10. どこまでも姿表わさぬ〜州 もぅずいぶんと走ったような気がする。 「これかこれ。どっちかのジャンクション。その次はこの番号のところでこちらへ。 そしたら後は真直ぐ真直ぐ」 先輩の教え方は素晴らしかった。その道順は本当に簡単なのだ。あみだで言えば、角を2つ 曲がるだけなのだから...どこで曲がればよかさえ分かるのなら。 「やっぱ結構走ったよねぇ」 ぶる〜〜〜〜ん。誰に話し掛けているのだろう、既に周囲はどっぷりと夜の闇。ワシの心も...。 走るうちに徐々にアメリカの高速道路の標識が分かってくる。 北と南等どちらの方角へ向かっているのかを知っておくと便利、とか。 何州や地名はもちろん、州間道路どそうでないものの区別。(日本で言えば国道は逆おむすび に番号、県道は多角形に番号といった具合) 道がひろいだけに初めての道でもさほど恐くは無い。 撃たれる心配を除けば、やはり車の中は落ち着く。 ジャンクションで移らねばならない高速道路の番号は、どれも「これかなっ!」「あいや、これ かな?」非常に心もとない。すべてがそれらしく思えてくる。 いかん考え過ぎるんだ! ここで間違ったらお仕舞いだ。 そうだ、無心だ! 無心になるんだ!! ぶる〜〜〜〜ん、ぶる〜〜ん あああ、どれもそれらしく思えるぅ。 ぶる〜〜〜〜ん、ぶる〜〜ん はっはっはっ! おっちゃんはすっかり頭に来たぜ。 「どうりゃあ!」 一発直感ウィンカを上げ、ステアリングを切る。 うむ?思ったよりループがきつい。おりゃりゃりゃりゃりゃ? キィーーーッ どアンダーから一転テールスライド。レンタカーのお尻が滑り出す。 カウンターをあてながらの合流ライン。 はっはっはっ! おっちゃんちびりそう。 順調に辿り着いてもホテルのチェックインに間に合うのか。そんな時間だ。 頭に来ている私は、ひた走った。 カンはこの道を正解だと告げている。 しかしどこまで行っても次のジャンクションが現れない。 何時間走っただろう。 ようやく New Hampshire 州! 目的の州の標識だ! しかし、しかし、あまりにも時間がかかり過ぎてる。 「これは逆だ。なんとなく東に向かっている気がする」 目的のジャンクションは西にあるはずなのだ。 どうやら思惑とは異なる方角から Hampshire 州入りしているらしい。 おそるおそる高速を下りてみる。すると、何にもない。本当に何にもない。 Uターンして戻れるのか、不安でいっぱいであった私を安堵が包み込んだ。 また来た道を戻る。 うん、たぶんこちらが西だろう。 MASSACHUSETTES を西東。 長くなってしまった。 やはり無心&カンは大事である。 空港からの道のりは通常80km。わたし200km。 午後11時、ようやくホテルらしき敷地に立っていた。 11. そしてホテルはすばらしく「私はどこへも行きゃしない!!」 これが住所から考えるにホテルだと思われるんだけど...。 した道に戻るや車を停め、早速地図を確認する。 住所的にもここあたりだ。しかし公園の様な敷地(奥に何やら建物が見える)しかない。 でもこれに違いないのだ。何故ならここには他は林があるだけなのだから。 駐車場へとめる。 敷地は芝生で覆われ、池や木々。加えて建物は西欧風ロマンチック。 これが本当にホテルなのだろうか? 入り口らしきところから中へ入る。 「ここ、ホテル?」 「Yes!」 笑顔でコミュニケーション。私は車から荷物を引っぱりカウンターへと向かった。 「ここだよね?」 予約のFAXを見せながらの確認。これは楽だ。後は部屋の鍵もらって寝るだけだ。はぁぁ、 疲れた〜。 本当に疲労困憊であった。きょう一日でいろんな事がありすぎた。はぁぁ・・・。 「あなたはどこへゆくのですか?」 ん?何だ? 最初何をきかれたのか分からなかった。 「あなたはどこへゆくのですか?」 おかしい...どこへゆく、だと?部屋へ決まっているじゃないか! 表情から窺っても旅行先を聞かれているようには思えない。 「ホワッ?」 だんだんと砂上の楼閣が崩れつつあった。お姉さんの表情が厳しい。 「あなたはどこへゆくのですか?」 ひょっとして、ここはホテルじゃなかったの〜? hmmmm! なんとお姉さん肩を竦め、奥へと引っ込んでしまった。どうやら男性と相談しているふうだ。 と、何やら手にして出てくる。1ドル紙幣とカードだ。 「How are you going to pay? Card or Cash?」 あ・な・た・は・ど・こ・へ・ゆ・く・の・で・す・か....お支払いはどのように...あ・な・た・は... がぁ〜〜〜ん。 中学英語セクション6。今日は be going to 〜 のお勉強です。 「Card please」 目に見えぬ涙を頬に私は答える。と、すかさず! 「はにゃほらひれっ」 「はい?」 「Hmm...はにゃほらっ」 どうやらカードを出せと言ってきているらしい。 ごごごごごご あのなぁセクション6 be going to でこけてる奴が... そんな早さで言われて分かると思うかぁ!! 再び私の中のアメリカは1つ州を失った。燃やしたる! ここでキーが差し出されなければ、私の存在は間違い無く外交問題へと発展していた。 ようやく安眠の床だ。これで眠れるんだ。 広いシーツに私はくるまれ、日付けが変わった。 12. 「3次元中継」 次の日、社へ無事到着を告げるべく電話をとった。 ところで私は国際電話のかけ方を知らない。 カウンターはこれこれ 外線はこれこれ 市外これこれ 長距離これこれ やっぱ長距離、これかなぁ? 電話器の使い方を片手に色々と試してみるが、どうにもうまくゆかない。 一度なんて受話器を置いた途端にリンリン鳴り出す始末。 「...Hellow?」「プーップーップーッ・・・」 いったいどこへかかってるんだ。 結局航空チケットの裏に書かれていたKDDなんとかデスクを試してみる。 「はいこちらKDDです。国際電話ですか?」 なんと日本人オペレータだった。多少高くても、いまは助かる。 そう言えば、なんでも飛行機予約にゃ Reconfirmation が必要らしい。 1週間くらい前に「ほんまに予約通り乗りますんで」って電話をいれておけ、と言われたのだ。 どうせ電話しておいても「あいにく Double Booking してしまいまして」とか言われるんじゃん、 等とかなり悪役米国で妄想逞しうしながら電話をかけてみる。 「Hello!」 「I want to re-confirm air ticket.」 「What?」 なんと私の専売特許「ほわっ?」を先に出される。 思わず唸る。 そうして数分もすったもんだしただろうか。一向に意志の疎通がはかれない。 なんじゃこの国ぁ?本当はお前らも英語喋られんのじゃないんかぁ?こら! 新発見?実はアメリカ人も英語が苦手だった!? 「はいもしもし、リコンファームですか?」 翻訳コンニャク。かのドラえもんが持っていたそうだ。 いきなり理解できると思ったら、なんとここでも(Northwest の米国カウンター)日本人が 出てきた。しかも3次元中継だ。最初に出た女性との会話も聞こえる! 途中から会話に参加してきた日本語の分かる女性を仲介に、Reconfirmation 手続きは完了した。 何やらSFチック。混線ちっく。 13. 日々つれづれ ある面正しく、ある面間違いだとも思うが、日本語でも何とかなる。そんな不確かな自信を胸に 私はレンタカーでショッピングモールやドライブへと散策に出かける。 パスタ屋ではチップ払うのも忘れ、えれ〜別嬪な店員さんを眺めて過ごし。 本屋と見れば即座に入り、生物関連の書籍や歴史もの、小説に流行りものなどチェック。 CD屋では久保田利伸を探し、スーパーでは夕飯買ったりと初日は暮れる。 明日からは仕事だ。英語漬けのトレーニングの1週間。 すっかり日本語力に自信をもった私は気も楽に、どうせ一晩で英会話ができるようになるとも 思えん。CMとスポーツニュースしか分からないTVを見ながら就寝。 おやすみなさ〜い、米国の皆さ〜ん。 ZZZZZ...。 |