このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


燃えろUSA!! (1/7)

1. 出発前夜 通勤片道1時間20分。  読書にはもってこいの時間だ。  「旅に出たい・・・」  毎日が終電の私にはそんな呟きすら夢の中。読書なんかに費やす通勤時間では  なかった。ZZZ...。  しかし一寸先は...、思わぬところから「旅立ち」願望が叶えられる事となる。  「USでこんなセミナーがあるんだけど、行ってみない?」  1995年夏、Mr.Beenに良く似た上司はそう言った。
2. 成田にて この物語は私が初めてのUS出張に出かけたときの顛末記である。  仕事の合間を縫いパスポートと国際免許証を片手にした私が荷造りを始めたのは、  出発を6時間後に控えた午前1時の事だった。  睡眠時間もそこそこに向かった成田。しかしこれからの騒動を暗示するように  向かうべきカウンターがさっぱり判らない。否、正確に言うなら、  「まず何をすべきか...」  全く判らんのである。何処行って、誰に会って、何を言って、アロハ〜って挨拶  すれば良いのかさっぱり???なのだ。  こんな時言葉は不便だ。  「あの〜私は何をしたらいいんでしょう?」  流暢な日本語を同じ日本人に向かって放たなければならない。そんな己が恨めしい。  こんなとき外人だったらなぁ...だが開き直りはたまには必要であろう。  「あんた来るのが早すぎだよ。まだカウンター開いてないよん」  あきれ顔のおっちゃんが、私の視界で小さくなって行った。
3. 機上の人 実を言えば今回の渡米は2度目である。  友人に誘われるままに8年程前にグアム・サイパンへ旅行したことがある。  これは文字どおり「誘われるままに」であった。自分でもどうやって成田に行き、搭乗し、  南の海に浮かんでいたのかさっぱり思い出せない。人間、辛いこと以外でも思い出せない  ものがあるようだ。  中国人か韓国人らしい人とプールで遊んだり、帰りの便が旅行会社の手配ミスからタダで  もう一泊できたりと、私にしてはトラブルの少ない旅行だったのだが...おかしい。  辛い経験以外でなければ記憶していられないのか、などと被虐的思考に陥らないうちに  この事は忘れよう。  なんとか機上の人となれた私をジャンボは軽々と持ち上げ、深い感慨を抱く余裕すら与えぬ  ままに日本を離れされた。あれあれあれ。  せせこまい窓から見下ろす房総の半島はまるで全体がゴルフ場だ。  これは久留里の城跡等から眺めてみても判る。田畑をこえ臨める向いの山の林間が白いのだ。  すべてゴルフ場である。私はそれ以来ゴルフをしない事にしている。  そうでなくとも車での遠乗りの多い私は「地球に厳しい」んだから。あえて今ふうに。  それに思い起こせば、ひどく運動音痴だったような気もする。あはは。  とにかく無事日本を飛び立ったのだ。  暫くは何もする必要がない。こんな幸せな時間は何ヶ月振りだろう。  私の全身を心地よい眠気...ZZZZZZ。爆睡何時間?  「・・・んなっ!」  暗い!なんだかとっても暗い。  「知らんかったぁ〜・・・・」  夜の時間帯に入り、機内の照明は落とされていたのだ。目の前のトレイにはいつ置かれたものか  食事が1セット。  音を立てぬよう気をつけながら一人だけの咀嚼を行いながら思う。通路側に座った自分がゴゥゴゥ  と眠っている間、窓際の2人のトイレ休憩はどうなっていたのだろうと。  「ごめんね」と呟く。  がんばれ!エコノミー!  アメリカはまだまだだ!(だと思う)
 4. 疑惑の2人 夜が明ける。機内の空気と異なり、窓外のなんと清冽な薄い青空。惜しむらくは空色をバックに  頭の中を流れ始めたラジオ体操のミュージックの扱いだ。  「腕を前からあげて大きく背伸びの運動から〜」  健康も良いが、時と場所をわきまえてくれ。お!どうやらお隣さんも起きたようだ。  破局。静から動へ、暗から明へ、世界が暗転する覚醒の瞬間は何度見ても生命の神秘だと思う。  朝飯を食らいつつ隣の人と話してみれば、彼と彼女の2人組みで旅行中とのこと。  隣の彼と「ご旅行ですか、それとも」なんて定番を交わしつつ、相手の事も聞いてみる。  「新婚旅行とかですか?」「いいえ」  「じゃ、お仕事とかで」「いいえ、それも違うんです」  確かに窓際の彼女も指輪なんかしてないし、仕事ってふうでもない。  あくまで大人の私、これ以上立ち入るのも悪いよな。  「へぇ、ディズニーランドかぁ」  どこからか聴こえてくる単語をもって会話をそらしてみる。  「私達もディズニーランドへ行くんですよ。おたくは?」  「私はここで乗り換えてボストンまでです」  「お仕事大変ですね」  「いえ〜」  しかし私の中では彼等の正体が気になってしょうがない。とりあえずはその雰囲気から「愛の逃避行  〜第2の人生を胸に渡ったUSで何が〜米国開拓史秘話・日本からやってきた天使〜」と名付け、  そっと影からの応援を送る。  どうやら傾く機体はアプローチ体制への合図。  とうとうやって来たのだアメリカ!    ドヒュドゥッ。ヒィ〜〜〜〜〜〜〜ン。  着陸は新たな闘いの狼煙。

つづく...
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