このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


燃えろUSA!! (2/7)

5. 中継の空港 9月初旬の夏休み惚けも覚めやらぬ時期、未だ目的地アメリカ・ボストンへの航空便は  満席だった。したがって中継をデトロイトとしたコースとなる。  何故にデトロイトであったかは不明である。なんかそうなっていたのだ。  疑惑の2人と笑顔で別れ入国審査へ向かう。ここで入国、そして国内線でボストンロー  ガン空港へ向かう。  ところでもちろん入国審査は英語だ。初めての英語だ。   担当官英語「(入国の目的は?)」   自称英語屋「(仕事だ)」   担当英語「(何の?)」   自称英語「(詳しくは知らんよ、トレーニングじゃ)」   正当英語「(おまえがやるのか?何を教えに来た?)」   疑似英語「(はん?トレーニングじゃ不満か?じゃぁエデュケーションでどうなら)」   英語人「(だから何をしにきた!?)」   英語的「(じゃけ仕事じゃ言ぅろうが!!)」   担当「(...じゃ、とにかく仕事だな...そうなんだな?)」   わし「(そう言うとろぅが、仕事じゃ!)」    あわや後一歩で私のライバルともなりかけた程の親密な会話。私を充実感が...包むわけも  ない。とにもかくにも混雑を避けるべく私はアメリカの土を踏んだのだ。  次からは観光って言おうか。  さて、デトロイト空港は拡張大工事中。  国内路線のゲートが何処なのかさっぱりわからない。  「お!日本人の集団だ」  尾行を開始して2〜3分後。なにやらマイクロバスへ乗り込むらしい。  こうなったらやけくそだ。荷物を係りに渡し同乗だ。  しかし乗り込みつつも不安にかられ「このチケットの便に乗り換えるんだけどOK?」の  気持ちを込め訪ねる。答えは「Yes」。自信たっぷりの答えに不安はさらにヒートアップ!  (ほんまかお前〜?ホントに合っとんじゃろうのぅ!!)  バスが発車する。  「ああんン!!」  その途端恐慌が私を取り巻く。  なんとバスは空港の網柵の裂け目から外へと出てしまったではないか。  「ん、が〜〜〜〜〜ん」  ぴゅ〜ぴゅ〜と頭の中を風が吹きすさぶ。瞳孔はすっかり拡散する。  ああ、どうなったんだろう。  「いかん、このままでは相手にのまれてしまう。冷静になるんだ。   状況を冷静に分析せねば...はっ、まさか!!」  誘拐されたの、わし?  「んっぴゅ〜〜〜ん」  まずは聴覚が、続いては視覚がブラックアウトしそうになる。  あああ...。  5分も走っただろうか。  バスは再び網の裂け目から空港へと戻ってゆく。到着。  「・・・」  どうやら空港内工事中のために、連絡バスは一旦一般の道路に出て移動した...という事らしい。  私は別の大きな建物の前で下ろされていた。  「これはどこへ行けばいいのですか?」  を Where? 一言&チケット見せに託した私が彷徨う。  「ここを真直ぐに行ってね」  これは判る!(指差してる方向へ行けば良いのだ)  「はにゃほにゃはにゃにゃん」  んあ?(どうやら右へ曲がることまでは相手の指の動きで判る。しかしその先が...)  「さ〜んきゅぅ!!」  颯爽とした行進で感謝の意を示しつつ、角を曲がるとさっそく次の人間を探し始める。
6. 初めてのお買い物 人生こつこつ。ボディランゲージをくり返しつつ何とか目的のゲートへと辿り着いた雰囲気。  しかし乗り換えのタイミングはあまり良く無いのだ。なんと3時間待ちなのだ。  「これはここのゲートでいいんだよね?」  少し得意げな表情で問う私に、  「お〜い、おい、君ぃ。こりゃ3時間も先の便じゃないか。お〜ぃ、おい」  お兄さん何やらしきりに呆れている。いいんだよね?ここで...。  何やら調べ始めたお兄さん。数分後、最高の笑顔で「OKっ!!」  ほぅ〜。どうやら乗り継ぎの準備は整ったようだ。腹がなる。グゥ〜。  そこへ来るまでに見かけたハンバーガー屋に向かい、当たり前の顔つきで行列に並ぶ。  やはりおどおどとしててはいけない。さり気なくメニューをチェックし、どの聞き方がさり  気なくまた的確に注文できるか、脳内では推敲に推敲を重ねられていた。  「No.5 Please!!」  「What?」  ここで怯んではいけない(に違いない)。  「ナンバ〜5」  「Five? ほにゃほにゃ burger ?」  「Yes!」  果たしてそうだろうか。本当に注文したものが出て来るのか。たとえ違ったって知らん。  値段は 4.95ドルか、5ドル紙幣を用意っと。万全万全。  「5.15ドル」  「!?何??」  既に注文でたまりかねていたのだろ。露骨に嫌悪感と疲労感も露にレジの金額表示をこちら  に向ける。  『5.15』。  何がなんだか判らんが、後ろに居並ぶ明らかに違う国籍の方々も鼻息を漏らし始めている。  これはまずい。慌てて厳重にしまっておいた10ドル札を取り出し手渡す。  ガチャチャチャ〜ン。  あれを鷲掴みというのだろう。どう贔屓目に見ても適当につかんだ釣り銭の硬貨を返され、  商品と共にそこを去る。  なんだかんだありながらも、3時間は瞬く間であった。  次の目的地ボストン・ローガン空港へと向かう機体の中に私の姿はあった。
7. 無くなる荷物 機内では、  「お飲物は?」  「Coffee を」  「はい」  冷えたコーラは大層美味しかった。あれ?  それでも機はボストン・ローガン空港へと無事到着する。  (まさか荷物無くなったりしないよな・・・)  噂では良く耳にしていた「紛失」荷物。  まさかな。そう思う私をあざ笑うかのよう、借り物のスーツケースはぐるぐるベルトコン  ベア上に姿を見せない。いつまでたっても...。あれ?まさか?  ごごごごごご ど〜なっとんな。この国は!あん!? お前、ありゃ借りもんのケースなんで、ああん。  こら!その荷物どこ行っとんなら!  朝からのすったもんだが私を焦がし始めていた。  ごごごごごごごご でも、もう少し待ってみる。出てくるかも知れないし。  ねぇ?  出てくるかも知れないし...。  3便待った時点で私の怒りはハイスコア!  ごごごごごごごごごごごご 「お前ら燃やしたろうか!」  ありゃぁ借りもんのスーツケースなんじゃ! おっどりゃぁ! どこやったんならぁ!!  怒りに身を任せ、そこら辺りを漁り始める。  「こらぁ、泣くごはいねかぁ〜」  なまはげも吃驚の表情だろう。私は徘徊した。  ロビーのすみへひっそりと置かれたそれを見たときの私は、実は表情とは裏腹にすっかり  疲れ切っていた。あった〜〜〜〜っ!  思うに私は中継空港で3時間の乗り継ぎロスを食らったものの、スーツケースの方だけは  すんなりと到着してしまったのだろう。あまりに御主人様より早く着いてしまったケース。  いつまでも引き取り手なくぐるぐるとコンベア上を回った果てがひっそりだった。  いずれにしても一安心。宿までは後 80km !
8. レンタカーはどこだ? レンタカー屋のカウンターは空港内にあった。  数名の行列の後ろにつくと、やがて自分の番が回ってきた。  「ほにゃほにゃひげらん?」  やっぱ何を言っているのかさっぱり判らん。  「ほにゃ?」  適当に答えてみる。  「ぷりうりうる?」  「ン〜・・・」  もはやハイテンション再臨に左程労力はいらない。  「あのなぁ」  立派な日本語。  「何言うとるんか知らんけど、とにかくわしゃ車借りたいんよ。の? どうすりゃええんな」  きちんとした広島弁。  「ぽる?・・・っがにゃごりゃそりゃどりゃ」  「じゃけ判らん言うとろ?な? わしが分かっとるように見えるか? 見えまぁ?    ほしたら、もっとゆっくり喋ってみいや、のぅ! モアスローリじゃ言うとろうが、   こらっ!」  何度 More Slowly Please と言えども理解できないようだ。そんな相手にはもぅ手加減は  しない。べたべたの広島弁攻撃だ。  気は心。  10分に及ぶ格闘の末、オプションサービスフル装備のレンタカーが出来上がる。  「もぅなんでもええわ。つけたきゃなんでもつけぇや、おどりゃぁ」  「全部会社に払わしたる! 払わん言うたらぶっとばす!!」  「お前らみんな燃やしたる!」  私の中でまたひとつの州が燃えた。  さぁレンタカー屋へごぅだ!!
9. 高速フリーウエイ 「はぁぁ〜やっぱ車だけは万国共通だよぅ」  ステアリングに手をおく私の真情だった。  右と左の違いこそあれ、AT、(日本で言えば)5ナンバーの大きさの車内は心落ち着ける  最初の場所であった。  もちろん、ここに来るのも一筋縄ではなかった。  空港内カウンターを後にした私の疑問は「どこからレンタカー屋行きのバスが出るのか」。  とりあえず近くを歩いていたきちんとした身なりのオッチャンを捕まえてみる。  「レンタカーバスは Where? 」  「Mm.....huuumm, over there...sorry, I do not know well.」  後にして思えば、あのオッチャンは国際線の機長だ。どう見てもあの制服はそれ以外の何者  でもない。わっはっは。そら知らんわ。  しかしこうして何とか無事に車に乗り込んでいると言うことは、そうバスは捕まえられたのだ。  乗り込む時に「君の番号は〜番だ。これから直接レンタカー屋の駐車場へ向かうが、君の車  の前まで来たら番号で呼ぶからな。忘れるなよ番号」と言われる。  忘れるはずもない。忘れようがない。聞いていないのだから。理解できていないのだから。  御安心。結局私が借りた車の前までバスが到着したとき、バス内に残ってたのは私一人だったの  だから。こうなりゃ何番だろうが呼ばれりゃ私だ。  今に至るも何番であったのか、定かではない。  ステアリングに手をおき、アイドリングしている車の中で思う。  「今日...えらく...長いな...」  朝からなんやかやと大変だった。  初めてづくしとは言え、ますで次から次へと難問がふりかかってくる。さすがはアメリカである。  侮り難し...ところが一日は更に長かったのである。  駐車場をでる。  「車だけは万国共通さ」  でも何かが変だ。何かが、変だ。何かが。  「おわわ〜〜〜〜っ」  真正面からバスが突っ込んできている!!  「こらぁ〜オヤジ!どかんかボケェ〜!!」  叫ぶ私の脳裏に一筋の煌めきが。  ここはアメリカ。右通行。  「おぅぅ!悪ぃ〜〜〜」  キュワワワ〜。もんどりうつかのような車線変更。いやぁ...。  一度道を間違えるが、なんとか高速へ乗る。  ふぅ〜。  道行く車の量は町中に近いだけに、そこそこはある。さて何処で下りるんだっけか....あぅ?  「あれれ?何処で下りるんだっけ??」  ホテルまでの道順の書かれた地図は、その頃後部座席のスーツケースの中にあった。鍵も  ばっちり。  「こ、こ、こ、高速って止まってもいいんだっけ?」  夜中のハイウエイを疾駆する車内に、ひとり呟きが谺する。  ホテルよいずこ...。

つづく...
1つ前へ...
日々是大冒険の Topへ
Topへ

このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください