規定の電流値になりません。まぁ、それ以下でも電圧に比例する感じで電流は流れるので、あまり困ることはありません。なお、逆電圧をかけると一般のダイオードの順方向特性と似た挙動をします。つまり「逆方向は電気ダダ流れ」です(w

‐定電流回路
 電源ICやトランジスタなどを使用して、より高度な安定性を持つ定電流回路を構成する方法もあります。温度変化や電源電圧の変動に対し、精度の高い定電流性を持ちます。
 鉄道模型にはやや大げさすぎる感じ(そして高い、部品数が多い)もあるので、オーディオQさんのところの「 LED実験室:LEDの自己発熱による電圧変化を測定してみよう! 」でも見てください(なげやり)(w
 さらに高度で便利なパーツとして、「LEDドライバ」というものがあります。例えば LINEAR TECHNOLOGYLT3465 などは携帯電話やデジカメで白色LEDを使う用途として作られていますが、電源電圧が2.7V〜16Vの範囲で安定して白色LEDを光らせることができます。一度使ってみたい…(入るのか?)
 

・逆電圧
 進行方向がどちらでも、整流して付きっぱなしにする室内灯はともかく、ヘッドライト/テールライトではヘッドライトLEDが光っているときには、テールライトLEDに(またはその逆)逆電圧がかかるということになります。
 抵抗による電流制限でうれしいのは、部品に極性がないことです。下の回路を見てください。


 

 これはヘッドライト/テールライトに使うような回路ですが、実にシンプルな上、逆電圧の点でも問題ありません。というのは、ヘッドライトのLEDが光っているとき、テールライトLEDにかかる逆電圧はヘッドライトLEDのVFということになります(またはその逆)。VFは一般的に3.5Vくらいまでですから、一般的なLEDの逆電圧の最大定格5Vに対して余裕があります。

 ヘッドライトあるいはテールライトしかない場合(例えば機関車)ではどうしましょう? この場合は存在しないヘッドライト(テールライト)LEDの代わりに並列逆向き普通のダイオードをつなぐ(A)か、直列に普通のダイオードをつなげましょう(B)。あるいはテールライトの代わりに、反対側のヘッドライトと結合することで保護する(C)。(C)の方法はKATOの機関車でも使われていますね。
 この際の「普通のダイオード」というのは1S1588などの小電力整流ダイオードでOKです。
 しかし、LEDの逆電圧に対する耐性は規格よりかなり高いようで、KATOの車両(例えばレインボー)などでは抵抗とLEDを直列に接続しただけですね。

(A) (B)

(C)
 

 CRDの時はどうなるでしょうか? 下の図の回路はOKなのでしょうか? CRDは「逆方向はダダ流れ」なのでLEDに逆電圧がかかりそうです。ただ、実績として使用してすぐに目に見える問題はないようです。規定の寿命よりは短くなるかもしれませんが…


 

 心配な人はこのようにすればいいでしょう(うちではこのようにしています)。


 

 ヘッドライト(あるいはテールライト)しかない場合はこのようにします。


 

・室内灯
 室内灯はブリッジ接続したダイオードとCRD, LEDの組み合わせで構成します(上下の回路は電気的には同じ)。図ではCRDを使っていますが、もちろん抵抗でもかまいません。


 

 ブリッジ接続では、レールにかかっている電圧に対して、ダイオード2個分のVFが差し引かれた電圧がCRDとLEDにかかることになります。一般的なブリッジダイオードにはシリコンダイオードが使われていますから、VFは0.7Vくらいあります。となると、2個分で1.4V差し引かれてしまうわけです。
 ここで、VFの低いダイオードであるショットキーバリアダイオード(SBD)を使用すると、VFは0.2〜0.4Vであるので、2個分でも0.4〜0.8Vとなり、1V近い差が出ます。
 この差は低電圧(=低速)時の室内灯の光り方に大きく影響します。実験した例を「 白色LED室内灯への道 」で紹介しました。

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