このページは、2019年3月に保存されたアーカイブです。最新の内容ではない場合がありますのでご注意ください


燃えろUSA!! (7/7)

29. 昆虫記 さぁ「燃えろUSA!!」もおわりが近付いてきた。  さすがに2週間もいると、トラブルもめっきり少なくなってくる。  喜ぶべきか、喜ばざるべきなのか。それは判断をまかすとして、私は最後の週末を利用して  念願の虫の写真撮影へと向かった。  今日は1日フリー。当然朝からの出発である。  時間もある。隣の州辺りまで出かけてみよう。もちろん地図などはない。  なんとかなる...ことを祈って。  それにして米国南部のこの辺りはいただけない。  日本の湿潤とした植生を見なれている私には、どこに行けば虫がいるのかちょっと見当がつけ難い。  余りに乾燥しており、葉も小さな植物がぽつぽつといるだけである。雑草等も左程生えてはいない。  それでも方向感覚だけをたよりに、走り回り蜂の撮影を試みる。  思いっきり道ばたである。眼前の柵には、なにやら「Danger」な雰囲気を漂わせた看板もかかって  いる。しかし、そこで撮る。  日本ですら「なに〜撮ってらっしゃるんですか?」と恐る恐る聞かれる趣味である。  時折背後を通過する乗用車の窓から「不審気〜な視線」が寄せられる。  んが、続行。  その際の写真が
これ
である。  ちなみに蜜蜂はアメリカの国虫だったと記憶してる。(たぶん...)  余りの猛暑に汗だくになりくぐるホテルのエントランス。  鏡に写った私はまるでランボーであった。  Express Development(スピード現像)なるものを電話帳で探すと、再び外出。  シャワーを浴び、着替えを済ませると車にのり現像所へ。  ここでやはり言葉は通じない。  中学生レベルの構文で間違っているとも思えないのだが、さっぱり通じない。  「普通コースじゃなくって、この Express のコースでお願いします」  もちろんカタログのコースを指差す事も忘れない。これならば確実に伝わるだろう。  「こちらですね、はい」  と、ここまではよかったが、肝心の仕上がり時間について、何を答えられているのかさっぱり分から  ない。  「More Slowly!!」  何度言っても、聞き入れてもらえない。  き、きさまらぁ〜〜!!!! ゴゴゴゴゴ・・・ 例によって大魔神怒りの復活を見られるかと思いきや、相手が筆談を申し入れてきた。  そうだ。その手が有るじゃないか!  なんと今日は現像所が休みなので(定休日)、仕上がりは週明けになるという。  がぁ〜〜〜〜ん。  帰国後じゃないか。んなら日本で現像するわい。  「んじゃ、いい」  そっけないこちらの返答にも笑顔で「OK! Thank you!!」と答えてくる。  確かに米国人、なかなかゆっくり喋ってくれず双方イライラする事が多いものの、分かりあえたときの  対応に後腐れはない。素敵な笑顔で次への会話へ移ってくれる。  「今日のところは勘弁しておいてやるかの」  まるで吉本のセリフでも口にしたくなる、決して悪くない気分で店を出た時、天からの啓示が私を  襲った。ひょっとして... (カウンターの女性の気持ち)  「なぜこの人は早い Express Course を頼みながら、"More Slowly" と訴えていたんだろう???」  おそらくそういう事だったのだろう。たしかにそれでは、いよいよ怪しき日本人である。  道理で話が噛み合わないはずだわい。  うはははは〜 (^^;  こうして誤解は解け、人々は平和への道を突き進む。  燃え上がるUSAは徐々にその火の手をおさめて行ったのだった。  兄弟も出来たことだしね (^^;!。
30. アラスカエアー? 帰りの便は「アラスカエアー」だそうだ。  なんじゃそら。聞いたことないど。  ロサンジェルスから一旦シアトルを経由して成田へと向かう。  帰りもまた直行便が押さえられなかったからだ。  シアトルまでのアラスカエアー。  「なんだろうな〜...」  空港でぼんやりと眺めていると、垂直尾翼に「ハロ〜にこやかエスキモーおじさん」を描いた機体が  視界に入ってくる。  「おっ!あれかの」  しかし、視界が開け1つの事実が判明する。  プロペラ機だ。  おいおい、本当にこれなのか?  プロペラ機は信用できても、アメリカ人を...いかん、いかん、昨日平和への道を突き進み始めたばかり  じゃないか。  そんな気持ちのなか、私は搭乗カウンターへと向かった。
31. もぅだまされないんだからぁ〜!! 平和の道を歩み始めたとはいっても、やはり油断は対敵である。  「スーツケースなんですが、これは成田まで運ばれるんですか?   自分でシアトルで乗せ変えるんですか?」  「ええ。もちろん運ばれますよ。何もしなくても結構よ」  こんなやり取りだって御用事。  心配したアラスカエアーが実際はジェットだったとしても、油断は禁物。  案の定、シアトルではターンテーブルの上で私のスーツケースがクルクルと回っているじゃないか!?  しかし発つ鳥後を濁さず。  ここは怒らずにおいてやろう。何故なら答えた彼女ははるか地平線の向こうなのであるから。  それにしても、久しぶりだ。日本人だ。  空港で目にし、耳にする日本にしばしぼんやりとする。  さぁ帰国だ!!
32. やがて日本...その前に国籍が「貴方日本人?」 帰りの機内は窓際で、しかも良く眠ったのでまるで記憶にない。  途中で中国人北京語的英語の発音をする男が、やたらと米国風ジェスチャーでスチュワーデスを口説いて  いたのを憶えているくらいだ。  と、日本を目前にして目覚めのぼやぼやを突き破る言葉が、  「あなた〜にぽんじん?」  「?・・・???」  「あン〜、にほんご、ワカリますか?」  「へ?」  「にほんご」  「はぁ、日本語わかりますげど」  「あなた、日本人?」  隣に座っていたおばちゃんだ。  な、な、なめてんのかぁ〜〜〜〜〜!!! 咽まででかかった言葉を飲み込み、  「何でしょうか?」  答えてみる。  「ああ〜、良かったぁ〜。実はですね...」  ここまで安堵のため息を漏らされては怒るにいかれぬ。  聞けば、すごい。  何でも息子や娘も自分の手を離れ、亭主も仕事が一段落着いたので、亭主を留守番にしてアラスカへ  行ってきたのだという。しかも1人で。  そんな沖縄のおばちゃんに、成田から幕張までの経路を教えていると、機内食が配られ始めた。  そばの機内食で使った、2週間ぶりの箸は格別だった。  思えば、身体の奥深い部分で最も強く日本を意識したのは、この瞬間であった。  ああ、日本が近付く。  機内アナウンスが、そう告げてくれた。
33. そこに己を見る(さ迷えるアジア人@成田) 入国手続きを済ませ、2週間ぶりに踏んだ日本の土は、相変わらずだった。  当たり前である。たかが2週間に過ぎぬのだ。  ふぅ〜〜。  さて、帰宅だ。  京成線ホームへ向かっていると、切符の自販機の前で途方に暮れている若者を見つけた。  否、そこには昨日までの自分がいた。  「どこまで?」  気が着いたときには、こちらから声をかけていた。  片言の日本語が「ウエノ」「そこトモダチマッテル、ウエノ」と。  上野までの切符を押しえ、電車を教える。  気の弱そうな青年だ。まだ20歳にもなっていないかもしれない。  ひょっとすると、ああ見えて犯罪者かも知れない、何から逃げ出してきたのかも知れない。  もちろん観光や、留学である事もある。  パスポートが本物かどうか...そんな事は私の知ったことではない。  どうしても声をかけずには、いられなかった。  彼とは改札で分かれたっきりである。                               [終了]

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